一つ前の記事(「戦争の理不尽を語り継ぐことの今日的な意義~企画展「東京大空襲80年ー新たな記録を探し続けて」)の続きです。
1945年の東京大空襲から80年の節目に、新聞がどのような報道をしたのか、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の全国紙3紙と、東京の地元紙である東京新聞の4紙のデジタル版について、3月10日~11日にアップロードされた記事を見てみました。一覧を後掲します(原則として、紙面掲載記事は対象にしていません)。
朝日新聞はわたしのカウントで関連記事は12本。中でも、日本本土の空襲の指揮を執った米軍のカーチス・ルメイ少将に触れている2本の記事が目を引きました。
※東京大空襲を「画期的」と自賛した少将 今も変わらぬ殺す側の論理 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST38535NT38UTIL014M.html
死者は約10万人と言われるが、実態は今も分かっていない。被災者は100万人、焼失家屋は約27万戸にのぼり、当時の東京35区のうち本所、深川、浅草などの6区は大部分が壊滅した。
空襲を指揮したカーチス・ルメイ少将は、回想録で東京大空襲をこう自賛している。
「近代航空戦史上で画期的なできごとになった」
(中略)
こうした欧州戦線で米軍の空襲を指揮した一人がルメイ少将だった。45年初頭、対日本の爆撃機部隊の司令官になる。
当時の部下の回想記によると、ルメイ少将は東京攻撃の1週間ほど前、指揮官たちにこう指示し、町工場と住宅が混在する下町への爆撃を正当化した。
「武器を製造する日本の労働者は、彼らの軍事機械の一部であることを忘れてはならない」
ルメイは戦後、航空自衛隊の育成に功績があったとして、1964年に日本政府から勲一等旭日大綬章を贈られています。現在も賛否があります。
※日本空襲を指揮した米軍司令官への叙勲 市民が取り消しを要請
https://digital.asahi.com/articles/AST3B331VT3BUTIL01TM.html
沖縄戦戦没者の遺骨収集を続ける市民団体「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんらは10日に国会内で、勲章の法令を担当する内閣府賞勲局職員と面会。(中略)叙勲は「ルメイ氏による日本人の大量殺戮を日本政府が看過したということ」だとして、取り消しを求めた。
担当職員は「功績調書に、航空自衛隊の功績以外の記録は残っていない。功績を覆す事案がない限り、新たに議論することはない」と述べた。
日本政府は空襲被害について、一切の補償を拒否しています。ルメイへの叙勲とその取り消しを求める声への冷淡な対応は、民間人の戦争被害を放置する姿勢と底流で通じるものがあるように思えてなりません。
もう一つ、印象に残ったのは、東京大空襲の際に茨城県に墜落したB29搭乗員を追悼する地元の人たちを紹介した毎日新聞の記事です。
※戦後80年 異国で死んだ米兵 石碑に記憶を刻む住民たち 東京大空襲80年
https://mainichi.jp/articles/20250306/k00/00m/040/336000c
救助された米兵3人のうち1人は処刑され、2人は東京の戦争捕虜収容所に収容されたが、45年5月の空襲で死亡していたことが判明した。
秀三郎さんは一連の調査結果をまとめた著書「B29墜落―米兵を救った日本人」(論創社)を99年に出版。その中で「悲しい事実にも出会って、調査を続行することに厳しさを感じました」とつづっていた。
2001年、秀三郎さんは冨山さんや旭さんら地元の有志に声を掛け、大学の退職金も充てて墜落現場近くに石碑を建立した。
碑には「B29墜落平和の碑」と刻んだ。「残さないと忘れ去られてしまう」という思いからだった。
碑の前で毎年、追悼式を開くようになり、参列した米国人の遺族が感謝しながら土を持って帰ったこともあった。旭さんは「(家族を思う気持ちは)アメリカ人も日本人と変わらない」と感じた。
墜落して日本で死亡した米兵を追悼する同じような例は、このブログでも昨年、東京都青梅市の慰霊碑のことを紹介しました。
戦争は、勝者の側にも傷を残します。日本空襲に加わったB29搭乗員のうち3千人以上が戦死しました。昨年のブログ記事で以下のように書きました。その思いは変わりません。
米軍の日本本土空襲は、前例のない規模での都市住民に対する無差別攻撃であることは間違いがなく、その当否は勝者ではなく、歴史の審判にゆだねられるべきことだろうと思います。ただ一方で、戦死したB29の搭乗員たちも、戦争がなければ米国社会で普通の生活を送っていたはずの若者たちでした。
こうした歴史を記録にとどめ、語り継いでいくことの大切さを改めて思います。
以下に、朝日、毎日、読売、東京の4紙のデジタル版で、目にとまった記事を書きとめておきます。原則として、紙面掲載記事は対象にしていません。■は無料で読める記事、▽は有料会員向けの記事です。
【朝日新聞】
■一夜で死者10万人、東京大空襲から80年 実相不明、救済も進まず
2025年3月10日 5:00
https://digital.asahi.com/articles/AST391PSWT39UTIL007M.html
▽東京から始まった無差別空襲、終戦当日も 逃げた市民に激怒した知事
2025年3月10日 5:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST384D3PT38UTIL02CM.html
▽東京大空襲80年、実相どう伝え継ぐ 「証言の立体化」めざす学芸員
2025年3月10日 6:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST372DV8T37TNLL001M.html
▽東京大空襲を「画期的」と自賛した少将 今も変わらぬ殺す側の論理
2025年3月10日 9:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST38535NT38UTIL014M.html
▽東京大空襲明け、すすまみれの「生存記念写真」 80年後に思う母
