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シティポップと焼け野原(その3)【大貫妙子の父親の本『特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た』】

大貫妙子の父親は、元特攻隊員

 当ブログでは、《シティポップと「焼け野原」は意外と近い》ということを、たびたび力説してきました。

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 今日紹介するのは、敗戦とシティポップの「近さ」を最も感じられる本。それは、大貫妙子のお父さん・大貫健一郎氏の『特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た』です。
大貫妙子『都会』(1977)

『特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た』(2009)大貫健一

特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た──

新橋の闇市で、警官にタックル

 『特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た』で特に印象的だったのは、敗戦直後の回想です。

特攻隊員だった大貫妙子のお父さんは、復員後、なんと新橋の闇市で「関東松田組」に雇われ、警官にタックルしていたのだとか。まるで『仁義なき戦い』の世界…
しかし、特攻隊時代の残酷な体験から順に読んでいくと、警官へのタックルが、《簡単なお仕事》に見えてくるから不思議です。(※悲惨な回想が多い本なので、体調が良い時に読むことをおすすめします)

▽「新橋の闇市」を検索していたら、港区のサイトにズバリ「関東松田組」の看板がありました。この雑踏の中に、大貫妙子のお父さんもいたのですね。(『新橋駅西口の闇市の看板」引用元:デジタル版 港区のあゆみ

出典:デジタル版 港区のあゆみ

▽新橋の闇市をを引きで見たところ。ここに大貫パパが…。1946年(昭和21年) 引用元:昭和館デジタルアーカイブ

 ところで、なぜ大貫妙子のお父さんが、新橋でワイルドな仕事(警官にタックル)に従事していたのか、不思議に思われるかもしれません。戦争が終わったのだから、とりあえず故郷に帰るなりして、少しはユックリしてほしいじゃないですか。

しかし、そうはいかない事情がありました。大貫パパは日本生まれで、日本統治下の台湾育ち。このような方たちは、敗戦と同時に「帰る先」が消えたのです。つまり、大日本帝国終了。

樺太、旧満州、朝鮮、台湾に家族のある者には帰る先がありません。私もそのひとりで、家族の消息などの情報もなく途方に暮れていました。(『特攻隊振武寮──証言:帰還兵は地獄を見た』)

その結果「ビルの軒先や駅の構内で夜露をしのぐ」はめに。生きのびるためなら、どんな仕事もやむをえない…みたいな状況になったのだとか。(外地で育った青年といえば、哲学者・木田 元は満洲育ち。『闇屋になりそこねた哲学者』には、焼け跡でテキ屋の手先になっていた経験が綴られています)

高度経済成長を担う元・特攻隊員

 その後、大貫パパは建設関係の会社をおこし、精力的に働きました。そう、シティポップの舞台となる「シティ」を作っていくわけです。

 昭和30年、トヨタをやめて、弟とともに都内で建設機械を取り扱う会社を興しました。仕事はすこぶるつきの順調で「高度経済成長の一端を担う仕事をやろう」と、昭和36年には土木建築も手がけることになりました。

社員は18名と少ないながらも、下請け会社を使った箱根のターンパイク、代々木のオリンピック道路、新幹線の路肩建設工事など、事業は高度経済成長の波に乗って順調に拡張していったのです。

 自分が特攻隊員であったことや、振武寮での屈辱的な生活のことは、記憶の奥にしまい込んでいましたし、思い出す余裕もなく時が過ぎていきました。

 シティポップの根幹をなす「シティ」の基礎は、焼け野原からわずか一世代で築かれた……そんな背景がうががえる文章です。
ニューヨークのように、“昔から摩天楼があって…”というわけにはいかないのだなあ、やはり。
 しかし、私はここまで読んでもなお、【焼け野原からのスピード復興】と【シティポップ】が連続しているとは感じられません。どうしても時間の感覚がバグってしまうのです。

【参考】昭和22年(1947)、新橋の「第一ホテル」で整地ローラーをひく男たち*1戦勝国のツヤツヤした車と、敗戦国民の対比が哀しい。ローラーの彼らに「30年後、シティポップの時代がきますよ。今は信じられないだろうけれど」と語りかけたい。(引用元:メリーランド大学図書館デジタルコレクション


 以上、大貫妙子の父親の本『特攻隊振武寮』を紹介しました。今後、シティポップ(や、ジンジャー・ルート)を聴く際の参考になればと思います。

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*1:元からカラー写真。明るさのみ調整しています




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