以下の内容はhttps://news-worker.hatenablog.com/entry/2025/07/26/092503より取得しました。


「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

 国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇にも課している義務です。それほど、国会議員にとって憲法は絶対的です。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 政党も、国会や地方議会に議員を送り込むことを目指すのであれば、同じように現行憲法を尊重し、擁護する義務を負っていると言うべきです。
 その観点から、やはり憲法に違反していると言わざるを得ない政党があります。参院選で14人を当選させ、一躍存在感を高めた参政党です。神谷宗幣代表も参院議員です。

 このブログの以前の記事で、参政党の現行憲法へのスタンスは「『護憲』でも『改憲』でもなく、まったく新しい憲法を創る『創憲(そうけん)』」であることに触れました。つまり、現行憲法を認めないということです。少なくとも、尊重し擁護しようとする姿勢はありません。そのことを堂々と、参院選の公約に掲げていました。

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 そして今また一つ、参政党が現行憲法の価値観を否定しているとしか受けとめようがない出来事が起こっています。現行憲法が保障している「表現の自由」と「報道の自由」の否定です。“憲法違反”の参政党だからこそ、「表現の自由」と「報道の自由」を守る意思はないことが露呈している、と言ってもいいと思います。

 発端は、参政党が7月22日に開催した「記者会見」から、神奈川新聞の石橋学記者を排除したことです。その後の経緯をみると、単に記者会見への出席者を恣意的に選別した、ということにとどまらない、重大な意味があることが分かります。
 「記者排除」は石橋記者個人、神奈川新聞社の個別の問題ではありません。攻撃の矛先は報道界全体に向けられているに等しい。そして、参政党は「報道の自由」、ひいては「表現の自由」を認めていないとしか受け止めようがありません。
 以下、順を追って書きます。

 神奈川新聞は、石橋記者が「記者会見」から排除された際のやり取りを記事化しています。無料で同紙のサイト(カナロコ)で読めます。
 ▽「神奈川新聞記者と参政党側のやりとり詳報 参政党が会見から排除」
 https://www.kanaloco.jp/limited/node/1192784

www.kanaloco.jp

 この時点では、事前の登録がないからだめということでした。23日には他メディアも石橋記者の排除を報じます。参政党は取材に対して、排除の理由をやはり「事前申請がなかった」と説明していました。
 ▽共同通信「参政、神奈川新聞記者を『排除』 22日の神谷代表会見」
 https://news.jp/i/1320725607245234913?c=39550187727945729

news.jp

共同通信が受け取った会見の開催案内には事前申請が必要との記載はなかった。出席を認めなかった理由に関し、党の広報担当者は取材に「過去に会見に出席したことがある記者は事前申請不要だが、それ以外の記者は必要だった」と回答。「会場から無理やり出していない」とした。

 ところが24日に参政党のホームページで公開した「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」との文章では、理由を一変させました。
 ▼「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」
 https://sanseito.jp/news/n4158/

 石橋記者が参院選の期間中、「『しばき隊』と呼ばれる団体」と行動し、参政党の街頭演説への妨害行為に関与していたとし、今回の会見でも混乱が生じるおそれがあると判断し、主催者として入場を断ったとしています。
 看過できないのは、以下の部分です。

なお、報道機関の皆様におきましては、このような取材に名を借りた妨害行為に加担する報道倫理違反の行為を、報道業界として是正して下さるよう強くお願い申し上げます。

 神奈川新聞社は25日に公表した反論の中で、以下のように誤りを指摘しています。

 街頭演説の場で記者が取材の一環で行ったのは、「外国人は優遇されている」など事実と異なり外国人差別につながる候補者の主張に対する指摘と反論です。野放図に差別発言が流布されることにあらがう行為は誹謗中傷ではなく、ましてや選挙の妨害行為でもありません。
 現場には、同様の問題意識を持って駆けつけた有権者が、同じように差別発言に抗議の声を上げていました。また「しばき隊」という団体は存在せず、人々を「暴力的な集団」とみなして攻撃するための「ネットスラング」です。公党が市民に対して使うことに強い違和感を覚えます。

