フジテレビの第三者委員会が3月31日に公表した中居正広・性暴力問題の報告書を、地方紙やブロック紙が社説、論説でどのように取り上げたか、ネット上の各紙のサイトで分かる範囲で見てみました。4月11日付までに関連の社説、論説を掲載したのは20紙以上。うち全文を読むことができたのは13紙です。フジテレビの企業体質を批判し、「解体的出直し」「抜本的出直し」などの強い表現で改革を求めている点が共通しているのは、全国紙各紙と変わりません。
この性暴力問題の本質の一つは「フジテレビだけの問題なのか」であるとわたしが考えていることは、このブログの一つ前の記事に書きました。全文を目にした地方紙の社説、論説の中でいくつか、フジテレビだけの問題ではない、と指摘しているものがありました。自己を含めたメディア業界全体、さらには社会全体の問題だととらえた視点を読み取れるものもあります。
以下は、見出しに「企業の人権感覚問い直せ」と掲げた琉球新報の社説です。一部を書きとめておきます。
■琉球新報:4月2日付社説「フジテレビ調査報告書 企業の人権感覚問い直せ」
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-4114121.html
問題は根深い。報告書は社内外の力関係に起因する性暴力は「メディア・エンターテインメント業界における構造的な課題」と断罪している。
つまりは業界全体にはびこり、繰り返される可能性を指摘しているのだ。フジの一連の対応が問題視されるのは、同社が人権問題に敏感であるはずの報道機関であることにもある。メディア業界はもとより一般企業で人権侵害が見過ごされていないか。
報告書の指摘は、フジの特異な状況に関するものだが、取引先との関係など、一般企業にとって戒めとなる部分もある。それぞれの企業の人権感覚を問い直す必要がある。
性差を巡って不利益を被るような状況がないか、ハラスメント発生時の対応はどうか、倫理規定や窓口を設けていたとしてもそれが機能するのか。さまざまな論点で労働環境を見直してみる必要性を突きつけてもいる。

琉球新報は、総務相がフジテレビに行政指導を行ったことに対しても、社説で疑義を表明しています。放送の自由、ひいては報道の自由、表現の自由にもかかわってくる重要な指摘です。
■琉球新報:4月8日付社説「総務相がフジ厳重注意 放送法での指導は妥当か」
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-4131705.html
長年にわたり自浄作用が働かなかったフジテレビのようなことが起きないためにどうすべきか。BPOの機能拡大や新たな独立機関などを、業界内で検討すべきであろう。
安倍晋三政権以来、NHKへの圧力や介入、総務省による行政指導が頻発している。その結果、報道現場の萎縮などが指摘されてきた。行政指導を招く事態を起こさないことが第一だが、放送法による行政指導は最小限であるべきだ。放送法は放送の自由を確保するために制定されたことを改めて確認したい。
もう一つ、気になっていたのは、放送だけではなく新聞も「沈黙」の当事者だった旧ジャニーズ事務所の性加害問題への言及の有無です。旧ジャニーズ事務所の性加害問題がほぼ同時進行でありながら、フジテレビが社員の性暴力被害を放置したばかりか、二次加害の当事者にもなっていた点に問題の深刻さがあります。全国紙の報道では、この論点は驚くほど稀薄です。
地方紙、ブロック紙ではいくつか、旧ジャニーズ事務所の性加害問題に触れています。新聞の当事者性にまで直接言及している例は見当たらないものの、なおざりにしてはならない重要な視点、論点です。
以下は山陽新聞の指摘です。
■山陽新聞:4月4日付社説「フジテレビ問題 組織の病弊猛省すべきだ」
https://www.sanyonews.jp/article/1704532
旧ジャニーズ事務所の性加害問題を機に、フジは人権を守る仕組みを構築すると表明していたはずだ。それが機能しなかったのは、経営上層部の感覚が時代の要請に合っていないからではないのか。
(中略)
第三者委が、社内外の力関係に起因する性暴力やハラスメントは「メディア・エンターテインメント業界における構造的な課題」と位置付けたことも重要である。被害に遭った女性は「このようなことが業界だけでなく、社会全体からなくなることを心から望みます」とのコメントを出した。あらゆる組織が「わがこと」として重く受け止め、教訓とせねばならない。
※参考過去記事
以下に、サイト上で全文を読むことができる地方紙、ブロック紙の社説、論説の見出しとリンクをまとめました。「フジテレビだけの問題ではない」との論点に触れたものは、その部分を書きとめておきます。
【4月7日付】
■高知新聞「フジテレビ問題 企業体質改められるか」
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/848443
