
あの…気づいていらっしゃいますか。
朝の空気の中に、ほんの少しだけ
薄桃色の光 が混ざりはじめていることに。
まだ吐く息は 白いまま なのに、
胸の奥ではそっと、
小さな あたたかさ が芽を出しているように思います。
きっとそれは、
春があなたに近づいてきている合図なんだと思います。
道ばたに落ちた 花の絨毯 は、
あなたの歩く速さに合わせて
静かに季節を進めてくれていますし、
遠くの 霞む街並み も、
あなたの気持ちに寄り添うように
輪郭をやわらかくしているように見えます。
風がふっと触れるたび、
コートの裾が 絹糸のように揺れて、
その揺れが、
冬と春のあいだにある静けさを
そっとほどいていくんです。
あの…
あなたは、どんな春を迎えたいと思っているのでしょう。
どんな光に包まれたいのでしょう。
紅白の梅がほどく 花びらの層 は、
あなたの未来に落ちる
最初のやさしい影なのかもしれません。
春は、
音もなく、
でも確かに、
あなたのすぐそばまで来ています。
どうかその気配を、
あなたの心の中に
そっと置いてあげてください。
あなたの明日を照らす
小さな 花の軌跡 が、
もう静かに芽吹きはじめていますから。