 ▼「参政党のメディア選別と虚偽説明に強く抗議 神奈川新聞が声明で反論」
 https://www.kanaloco.jp/limited/node/1193339

www.kanaloco.jp

 こうした経緯にもかかわらず、参政党は「取材に名を借りた妨害行為に加担する報道倫理違反の行為」と決めつけた上で、神奈川新聞社にではなく「報道業界」に「是正」を求めています。参政党の「報道の自由」への攻撃の矛先は石橋記者個人、あるいは神奈川新聞社にとどまらず、「報道業界」全体に向けられている、と受け止めるべきでしょう。

 以下の部分にも重要な問題が含まれています。

なお、会見の内容はすべて公式YouTubeチャンネルでノーカット配信しており、特定の記者や報道機関を排除する意図はありません。神奈川新聞社からは、「知る権利をないがしろにしている」とのご指摘を頂戴しておりますが、会見はすべて公開されており、報道機関や記者を問わず等しく視聴できる環境を整えております。したがって、そのようなご指摘は当たらないと考えております。
今後も、報道の自由と国民の知る権利を尊重しつつ、健全な言論空間と秩序ある情報発信に努めてまいります。

 石橋記者であると、神奈川新聞社であるとを問わず、動画でノーカット配信するからそれで記事を書け、放送ニュースを作れ、と言っているわけです。「特定の記者や報道機関を排除する意図はありません」と言えばもっともらしく聞こえますが、意味しているのはそういうことです。
 これは記者会見ではありません。一方的なプロパガンダです。今回の記者排除の本質です。
 記者会見と一方的なプロパガンダとの違いは、第一に取材者の自由な質問を認め、それに誠実に回答するかどうかです。取材者にとって、取材対象に質問することは「報道の自由」の基本です。参政党はその「報道の自由」を認めない立場だと考えざるを得ません。ごく控えめに言っても、「報道の自由」の意味が理解できていない。
 「報道の自由」は憲法に明記された「表現の自由」から導かれる市民の側の「自由」の一つです。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 「報道の自由」、ひいては「表現の自由」を認めないのは、一人の個人であればそういうことを主張するのも自由ですが、国会議員にその自由はありません。憲法の尊重、擁護義務を負っているからです。政党も同様です。
 参政党は、今や国会議員を20人近くも要する国政政党でありながら、驚くことに、「表現の自由」や「報道の自由」を否定しているも同然です。公約に掲げた憲法観(「護憲」や「改憲」の立場ではないと明記)と合わせて考えれば、現行憲法の価値観を否定していればこそのことだとも感じます。
 「今後も、報道の自由と国民の知る権利を尊重しつつ、健全な言論空間と秩序ある情報発信に努めてまいります」と言ってはいますが、控えめに考えてみても、「報道の自由」や「知る権利」の理解を欠いています。むしろ「健全な言論空間と秩序ある情報発信」の部分に、参政党の本音がむき出しになっていると感じます。「健全」や「秩序」の基準は参政党が決める、ということです。

 参政党が公表している「憲法草案」には「表現の自由」がありません。同時に「報道」と「報道機関」を国家統制の下に置こうとする志向が濃厚に読み取れます。そのことが何を意味するか、このブログの以前の記事で書きました。そうした志向を持っている参政党なら、記者排除も当然の発想かもしれません。

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 記者の排除はもちろん許されません。より本質的なことは、参政党が現行憲法を認めておらず、憲法を尊重、擁護する義務を果たそうとしない“違憲の勢力”だということです。そして、参政党の攻撃は石橋記者、神奈川新聞だけではなく、報道界全体に向けられている、と受け止めるべきです。
 参政党に対しては「特定の記者を排除するな」と求めるだけでなく、「まず憲法を順守せよ」と求めることが必要です。現行憲法を尊重し、擁護することは、神谷代表をはじめ同党の国会議員に課せられた義務です。「まず義務を果たせ」ということです。
 参政党は日本国憲法を順守し、現行憲法が保障している「表現の自由」と「報道の自由」、「知る権利」の意味を学ぶべきです。“憲法違反”でありながらも、参政党の存在、同党の国会議員の活動が保障されているのも、日本国憲法だからこそです。