芸能界はもともと性的ハラスメントが起こりやすく、職務上の優越関係を悪用した性被害が絶えない業界だとされてきた。旧ジャニーズ問題も記憶に新しい。
報告書は、性的暴力・ハラスメントの人権問題は「フジ固有のものではなく、メディア・エンターテインメント業界における構造的な課題だ」とも指摘した。業界全体で重く受け止める必要もある。
【4月2日付】
■北海道新聞「フジテレビ問題 解体的出直しが必要だ」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1143191/
しかし視聴率獲得競争の中で人気タレントに依存し、人権を軽視する体質はジャニーズ問題でもテレビ局各局に問われた。
経営陣に女性登用が進まず、男性中心主義的な価値観が根強く残るのはメディア企業に限った話ではない。日本企業全体に多様性の尊重やハラスメント根絶の課題が突きつけられていることを忘れてはならない。
■東奥日報「解体的出直しが必要だ/フジ第三者委報告書」
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1991253
改革は被害者の痛みへの共感からしか始められない。フジは被害女性の声に耳を傾け、心から謝罪してほしい。他のメディア企業も同様のことが起きていないか、これを機に総点検すべきだ。
■信濃毎日新聞「フジテレビ 信頼回復の道は険しい」
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2025040200114
報告書は、社内外の力関係から起きる性暴力やハラスメントはメディア・エンタメ業界の構造的な課題とも指摘している。女性を見た目や年齢で評価し、ハラスメントにも見て見ぬふり―。これはフジだけの問題なのか。一人一人が働く場を省みる機会としたい。
■新潟日報「フジ第三者委報告 体質改め抜本的出直しを」
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/584439
■京都新聞「フジテレビ問題 性暴力生んだ企業体質」
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1451804
芸能界と放送業界のゆがんだ関係の根深さが、またも浮き彫りになったといえよう。
(中略)
一昨年発覚した旧ジャニーズ事務所創業者の性暴力でも、被害を助長した放送局の見て見ぬふり、人権意識の欠如が問題になった。芸能界とメディアの関係正常化へ業界の取り組みも問われる。
■神戸新聞「フジテレビ問題/あしき慣習断ち切らねば」
https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202504/0018821856.shtml
■中国新聞「フジ第三者委報告書 信頼回復さらに険し」
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/622173
■西日本新聞「フジ調査報告 人権侵害を猛省し出直せ」
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1334439/
テレビ局の社会的責任も自覚する必要がある。組織の人権意識は報道や番組などのコンテンツに反映される。視聴者に与える影響は大きい。
報告書は放送業界や芸能界など業界全体にも注文をつけた。今回の事案や旧ジャニーズ問題に見られる性加害に甘い体質は、業界の構造的な問題ではないかと提起した。重く受け止めてほしい。
フジテレビ問題の根底に、人権より利益を重視する考えがある。社会全体から見れば氷山の一角ではないか。あらゆる組織がハラスメントを一掃する契機とすべきだ。
■沖縄タイムス「フジ第三者委報告 解体的出直しが必要だ」
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1556365
【4月1日付】
■中日新聞・東京新聞「フジ性暴力調査 組織の病弊は明らかだ」
https://www.chunichi.co.jp/article/1046602
このほか、有料コンテンツのため全文は読めませんが、見出しが確認できた地方紙がありました。以下の通りです。
■河北新報:4月2日付「フジテレビ問題 希薄な人権意識浮き彫りに」
■神奈川新聞:4月3日付「フジ第三者委報告書 教訓をいかに残すか」
■山梨日日新聞;4月2日付「フジ第三者委報告書 解体的出直しが信頼への道」
■山陰中央新報:4月3日付「フジ第三者委報告書 解体的出直しが必要だ」
■愛媛新聞:4月3日付「フジテレビ問題報告書 人権侵害許さぬ抜本改革を急げ」
■徳島新聞:4月4日付「フジ第三者委報告 人権軽視の体質に驚く」
■大分合同新聞:4月3日付「フジ第三者委報告書 解体的出直しが必要だ」
■宮崎日日新聞:4月3日付「フジ第三者委報告書 問われるべきは企業風土だ」
■佐賀新聞:4月2日付「フジ第三者委報告書 解体的出直しが必要だ」