
1965年(昭和40)の『ミセス』で、不思議な特集を見かけました。ゴージャスな美女たちが、微妙な横座りしているのです。
タイトルは「すわるのが好きなミセス」。スカートの裾が広めの服を紹介しています。
若いころはすわるのが苦手でしたが、近頃は腰かけるよりすわったほうが楽だし、くつろげるのでどこにもすわりこんでしまうようになりました。そのしぐさ女らしくて、かわいいとかでハズもわたくしのすわり好きをいやがらないのよいことに、家庭着は全部すわってらくな形にしてしまいました。
…ちょっと何をいっているのかわからない文です。ひらがなが多すぎるし、「すわる」の定義がナゾ。「若いころはすわるのが苦手でしたが、近頃は腰かけるよりすわったほうが楽」とは一体?
つまり椅子に「腰かける」より、床(?)に「すわる」方が楽ということでしょうか。今の感覚だと、[年齢とともにヒザが痛くなって、イスに腰かけた方が楽]ということになりそうですが。
あと、「ハズ(夫のこと?)も、わたくしのすわり好きをいやがらない」という言いまわしも変な感じです。

そのほか、このような文章も。
日当たりのよいテラスでこんな格好していると年寄りみたいだとひやかされますが、夕方までに片見頃を編むつもりなので、腰をすえてしまいました。腰まわりも楽なように、プリーツはウェストから縫いはなします。
「年寄りみたいだとひやかされます」…この横座りは若い子がするものではないという認識なのですね。
しかし、なぜ椅子の上に中途半端にすわる?若くない人がこんな風にすわったら、かえって腰痛になりそうです!
このすわり方は、何らかの折衷案なのでしょうか。
本当は座布団を使ってシッカリ正座したいところを、それじゃあんまり「年寄りみたい」なので、椅子の上にチョコンとすわるポーズが採用されたとか?あくまでも雑誌用に盛った写真なので、現実はどうだったのかわからないけれど。
1965年の『ミセス』の読者を仮に40歳とすると、彼女たちは敗戦時に20歳。戦中〜戦後のバタバタの中、読者層がどういう生活を送ってきたのか気になります。
▽左の写真、ソファからずり落ちそう!(モデルは ファッションデザイナーの稲葉賀恵)

『ミセス』読者の親世代?
今回の『ミセス』で思い出したのがこちらの写真です。「昭和七年から九年撮影。百貨店の食堂で」。イスの上で正座する人たち。西暦だと1932〜1934年なので、『ミセス』記事の30年前。ミセス読者の母親世代といえそう。親から娘へ、すわり方がなんとなく受け継がれているのでしょうか。

▽また、これは戦時中(昭和18年・1943)の靖国神社「九段の母」。戦死者の遺族が固そうな場所にギッシリ正座しています。トイレに行きたい人はどうすれば…?などと心配になりますが、もしかすると、逆に椅子に腰かけるほうがキツい世代なのかもしれません。

▽これは1976年の『暮しの手帖』から、明治村を見物しているうちに疲れてしまった男性。きちんとクツを脱いでいます。彼らだって若い頃は、モダン都市で一生懸命、洋風に暮らしていたのかもしれませんね。

以上、謎の多い1965年の『ミセス』記事でした。
戦後はライフスタイルが大きく変わりましたが、「すわる」方法を含めて、いきなり西洋風にはなれませんよね。きっと映画やドラマには描かれることのない、さまざまな折衷案があったことでしょう。今後、何か折衷案を見つけたら取り上げたいと思います。乞うご期待。