 繰り返しになりますが、参政党が「記者会見」と称しているものは記者会見ではありません。一方的なプロパガンダです。これを「記者会見」と認めてしまうと、問題の本質が分かりづらくなります。「記者会見」であることを前提にする限り、参政党が主張と対応を変えることはないでしょう。
 なお、記者会見であるならば、どのような取材者であれ、取材者であれば参加できること、自由に質問できることが保障されるのは当然のことです。そのことは報道界全体で共有されなければなりません。

※参考
 新聞労連が7月24~25日の定期大会で、石橋記者の排除の問題を取り上げました。24日には石橋記者が登壇して報告。25日には定期大会の特別決議を採択しています。
 石橋記者の発言は、神奈川新聞の記者の方がXに要旨を投稿しています。
 https://x.com/shintayabe_257/status/1948651730926797259

 新聞労連の特別決議は、以下で全文が読めます。
 https://shimbunroren.or.jp/special-resolution-supporting-kanagawa_shimbun_reporter/

 記録の意味で、全文を書きとめておきます。

 【 特別決議 】参政党による神奈川新聞記者に対する記者会見排除に抗議する
 参政党が7月22日、参議院議員会館で開いた定例記者会見で、神奈川新聞の石橋学記者の取材を拒否した。記者会見は14議席を獲得し躍進した参政党が、参院選の総括と今後の目標について発表する趣旨だった。ところが、石橋記者が会場に入ったところ、党のスタッフから退席を求められた。スタッフは事前の登録がないので「退席していただきたい」などと主張。石橋記者が抗議すると「とにかく駄目」「こちらには主催者権限があるのであなたを拒否している」とさらに強硬な態度になり、「警備を呼んだ」と威嚇的な姿勢も示し、石橋記者は取材から排除された。公党である参政党による報道の萎縮を狙った圧力であり、市民の知る権利を著しく損ねる行為だ。石橋記者が質問し、記事を執筆する権利も奪った。報道の自由への侵害だ。強く抗議し、今後同様のことを繰り返さないよう求める。

 石橋記者は参院選の選挙期間中、神奈川選挙区で初当選した参政党候補を取材。「外国人は優遇されている」とした発言を事実に基づかないと指摘したり、街頭演説で抗議に集まった市民を指して候補が「ああいうのは非国民ですから」と話したことを記事にしたりするなど、候補の言動を批判する記事を精力的に執筆していた。参政党は共同通信の取材に対して「過去に会見に出席したことがある記者は事前申請不要だが、それ以外の記者は必要だった」と説明している。その要件が前もって内部で決まっていたかどうかは知る由がないが、案内文に記載がない以上、出席記者は事前に知り得ない。

 参政党は24日、「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」と題した文章を公式ホームページにアップし、石橋記者の排除問題に関する見解を示した。参院選の選挙期間中に、石橋記者が「本党の街頭演説で大声による誹謗中傷などの妨害行為に関与していたことが確認されている」として、石橋記者が出席することで混乱が生じる恐れがあることを理由に挙げた。しかし、こうした説明は後付けに過ぎず、22日の会見時の「事前申請が必要」という説明も虚偽である。参政党は、記者会見はユーチューブでノーカット配信し誰でも視聴できるとして、特定の記者や報道機関を排除する意図はなく、会見は公開されていると主張している。だが、記者会見は傍聴ができるだけでは成り立たない。記者との質疑応答がなければ、発表者側の一方的な情報提供に終わってしまう。石橋記者を排除したのは、批判的な質問を封じるためだったと考えるほかない。公党として責任逃れと言える行為だ。

 神奈川新聞社も23日、「ジャーナリズム全体を軽視する行為と言わざるを得ない」との抗議文を参政党に提出している。新聞労連に集う約1万6千人の仲間たちは、石橋記者と神奈川新聞社に連帯し、知る権利、報道の自由への圧力や攻撃に対して毅然と闘っていく決意だ。

2025年7月25日

日本新聞労働組合連合(新聞労連)

第146回定期大会

【写真:神奈川新聞のサイト「カナロコ」より】




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