以下の内容はhttps://news-worker.hatenablog.com/entry/2025/10/06/092201より取得しました。


古い自民党そのままの高市早苗新総裁の選出~社会に分断をもたらす発言の危うさ

 自民党の新総裁に10月4日、高市早苗氏が選出されました。マスメディアの情勢報道などで優位とみられていた小泉進次郎農相との決選投票で、国会議員票を大きく上積みして引き離しました。1955年の結党以来、女性の総裁は初めて。国会では衆参両院とも自民党、公明党の連立与党は過半数割れしていますが、野党が首相候補を一本化できる状況ではなく、そのまま高市氏が女性として初の首相に就く見通しだと報じられています。画期的な出来事であるのは間違いありません。ただし、「高市総裁」「高市首相」で、男性中心の同質性が高い日本の政治が変わるかと言えば、少なくとも現時点では期待はできないと感じます。理由の一つは、派閥、旧派閥が幅を利かす自民党の古い体質そのままに、高市氏が総裁に選出されたと受け止めるほかないことです。「初の女性」の意義の評価は、今後の高市氏次第だろうと思います。

 こうした大きな政治イベントでは、水面下の駆け引きを探るのは日本の新聞の政治報道が得意な分野です。新聞の政治報道に批判があるとしても、複数の新聞を読み比べることは、全体像を理解するのには役立ちます。東京発行の新聞6紙(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞)の5日付朝刊を買いそろえて読んでみました。各紙ともそろって1面トップで報じ、関連記事も総合面、政治面、社会面などに展開。社説・論説でも取り上げています。画期的なニュースではあるのですが、やはり「これで政治が変わる」との高揚感はありません。
 各紙の1面トップの見出しは以下の通りです。
・朝日新聞「自民総裁に高市氏/女性初 首相選出見通し/決選投票 小泉氏破る」
・毎日新聞「女性初 自民総裁に高市氏/保守回帰求めた党員/首相選出の公算大/決選投票 小泉氏破る」
・読売新聞「自民総裁 高市氏/女性初 決戦 小泉氏破る/物価高対策を優先 挙党態勢意欲」
・日経新聞「自民総裁に高市氏/初の女性 小泉氏破る/15日にも首相指名/野党と連立協議 意欲」
・産経新聞「自民新総裁 高市氏/初の女性首相誕生へ/決選投票 小泉氏破る 15日にも/『新しい時代を刻んだ』」
・東京新聞「高市氏 自民新総裁/決選投票 小泉氏を破る/女性初の首相へ/裏金議員の起用 排除せず」

 政治の刷新、新風を感じるような表現は見当たりません。主見出しに「女性初」を入れたのは毎日新聞だけ。その毎日も2本目の見出しでは「保守回帰」と、この総裁選の特質を端的に表現しています。東京新聞が「裏金議員」の処遇を見出しに入れたのが目を引きます。

 本命視された小泉氏を、高市氏が決選投票で破った背景事情を、各紙とも、主に総合面で報じています。目を引く見出しを並べてみます。
「保守回帰 地方からうねり/『高市氏らしさ』前面 つかんだ党員票」(朝日)
「派閥復権 高市氏に風/麻生氏の『号令』決め手」(毎日)
「党員票 議員動かす/派閥・旧派閥の思惑 有利に」(読売)
「党員票、議員動かす/麻生派支持が決定打 保守回帰」(日経)
「高市流 弱点を克服/『党員の声』麻生氏流れ作る」(産経)
「『政治とカネ』にフタ/党内融和優先 内向き議論」(東京)

 各紙の報道でおおむね共通しているのは、右派色が強く右派層の支持が高い高市氏が党員票で圧倒的な強みを見せたことで、支持離れに危機感を持つ国会議員が決選投票ではこぞって高市氏に投票した、との構図です。そこから読み取れるのは、党員の右傾化志向であり、自民党全体のより一層の右傾化です。
 その中で「高市勝利」の大きな流れを直接作ったのが麻生太郎元首相でした。党内で唯一、派閥を維持している麻生氏が4日当日になって、決選投票では党員票の首位の候補に投票する、との意向を周囲に伝えたと報じられています。つまりは派閥に所属する国会議員へ、高市氏への投票を指示しました。
 総裁選では高市氏は麻生氏にも支持を働きかけていました。共同通信は「選挙中、高市氏は麻生氏と面会し、『総裁選後の人事は全てお任せします』と確約していた」と報じています。
 ただ、麻生氏には小泉氏も面会していました。総裁選の全体像を俯瞰してみれば、パーティー券裏金事件を契機に、派閥の解消と党の刷新を打ち出していたにもかかわらず、党内ではいまだに派閥、旧派閥が幅を利かせていることが、あらためてよく分かると感じます。

