参政党は、自党から擁立する衆院選候補者や地方選の候補者の公募の応募条件に、「⽇本国籍を有しており(多重国籍は不可)、帰化した者でないこと」を掲げていることを知りました。日本国籍を持つ日本国民でも、帰化した人は参政党の候補者にはしないということです。このことがどんな意味を持つのか、考えてみました。
このブログでは、参政党が公表している「憲法草案」への疑問を何度も書いています。その内容自体への疑問もさることながら、現行の日本国憲法の改正ではなく、全く新しい憲法を創る「創憲」を公約に掲げていることが、天皇をはじめ閣僚や国会議員、裁判官ら公務員に課せられた現行憲法への尊重、擁護の義務に反していると考えるからです。
そもそもそうした疑問をはらむ「憲法草案」の中でも、参政党が参院選で掲げた「日本人ファースト」の排他性と深く関連していると思うものに、「国民」の規定があります。
「憲法草案」の第五条は「国民の要件は、父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」としています。「父または母」が「日本人」とはどういうことか、「日本国民」ではダメなのか、帰化して日本国籍を取得しただけでは「日本人」と認めないのかとの疑問を感じます。
また、帰化して日本国籍を得ても、それだけでは「国民」としての権利すべてが認められるわけではないようです。「三世代を経ない限り、公務に就くことができない」と明記されています。公務に就けないのですから、公職の選挙にも立候補できません。こうした疑問は、このブログの過去記事で触れました。
※参考過去記事
この過去記事では、以下のように書きました。
国民であれば、18歳になれば選挙に立候補できます。しかし、帰化した人はそうではない。政治参加は国民の「権理」であり義務であると規定しながら、帰化した人の権利は大幅に制限する。「三世代」を経るということは、帰化した本人とその子どもには事実上、生涯にわたって被選挙権はないと読み取るほかありません。
帰化して日本国籍は取得しても、「国民」としての権利の根幹である参政権は制限されます。そのことを踏まえれば、「国民」の要件に挙げている「父または母が日本人であり」の「日本人」とは、日本国籍を持っているだけでは不十分なのか。論理的に考えていくと、そういう疑問に行き着きます。
参政党の「憲法草案」が規定する「日本人」には、帰化した人は含まないのだとすれば、「生まれ」「門地」「人種」を問う、ということなのでしょうか。仮にそうだとすれば、現行の日本国憲法が禁じている「差別」そのものです。
参政党の「憲法草案」に「日本人」の定義はありませんが、 「日本国民」よりも「日本人」を優位に置く発想が底流にあると解釈するほかありません。排除と差別の論理そのものです。
ただ、その排除や差別を現実のものとして危惧するようになるのは、将来のことだろうと思っていました。「国民主権」も「基本的人権の尊重」もなく、「平和主義」も危うい「憲法草案」は、現行憲法の「改正」の範囲を超えていると考えるほかなく、そのような内容の憲法の制定には、およそ現実味が感じられないと思っていました。
しかし、甘い考えは改めなければならないと思うようになりました。既に参政党は、帰化した日本国民の権利の制限を自党の中では実行しているからです。
この記事の冒頭に書いた通り、参政党は選挙の候補者公募の条件として、以下のようにホームページに記しています。「帰化した者でないこと」と明記しています。
応募資格
参政党の理念および綱領に賛同していること(誓約書への署名が必要)
⽇本国籍を有しており(多重国籍は不可)、帰化した者でないこと
応募時点で七十歳未満であること
本部や支部の決定した事項に沿って活動することを承諾できること
※議員当選後は毎月の議員歳費のうち、10%(町議・村議の場合は5%)を党に納めること。
※前科前歴、行政処分、裁判経験、未解決の異性関係のトラブル等についても申告すること。
虚偽の申告・不申告の場合は本党の議員資格を取り消す場合がある(詳細については、党の倫理委員会で検討)
※審査内容に関しましてのお問い合わせは一切受けかねます。
▼参政党「議員の入党・候補者公募」
https://sanseito.jp/2020/recruitment/
参政党から立候補しようとしたら、日本国民であることだけではダメで、帰化したのではなく、生まれながらに日本国籍を持っていなければならないということです。「生まれ」「門地」「人種」を問うのは、日本国憲法が禁じている「差別」に該当します。
日本国憲法
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
一つの政党、結社のことなので、「帰化」で差別があっても特に問題はない、との考え方もあるのかもしれません。しかし、当選すれば公職者、公務員です。現行憲法を尊重し、擁護する義務を負います。「差別」を容認して公職の選挙に立候補し当選したことと、憲法上の義務を負うことには深刻な矛盾があります。やはり、参政党の議員は憲法に反した存在と考えざるを得ません。もっとも、現行憲法を尊重も擁護もしないのなら、憲法に反していても何ら問題を感じることもないのかもしれません。「無自覚の憲法違反」。これは参政党の特性の一つかもしれません。
「帰化した人の排除」は、参政党が掲げる「日本人ファースト」の根本理念を具体化したものの一つだろうと感じます。「日本ファースト」でも「日本国民ファースト」でもありません。参政党が用いる「日本人」という単語は、「生まれながらの日本人」だけを指しているとしか考えようがありません。
「参政党とはそういう集まりだから」と軽視していると、公職選挙法を改正して、帰化した人の立候補を禁じる規定を盛り込もうなどと言い出しかねません。「非国民」とか「反日の日本人」などと口にして、それを改めようともしない参政党の国会議員が既にいます。
「参政党、いいんじゃないか」と考えている人は、ぜひ、参政党の「憲法草案」と日本国憲法を読み比べてみてください。
▼日本国憲法 ※衆議院ホームページ
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-constitution.htm
▼参政党の「憲法草案」
https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/