2025年3月10日 10:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST3743V5T37PTIL009M.html
▽東京大空襲から80年 なぜ、米軍は無差別爆撃に踏み切ったのか
2025年3月10日 11:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST3510NGT35UHBI00MM.html
■「二度と起きないで」 大空襲の犠牲者悼む法要、秋篠宮さまらも参列
2025年3月10日 11:00
https://digital.asahi.com/articles/AST3B0Q09T3BUQIP00ZM.html
▽80年前の悲劇「私は忘れない」 東京大空襲の体験者ら各地で祈り
2025年3月10日 17:55 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST3B2SL3T3BUQIP037M.html
■日本空襲を指揮した米軍司令官への叙勲 市民が取り消しを要請
2025年3月10日 19:00
https://digital.asahi.com/articles/AST3B331VT3BUTIL01TM.html
■スカイツリーが真っ白に 東京大空襲から80年、鎮魂の思い
2025年3月10日 19:00
https://digital.asahi.com/articles/AST3B1GCLT3BUQIP036M.html
▽あっという間に火の海に…東京大空襲から80年、各地で犠牲者を悼む
2025年3月10日 20:00 ※有料記事
https://digital.asahi.com/articles/AST3B35VJT3BOXIE036M.html
▽猛火の言問橋で生き延びた14歳 つらい記憶とつけられなかった指輪
2025年3月11日 7:00
https://digital.asahi.com/articles/AST3B3DYXT3BOXIE00LM.html
【毎日新聞】
■戦後80年 異国で死んだ米兵 石碑に記憶を刻む住民たち 東京大空襲80年
2025年3月10日 05:00
https://mainichi.jp/articles/20250306/k00/00m/040/336000c
■東京大空襲80年、都慰霊堂で大法要 秋篠宮ご夫妻ら160人が参列
2025年3月10日 14:08(最終更新 3月10日 19:25)
https://mainichi.jp/articles/20250310/k00/00m/040/116000c
▽戦後80年 東京大空襲 各地で追悼式典 平和と繁栄、次世代へ 悲劇の体験「墓には髪一本も…」 /東京
2025年3月11日 地方版(多摩版) ※有料記事
https://mainichi.jp/articles/20250311/ddl/k13/040/001000c
【読売新聞】
■東京大空襲80年、秋篠宮ご夫妻と遺族らが大法要に参列…「語り継ぎ生かすことが使命」
2025年3月10日 14:11
https://www.yomiuri.co.jp/sengo/20250310-OYT1T50091/
▽92歳のクラスメート、東京大空襲以来の再会…つないだ卒業証書を資料館へ「当時の子に思いはせて」
2025年3月10日 16:00 ※読者会員限定
■両陛下と愛子さま、東京大空襲80年で犠牲者悼み黙とう…皇居・御所
2025年3月10日 17:34
https://www.yomiuri.co.jp/koushitsu/20250310-OYT1T50155/
▽[戦後80年 昭和百年]猛火、悲鳴 焼き付く記憶…東京大空襲 母と弟失った女性「本当に地獄」
2025年3月11日 05:00 ※読者会員限定
■東京大空襲から80年「悲しみに節目なく」…国分寺の92歳・砂田さん、母思い今も涙
2025年3月11日 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/local/tokyo23/news/20250310-OYTNT50220/
■「空は真っ赤、飛行機は真っ青」幼心に感じた戦争の恐怖…佐野の高沢さんが初めて明かす体験
2025年3月11日 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/local/tochigi/feature/CO081000/20250310-OYTAT50043/
【東京新聞】
■天皇ご一家、皇居で黙とう 東京大空襲から80年
2025年3月10日 15:27 (共同通信)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/390784
■東京大空襲80年、継承誓う 民間人被害の補償要求
2025年3月10日 19:07 (共同通信)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/390739
■犠牲者10万人鎮魂の光 東京スカイツリー
2025年3月10日 20:37 (共同通信)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/390843
■東京大空襲「普通の生活がずたずたに」 記憶を風化させず平和を誓う 都内各地で追悼式典
2025年3月10日 19:56
https://www.tokyo-np.co.jp/article/390848
▽<2025年 戦後80年>節目の年に語り継ぐ戦争 東京大空襲 追悼行事
2025年3月11日 07:32 ※会員限定記事

※写真:隅田川にかかる言問橋の台東区側にある慰霊碑の碑文
【追記】2025年3月12日8時10分
言問橋そばの慰霊碑の碑文は「あゝ 東京大空襲 朋よやすらかに」です。犠牲者は、想像を絶する苦しみの中で息絶えたのではないかと思います。だから追悼の言葉は「やすらかに」なのかと考えています。ルメイへの叙勲を今日の社会を生きるわたしたちがどう考えるかは、ロシアやイスラエルをどう考えるのかに通じると思います。マスメディアの組織ジャーナリズムが繰り返し、問うていくべきことだと思います。