 高市氏で気になるのは、その発言です。
 総裁選では、奈良の選出であることを強調して、奈良公園のシカを蹴り上げる観光客がいることを問題視する発言がありました。根拠は明示していません。現地で、そういう事例は耳にしないと話す人を紹介したテレビ局の取材が、SNS上で「やらせ」と炎上する事態になりました。
 刑事事件の捜査で、通訳が不足しているために外国人が不起訴になる事例を耳にする、との発言もありました。マスメディアの検証報道では、警察関係者、検察関係者から否定的な見解が示されています。
 過去には総務相当時、放送法の運用などをめぐって省内で作成されたとする文書に対して、自身の発言にかかわる内容は不正確で捏造だと主張しました。その後、文書は行政文書と確認されましたが、高市氏の「捏造発言」はうやむやのままです。
 総裁に選出された直後のスピーチでは、党の再生のために働くことを強調するあまりか「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てる」と口にしました。過労で心身の健康を保てなくなった人、近親者を過労死で失った人たちにどんな風に聞こえるか。社会で「滅私奉公」の風当たりが強まらないか。懸念があります。「ワークライフバランス」と口にしなくても、党総裁として懸命に働く、ということは表明できるはずです。
 この発言を巡っては、「首相になろうかという立場の人物として不適切」との趣旨の批判と、「国民に働くことを求めてはいない」として擁護する意見とが、SNS上ではぶつかり合っています。本人の思惑、本意はどうあれ、高市氏には、発言が社会に分断をもたらす危うさがあります。

 「地位が人をつくる」と言われます。今後、高市氏の立ち居振る舞いが変わる可能性もあるのかもしれません。しかし、総裁選を通じて、自民党はより一層、右傾化したと感じざるを得ません。
 日本の社会に、かつてのような幅広い層の支持を得た国民政党と呼びうる政治勢力は見当たらなくなりました。一方で参政党、日本保守党など極右と呼ぶほかない新興の勢力が勢いを保っています。かつて、ワイマール憲法下でナチスが台頭したドイツの歴史を想い起こさずにはいられません。敗戦から80年の年に、容易ならざる時代が到来していることをあらためて感じます。
 その中で、戦争を起こさせないために、希望をつながなければなりません。意見は異なっていても対話を重ね、社会の分断を埋めていかなければなりません。不可欠なのは、事実の共有です。マスメディアの組織ジャーナリズムの役割もまた大きいと思います。

 以下に、自民党の高市総裁選出を東京発行の新聞各紙がどう報じたかの記録として、5日付朝刊の主な記事の見出しを書きとめておきます。

【朝日新聞】
▽1面
「自民総裁に高市氏/女性初 首相選出見通し/決選投票 小泉氏破る」
「鈴木俊幹事長で調整 副総裁は麻生氏軸」
「裏金問題『人事に影響ない』」
▽2面
「保守回帰 地方からうねり/『高市氏らしさ』前面 つかんだ党員票」
「連立拡大 国民民主に軸足」
「ジェンダー政策 進むか不透明/夫婦別姓・同性婚 慎重姿勢」
「外国人政策 厳格化へ/土地取得 対応強化の構え」
▽3面
「高市氏『物価高対策に力』/旧暫定税率廃止、軽油も」
「タカ派 靖国は明言避ける」
▽社会面
トップ「高市さん 応えてほしい」
「『ワーク・ライフ・バランスという言葉捨て働く』/選出後 議員へのあいさつで」
▽社説
「自民新総裁に高市氏 『分断』回避を主導できるのか」/変われない党を露呈/資質問われた言動も/連立協議拙速避けよ

【毎日新聞】
▽1面
「女性初 自民総裁に高市氏/保守回帰求めた党員/首相選出の公算大/決選投票 小泉氏破る」
「公明 自民の右傾化警戒」
「責任ある政策 追求を」田中成之・編集局次長
▽2、3面見開き「派閥復権 高市氏に風」「タカ派 中韓警戒強め」
※2面
「日米会談控え 外交手腕未知数」
「物価対策に積極財政」
※3面
「麻生氏の『号令』決め手」「小泉氏『守勢』裏目に」「林氏存在感 旧岸田派、分裂含み」
「『解党的出直し』議論低調」
▽社会面
トップ「『鉄の天井』破ったけれど…/ジェンダー平等 逆行懸念」
「『ワーク・ライフ・バランス捨てる』/高市氏あいさつに首相『大丈夫か?』」
▽社説
「自民新総裁に高市氏 幅広い声聞き不信払拭を」/右派的言動に警戒感も/問われる党改革の姿勢

