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ニコラス・ブレイク『メリー・ウィドウの航海』

 探偵小説を語るうえで「黄金期」といえば、一般に1920-30年代を指します。アメリカではエラリー・クイーンヴァン・ダインディクスン・カーなど、イギリスではドロシー・L・セイヤーズクロフツ、そしてアガサ・クリスティーなど、そうそうたる面々がデビュー・活躍した時期です。

 本書『メリー・ウィドウの航海』の作者ニコラス・ブレイクもこの「黄金期」に活動した探偵作家です。ただし本業は詩人のセシル・デイ・ルイス。本来詩人として有名であるべきですが、日本人には英詩はわかりづらく、結果として探偵作家として知られるという事態が起きています。

 また探偵作家としてのデビュー作のタイトルは『野獣死すべし』。つまり大藪春彦の処女作と同名であり、そのせいもあって余計に探偵作家としての知名度が高いのだと思います。

 前置きはさておき、本書を読んでいて感じるのは「黄金期の本格推理小説らしい気高さ」でしょうか。「舞台はギリシアに向かう豪華客船。紳士と淑女が集う洋上でむごたらしい連続殺人事件が発生する。その真相を解き明かすべく主人公は優雅に調査を進めるのだが、その過程で浮かび上がってきたのは紳士淑女たちを取り巻く複雑な人間関係だった……!」おおざっぱなあらすじをなぞっているだけでわくわくしてきます。

 物語全体の設定というか雰囲気づくりは超1流。また物語の展開も、やはり「黄金期」らしいどんでん返しもあってすばらしい。しいて文句をつけるなら、現代の複雑なエンタメになれた読者からするとやや淡泊だといこと。くわえて事件の中心的な動機を形成するとある設定にやや無理があるというぐらい。ただしそれは作品全体の評価を損なうほどのものではないということは強調しておきます。

 本作はいわゆるクローズドサークルものであり、その点からも優れていると思います。クローズドサークルには「警察の捜査を介入させない」あるいは「外部犯の存在を否定する」など、物語上のさまざまな効果がある一面、設定に無理が出たり、必然性に疑問符が付いたりするなど、デメリットも多くあります。しかし本作の場合、そうしたデメリットを乗り越えつつ、メリットを十分に享受しているように感じました。またクローズドサークルであることがある種の文学味を作り出しており、単に「推理小説のフェアゲーム性を担保する」以上の意味合いを持たせているところに、本作の価値があるように思います。

 古い推理小説の中には現代的な視点からいって、全く読むにたえないものもありますが、本作は十分読むに値すると思います。惜しむべくは絶版ということですが。




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