「中居正広・性加害問題」やフジテレビの「性接待疑惑」に対して、フジテレビの対応を直接取材する東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が、それぞれ社説でどう言及しているか、ことし1月分を見てみました。
フジテレビは1月17日の最初の記者会見で、社長の定例会見の延長であることを理由に、参加を新聞・通信各社でつくる記者クラブの記者らに限定しました。質問に対しても、今後の調査の対象であるとして、回答しませんでした。この会見に対して、19日付で朝日新聞、毎日新聞両紙が社説で取り上げ、日経新聞、東京新聞(中日新聞と共通)、産経新聞が続きました。
17日の会見の直後から、スポンサー企業がフジテレビでのCM放映を控える動きが急速に広がりました。23日になって、フジテレビは第三者委員会の設置と記者会見のやり直しを表明。読売新聞も25日付で取り上げるに至り、日経新聞、朝日新聞はそれぞれ2回目の社説を掲載しました。27日のやり直し会見は10時間超に及び、終わったのは28日未明でした。6紙とも28日付~29日付で社説を掲載しています。
以上の経過に則して、各紙の社説の見出しを一覧にしました。

各紙の社説の見出しは、フジテレビへの厳しいトーンが目立ちます。「批判一色」と言ってもいいように感じます。
確かに、性加害問題自体への対応も、対外的に情報開示と説明を尽くす姿勢を欠いていたことも、批判は免れません。ただし、新聞各紙が今回の問題を、フジテレビに固有の特殊な問題だととらえているのなら危ういと思います。
1月27日のやり直し会見でフジテレビの前社長は、性加害の問題は人権の問題であるとの認識を欠いていたことを明白に認めました。この「人権」のキーワードこそは、旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長の性加害を巡って、テレビ各局が最大の教訓としたことのはずでした。フジテレビが元社長の性加害問題へ対応していた時期と、今回の性加害問題への対応の時期は重なります。単に人権意識を欠いていたということにとどまらない深刻さ、問題の根深さがここにあります。そして、旧ジャニーズ事務所の件をどう総括し、何を教訓としていたかが問われるということでは、新聞社各社、通信社も変わりがありません。元社長の性加害に対する「沈黙」が同じように問われたからです。
フジテレビも含めて、テレビ各局は曲がりなりにも旧ジャニーズ事務所の問題を自己検証し、番組として放送しました。しかし、新聞社・通信社では、自己検証と呼べる検証を行い、その結果を自ら報じたのは朝日新聞だけです。ほかは、どんな検証を行い、その結果としてどんな教訓を得たのか、それをどう組織の中で浸透させているのか。そうしたことを社会に明らかにしていないままです。
各紙の社説の中では、わずかに朝日新聞がジャニーズ問題とのつながりに触れたり、自己の当事者性に言及したりしています。他紙にそうした姿勢が見られないまま、フジテレビ批判が続いていることが、社会の人々にどんな風に受け止められるか。新聞の組織ジャーナリズムへの信頼のために、今からでも、旧ジャニーズ事務所の問題にさかのぼって自己検証を行い、その結果と教訓を公表する選択肢があるはずです。
各紙の社説はネット上で読むことができます。リンクを張っておきます。
朝日新聞の社説については、ジャニーズ問題とのつながりに触れたり、自己の当事者性に言及した部分を書きとめておきます。
■朝日新聞
・1月29日付「フジテレビ会見 残る疑問 真剣に検証を」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16137180.html
事態の重みを受け止められず対応が後手に回った一因に、年齢層の高い男性が大部分を占める上層部の同質性が影響しなかったか。さらなる刷新が必要だ。
多くの疑問は会見を経ても残ったままだ。何が起きたのか。どんな対応があり得たのか。第三者委とフジ自身が正面から検証してもらいたい。
上層部の同質性や人権への鈍感さがないかどうか。政界や他の企業にとってもひとごとではない。自らを省みる機会にもしたい。
・1月26日付「フジテレビ 構造と責任 調査徹底を」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16135147.html
・1月19日付「テレビと芸能 業界の透明化へ調査を」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16129583.html
報道からほどなく、フジ以外のテレビ局も、中居氏が出演する番組の差し替えやシーンのカットをした。高度なプライバシーに関わり、事実関係や当事者間の権力関係が見えにくいなど、性的な問題をめぐる疑惑には対応の難しさがある。その中でも、人権侵害の可能性を重くくんだ各局の判断は基本的には望ましいだろう。一方で、判断理由の説明は必ずしも明確でない。根拠を明らかにし、「ジャニーズ問題」後に制定された人権方針を具体的に運用する方法を、見いだしていく時だ。
■毎日新聞
・1月28日付「フジ社長が辞任表明 人権軽んじた背景解明を」
https://mainichi.jp/articles/20250128/ddm/005/070/075000c
・1月19日付「中居氏問題でフジ会見 疑問に答える徹底調査を」
https://mainichi.jp/articles/20250119/ddm/005/070/043000c
■読売新聞
・1月28日付「フジ社長辞任 メディア不信招いた責任重い」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250128-OYT1T50001/
・1月25日付「フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250125-OYT1T50013/
■日経新聞
・1月28日付「フジは企業統治の抜本的な見直しを急げ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK273Q70X20C25A1000000/
・1月24日付「不信を増幅させたフジの過ち」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK23AWJ0T20C25A1000000/
・1月20日付「フジは丁寧な調査と説明を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK173X20X10C25A1000000/
■産経新聞
・1月31日付「週刊文春の『訂正』 倫理綱領の姿勢に反する」
https://www.sankei.com/article/20250131-5MUYSLSOSBJVBIEBRSHRKONMMU/
・1月28日付「フジ社長ら辞任 信頼回復へ全力を尽くせ」
https://www.sankei.com/article/20250128-6Z5VVCFTUBLTZAAI7LX7VLKQ2I/
・1月23日付「フジテレビの調査 信頼回復へ厳正な解明を」
https://www.sankei.com/article/20250123-7WKGFSHLTRLOBHETVYOCJMMM4I/
■中日新聞・東京新聞
・1月28日付「フジ社長ら辞任 解体的出直しが必要だ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/382226
・1月21日付「フジテレビ会見 企業統治不全が深刻だ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/380570