【読売新聞】
▽1面
「自民総裁 高市氏/女性初 決戦 小泉氏破る/物価高対策を優先 挙党態勢意欲」
「国力の復活 政策で」川嶋三恵子・政治部長
▽2、3面見開き「党員票 議員動かす」「野党 出方見極め」
※2面
「対中韓 バランス課題」
「連立 維新、戦略練り直しへ」
※3面・スキャナー
「派閥・旧派閥の思惑 有利に」「小泉陣営 消えた楽観論」
▽4面(政治・経済)
「働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく/『ワーク・ライフ・バランス捨てる』」
▽社会面
トップ「『強い日本 作って』/強い者ら 自民再生に期待」「外国人巡る発言 批判も」
※第2社会面「切実な要望 各地で/介護処遇改善・防衛力を強化」
▽社説
「高市自民新総裁 存亡の岐路で舵取り託された 混迷収拾し政治の機能回復せよ」/歴代初の女性首相へ/発信には不安要素も/新たな外交戦略が必要

【日経新聞】
▽1面
「自民総裁に高市氏/初の女性 小泉氏破る/15日にも首相指名/野党と連立協議 意欲」
「給付付き税額控除議論へ/物価高対策、臨時国会で」
▽2面
「党員票、議員動かす/麻生派支持が決定打 保守回帰」「小泉氏『改革封印』裏目に/世代交代への敬遠も」
「高市新総裁 市場の見方/利上げ後ずれ/株には追い風/物価上昇に警戒」
▽3面
「高市氏『積極財政』鮮明に/物価対策 赤字企業の賃上げ支援/金融政策『政府に責任』」
「維新『打診あれば参加』/連立協議 国民は政策実現見極め」
「トランプ大統領来日へ/関税合意覆さず」
「民主主義の『矛盾』克服を」桃井裕理・政策報道ユニット長
▽社会面
準トップ「『新風を』『政策、女性視点で』/自民総裁に高市氏 党員、期待と注文」
▽社説
「自民総裁選に問う 高市氏は難局打開へ政治再生急げ」/女性リーダーの時代に/安定と協調に軸足を

【産経新聞】
▽1面
「自民新総裁 高市氏/初の女性首相誕生へ/決選投票 小泉氏破る 15日にも/『新しい時代を刻んだ』」
「野党と早期連立意欲/就任会見 政党名は言及せず」
「もう『やり直し』許されぬ」酒井充・編集局次長兼政治部長
▽2、3面見開き「高市流 弱点を克服」「小泉節 封印が裏目」
※2面
「安全運転も党員票伸び悩む」
海外反応:中国・韓国・米国
※3面
「『党員の声』麻生氏流れ作る」「バイク乗り回すドラマー」
「連立拡大 相手は/野党とのパイプ乏しく」
▽4面(総合)
「高市総裁『ワークライフバランス破棄』宣言」
▽社会面見開き「女性総裁 扉開いた」「拉致解決 今度こそ」
※社会面
「『働いていく』信念のショートヘア」
「地元歓喜『日本の夜明けだ』」
※第2社会面
「『日本の怒りを言葉にしてほしい』」
「早紀江さん『心込めて取り組んで』」
▽社説(「主張」)
「高市自民新総裁 全身全霊で危機克服を 政治の安定を取り戻したい」/女性首相誕生期待する/保守政党の原点に返れ

【東京新聞】
▽1面
「高市氏 自民新総裁/決選投票 小泉氏を破る/女性初の首相へ/裏金議員の起用 排除せず」
「『国民政党』の自覚取り戻せ」関口克己・政治部長
「『全員に馬車馬のように働いてもらう。私もワークライフバランスを捨てる』/高市氏、党モーレツ化を宣言」
▽2、3面見開き「『政治とカネ』にフタ」「連立拡大 絡む思惑」
※2面・核心
「高市氏意欲 維新は前向き」「公明硬化 右傾化に危機感」
「高市氏 掲げる経済政策は?/『財政出動で強く』/物価高政策に赤字国債容認」
「トランプ氏と会談へ/就任直後 外交日程めじろ押し」
※3面
「党内融和優先 内向き議論」「『鉄の女』を尊敬・タカ派的言動で波紋」
「『馬車馬…国民には強いないで』ネット反応」
「『ガラスの天井』やっと…/小泉氏『力不足』」
▽社会面
トップ「私たちの声に向き合って」コメ政策、排外主義、選択的別姓、若者世代
▽社説
「自民新総裁に高市氏 党の体質こそ変えねば」/裏金が「決着済み」とは/対立煽らぬ外交姿勢を/野党は政権を監視せよ




以上の内容はhttps://news-worker.hatenablog.com/entry/2025/10/06/092201より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14