このブログで4回連続の更新になりますが、参院選で「日本人ファースト」を掲げている参政党の「憲法草案」について、もう少し書きとめておきます。
現行の日本国憲法が保障している数々の国民の権利が、この「憲法草案」には見当たらないことは、一つ前の記事でも触れました。逆に、憲法に書き込む項目として、違和感がぬぐえない条文が多々あります。その中でも「特異」といった評価では済まないと感じるのが、「国民」の規定です。直接的には以下の条文があります。
(国民)
第五条 国民の要件は、父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める。
2 国民は、子孫のために日本を守る義務を負う。
この条文を目にして思ったのは「『父または母が日本人』の『日本人』って、定義は何だろう」ということです。「日本国籍を持つ者」ではないのでしょうか。父または母が日本国籍を持っているだけでは不十分なのでしょうか。
別の条文には以下のような項目もあります。重ね合わせて考えてみると、帰化して日本国籍を得ても、それだけでは「日本人」ではないということなのか、疑問が生じます。
(外国人と外国資本)
第十九条 外国人の入国及び在留条件は、国が主権に基づき、自由に決定することができる。
2 (略)
3 (略)
4 外国人の参政権は、これを認めない。帰化した者は、三世代を経ない限り、公務に就くことができない。帰化の条件は、国柄の理解及び公共の安全を基準に、法律で定める。
「帰化した者は、三世代を経ない限り、公務に就くことができない」。三世代を経ない限り、公務員として採用されないばかりではなく、公職の選挙に立候補できないことをも意味すると読み取るのが自然です。
「国民」の政治参加については、以下のような条文もあります。
(政治参加)
第十三条 国民は、政治に参加する権理を有し、義務を負う。
2 十六歳以上の国民は選挙権を有し、十八歳以上の国民は被選挙権を有する。
3 (略)
4 (略)
5 候補者及び議員の本名、帰化の有無、収支等の情報は公開される。
国民であれば、18歳になれば選挙に立候補できます。しかし、帰化した人はそうではない。政治参加は国民の「権理」であり義務であると規定しながら、帰化した人の権利は大幅に制限する。「三世代」を経るということは、帰化した本人とその子どもには事実上、生涯にわたって被選挙権はないと読み取るほかありません。
帰化して日本国籍は取得しても、「国民」としての権利の根幹である参政権は制限されます。そのことを踏まえれば、「国民」の要件に挙げている「父または母が日本人であり」の「日本人」とは、日本国籍を持っているだけでは不十分なのか。論理的に考えていくと、そういう疑問に行き着きます。
参政党の「憲法草案」が規定する「日本人」には、帰化した人は含まないのだとすれば、「生まれ」「門地」「人種」を問う、ということなのでしょうか。仮にそうだとすれば、現行の日本国憲法が禁じている「差別」そのものです。
日本国憲法
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
この「差別容認」の「憲法草案」が、参政党が理想とする国のありようだとするなら、「日本人ファースト」は人種差別そのものの意味合いを持ちます。どんな言い訳の余地もないほど明確だと思います。
かつてドイツで、ナチスがドイツ国籍を持ったユダヤ人を攻撃したことを思い起こします。
ちなみに、日本国憲法の「国民」の規定は以下の通り、簡素です。
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
また、「法律でこれを定める」としている「法律」の「国籍法」は以下のように規定しています。
国籍法
(この法律の目的)
第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。(第三条以下略)
帰化の手続きも含めて、「日本国民」の要件は「日本国籍」を持っていることです。日本国憲法の下では当たり前のことなのですが、参政党の「憲法草案」ではそうなっていません。
もう一点、「国民」の要件について参政党の「憲法草案」が「日本を大切にする心を有することを基準として」としている点にも触れておきます。個人の内心に踏み込むこと、「日本を大切にする心」が何を指すかあいまいであることなど、疑問だらけです。
わたしたちの社会には外国にルーツを持ち、歴史的な経緯やさまざまな個別の事情があって定住したり滞在している隣人がたくさんいます。日本国籍の有無にかかわりなく、差別は容認しません。
一人一人がそれぞれの場所で、ささやかでも「差別はだめ」「だれもが平等で自由」と声に出す、隣の人と話す。その積み重ねがあれば、希望は続くと思います。
「参政党、いいんじゃないか」と考えている人は、ぜひ、参政党の「憲法草案」と日本国憲法を読み比べてみてください。参政党に限らず、「外国人のせいで日本人が苦しんでいる」などの主張にひかれている人も。
▼日本国憲法 ※衆議院ホームページ
www.shugiin.go.jp
▼参政党の「憲法草案」
https://sanseito.jp/new_japanese_constitution/
【筆者注】参政党の「憲法草案」13条5項は「候補者及び議員の本名、帰化の有無、収支等の情報は公開される」となっています。「帰化の有無」が含まれているので、帰化した人にも被選挙権がある、つまり当選すれば公務に就けるとも読めます。あるいは、選挙には立候補できるが、当選しても「3世代を経なければ」規定によって、実際は公務には就けないと解釈すべきなのか。よく分かりません。

国籍も人種も異なっても、違いを尊重し合い、支え合って共生する社会を目指したいと思います(写真出典:ウイキペディア「東京」)
※参考過去記事