高市早苗・自民党新総裁の選出、公明党が自民党との連立政権からの離脱を表明と、1週間ごとに政治が大きく動いています。この週末は、日本維新の会(以下「維新」)が自民党と政権強力に向けて基本的に合意したと報じられました。維新は立憲民主党、国民民主党との連携協議を打ち切ることを通告。10月21日に国会で石破茂首相に代わる次期首相を選出する日程が固まり、現状では高市総裁が首相に就く可能性が高まっているようです。
このブログの一つ前の記事で、公明党の連立離脱から見て取れるのは、民意を読み取れない自民党のすさまじい劣化ぶりだと書きました。
その後の事態を見ると、理念も倫理もない自民党の劣化ぶりは底が見えず、このまま高市政権が誕生するなら、民主主義は深刻な危機に直面すると感じざるを得ません。
維新が高市自民党との連立に走ることの問題点や疑問点は、わたしが書くまでもなく多くの方が指摘しています。特に維新が国会議員の定数削減を「絶対条件」と位置付けたことは、「政治とカネ」への批判をはぐらかそうとしているようにさえ見えます。
さかのぼれば、石破政権の元での自民党の選挙の敗北も、公明党の連立離脱も、この「政治とカネ」に自民党が対応しないことが要因です。高市自民党と維新の連携は、「政治とカネ」の問題がこのまま放置されることを決定づけるに等しいと感じます。高市総裁が首相になりたいがための、理念も何もない多数派形成のあがきです。
国会議員の定数削減自体も問題が大きすぎます。参院議員でチーム未来党首の安野貴博さんが問題点を以下の三つにまとめた分かりやすい解説をXに投稿しているのが目に止まりました。一読をお奨めします。 https://x.com/takahiroanno/status/1979486634887496113
【議員定数削減のデメリット】
— 安野貴博@チームみらい (@takahiroanno) 2025年10月18日
国会の議員定数削減の議論が盛り上がっています。
衆議院の議員定数を1割(50名程度)、比例の枠から削減する案があがっています。来週からの臨時国会で決議を目指す方向で、自民・維新・国民の間で調整がされているとのことです。… pic.twitter.com/q5RtWFlUJt
特に比例代表の定数を狙い撃ちのように削減することになれば、小規模の政治団体から当選者が出にくくなり、政治から多様性が失われ、政治が有権者や住民から遠のくことになります。
高市自民党と維新が進めようとしている連立協議の実態は、理念を欠いた「数合わせ」としか言いようがありません。
維新との連立協議以上に、政治倫理の面で深刻な問題だと感じることがあります。参議院で、自民党が政治団体「NHKから国民を守る党」(以下「NHK党」)に所属する斉藤健一郎議員と統一会派「自民党・無所属の会」を組んだことです。高市自民党がNHK党を連立と同等の友好団体として扱うと受け取るほかありません。少なくとも、そう見られても仕方がありません。
NHK党の立花孝志党首は昨年の兵庫県知事選では、自身の当選を目指さず、斎藤元彦知事を支援。二馬力選挙が批判を浴びました。東京都知事選ではポスター掲示板の“転売”もありました。「禁止されていないなら何をやってもいい」との姿勢は、控えめに言っても、民主主義の基盤である選挙制度を破壊しかねません。ネット上や動画サイトでの言説についてはわたしがあれこれ書くまでもありません。
統一会派結成は、自民党がそういう立花党首やNHK党の後ろ盾になると受け取られてしまうことを意味します。高市自民党には最低の政治倫理すら失われつつあると感じざるを得ません。
NHK党との統一会派を巡って、驚くような報道がありました。毎日新聞は10月18日付朝刊の5面に「NHK党斉藤氏 会派入りに感謝」の見出しの記事を掲載。その中で、「参院自民関係者」の「NHK党は政党要件を満たしていない。あくまでも無所属議員を引き入れただけだ」とのコメントを紹介しています。そんな説明が通用すると考えていること自体が、自民党の劣化ぶりの深刻さを表していると感じます。高市総裁は参政党にも首相指名で協力を求めたとも報じられていることも、書きとめておきます。
マスメディアの報道では、10月18日付の朝刊で朝日新聞は「高市首相選出へ/自維、連立へ基本合意」の見出しを1面トップに据えました。読売新聞は「自維協議『大きく前進』/連立向け 詰めの調整/高市首相 選出の公算」と、一歩引いたニュアンスです。
高市自民党のすさまじい劣化ぶりを目にして思うのは、維新との協議にしても、NHK党議員との統一会派結成にしても、自民党内に疑問を感じる議員、理念や倫理を保とうとする政治家はいないのか、ということです。国会の首相指名で全員が粛々と「高市首相」に票を投じるのでしょうか。マスメディアの政治報道で言えば、小泉進次郎氏を優勢と報じた自民党総裁選や、さらには7月の参院選直後の石破首相の進退をめぐる一部の全国紙の「退任へ」報道などを教訓とするなら、この段階で「高市首相」が実現するかどうかは、なお慎重な姿勢があってもいいのではと感じます。自民党内でどんな動きがあるのか知りたいと考えている人も少なくないはずです。
そしてマスメディアを巡ってもう一つ思うのは、NHK党議員との統一会派結成の報道です。先述の通り、維新との連立協議とは質的に異なった問題であり、こちらの方がより深刻だと考えています。
統一会派結成を東京発行の新聞各紙は10月16日付の朝刊で報じましたが、いずれも総合面や政治面で小さな扱い。見出し1段で行間を詰めた「短信」の扱いも目立ちました。産経新聞は2段の見出しで、兵庫県知事選の2馬力選挙に触れ「物議を醸した」と記述。東京新聞は2馬力選挙のほか立花党首が元兵庫県議への名誉棄損容疑で刑事告訴されたことも書いていますが、他紙はNHK党や立花孝志党首が何をしてきたかの言及はなく、朝日新聞に至ってはNHK党の名称もありません。「あくまでも無所属議員を引き入れただけ」との“強弁”を受け入れているかのような報道だと感じます。

政局の行方を追うマスメディアの政治報道がこうした「定型」にとどまるのも仕方がないのだとしたら、別のアプローチからの報道があってもいいように感じます。例えば新聞なら、社会面での展開です。縦割りの紙面を超えるデジタルの報道なら、動画や音声を含めてさらに多様な取り上げ方ができるのではないかとも思います。そこに組織ジャーナリズムへの今後の期待もあります。
【追記】
日本維新の会の公式Xアカウントが昨年10月の衆院選に際して、以下の投稿をしていました。「一緒にやっていくなんて 不可能に決まっていますよ」。わずか1年前です。自民党の「政治とカネ」の問題は決着したということなのでしょうか。記録の意味で貼っておきます。
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— 日本維新の会 (@osaka_ishin) 2024年10月25日
自民党の「政治とカネ」に
対する向き合い方。
一緒にやっていくなんて
不可能に決まってますよ。
╲
裏金をはじめとする「政治とカネ」問題から始まった今回の選挙。そして終盤戦で判明した「非公認候補の選挙区支部に対する2,000万円の交付」
不透明な政治を続ける今の自民党と… pic.twitter.com/YV9oGgyVlJ