自民党と日本維新の会(以下「維新」と表記します)が10月20日、連立政権合意書に調印しました。21日の臨時国会冒頭で高市早苗・自民党総裁が首相に選出。維新は高市内閣に閣僚を出さない「閣外協力」ですが、自民党と維新の双方とも「連立」であると強調しています。マスメディアの報道でも、東京発行の新聞各紙は21日付の朝刊では「連立政権」の表記でそろいました。
振り返れば、高市氏は自民党総裁に選出された直後、公明党との連立を「基本中の基本」としていました。その公明党は連立を離脱。それからわずか10日ほどでの維新との「連立合意」です。公明党との連立解消を検証、総括し、新たな「基本」を構築する十分な時間があったはずもありません。維新にしても、「政治とカネ」の問題で自民党を批判していたはずなのに、あっという間に自民党のアシスト役に収まりました。このブログの一つ前の記事でも用いた表現ですが、理念も倫理もない連立だと言うほかないと感じます。
21日付の東京発行各紙の紙面はこの「連立」劇をそろって1面トップで扱いました。1面や総合面の主な見出しを書きとめておきます。
■朝日新聞
▽1面「自維連立 正式に合意/高市内閣 きょう発足/閣僚出さない『閣外協力』」
▽2面・時時刻刻「維新案『丸のみ』タカ派色/自民、『ブレーキ役』公明離脱で転換」
■毎日新聞
▽1面「自民・維新が連立合意/きょう高市首相選出/閣外協力 衆院定数削減目指す」
▽3面・クローズアップ「曖昧合意で連立発進/自維 主張の隔たり残し」
■読売新聞
▽1面「自維連立 合意/高市首相きょう選出 閣外協力/定数削減 臨時国会で成立目標」
▽3面・スキャナー「自維スピード合意/協議10日 トップ電話で加速」/維新側からのメール/急接近、お互いの事情/約束ほご 苦い経験も
■日経新聞
▽1面「自民・維新、連立合意/高市内閣きょう発足/維新は閣外協力」
▽3面「自・維政権、4つの火種/議員定数削減『衆院1割』に異論」「献金禁止見送り 選挙区競合 細いパイプ」
■産経新聞
▽1面「自維連立 始動/定数削減 臨時国会に法案/正式合意 改憲条文案策定で一致」
▽3面「自民の『本気度』維新動かす」「初の対面議論 議員定数削減『やる』」「改革への覚悟 高市氏に『狂気』求め」
■東京新聞
▽1面「自民・維新が連立合意/高市首相 きょう選出/政治とカネ 棚上げ/衆院定数1割減 明記」
▽2面・核心「自維 保守色くっきり」/『暮らし』『政治改革』ぼんやり」「閣外協力 維新に『うまみ』」
「維新案『丸のみ』」「曖昧合意」「お互いの事情」「4つの火種」-。見出しの言葉を見ても、この連立劇の性格がよく分かるのではないかと感じます。
中でもひときわ目を引いたのは産経新聞の「改革への覚悟 高市氏に『狂気』求め」の見出しです。
3面の記事の一部を引用します。
藤田「高市さん、狂ってください。これからあらゆる抵抗があります。それを押し切って日本の大改革のためにはある種の狂気が必要です。そのために私たちは国民に覚悟を示すんです」
高市「わかった! やるかっ!」
記事は「連立」合意に至るまでの水面下のやり取りを含めた経緯を再現した内容です。日本の新聞の政治報道が得意とする分野です。産経新聞の上記の記事は、赤坂宿舎で続いていた政策協議のさなかの一コマのよう。「藤田」は維新の藤田文武・共同代表、「高市」は高市総裁です。
密室でのやり取りであることを踏まえれば、記事の内容には一定の留保は必要ですが、それにしても「狂気」という言葉には驚きます。
理念も倫理もない「連立」の合意内容に批判があるのはむしろ民主主義では当然のことなのに、それを「抵抗」と呼ぶこと、批判に対して話し合い、熟議で臨むのではなく力づくで排除するために「狂気」が必要との言辞が口にされたこと、その言辞を是認したこと。「連立」を組む与党のトップ間でそんなやり取りがあったのだとしたら、どう考えたらいいのでしょうか。民主主義の危機であり、「論外」という以外に、なかなか言葉が見つかりません。
理念も倫理もなく、そして「狂気」を伴った高市政権の発足。それが敗戦から80年後に目にする日本社会の光景なのでしょうか。

【追記】2025年10月21日23時50分
日本維新の会の藤田文武・共同代表が21日、高市内閣発足に対する所感を記者会見で明らかにしました。その中で、吉田松陰の言葉「狂愚誠に愛すべし、才良誠に恐るべし。諸君、狂いたまえ」を紹介して、「狂う」ことが政治家に必要との持論を述べています。そして、高市氏に「狂ってください」と述べたことを明らかにしています。産経新聞が記事で紹介しているやり取りと同じ場面かどうかは分かりません。
会見の模様は維新の公式ユーチューブ・チャンネルで視聴できます。
※5分過ぎからその部分です
https://www.youtube.com/watch?v=Y5TKfF3-5Xg
吉田松陰が刑死した後の明治維新は、内戦である戊辰戦争と同時進行でした。暴力と暴力がぶつかり合い、多くの命が失われました。「勝てば官軍」の言葉通りの時代でした。
今日、異なる意見に対して熟議で臨むのが議会制民主主義の基本のはずです。産経新聞が伝えたように、熟議ではなく、異なる意見を押し切るために「狂う」ことが必要であり、高市氏もそれを否定しなかったというのなら、高市政権の成立で、日本の民主主義は危機を迎えていると考えるほかありません。
藤田共同代表は会見で「たたかい」という言葉を繰り返しました。だれと「たたかう」というのでしょうか。