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恋まち人 祇王

 夜明け前の静寂に、祇王十二単衣をまと 

い、薄明かりの中で佇んでいた。

その姿は、まるで夜露に濡れる蓮の花弁が、

朝日を待つかのように儚く美しい。

 

 彼女の瞳には、まだ来ぬ恋人を想う切なさ

浮かび、その心情は、冷たい霜が春の訪れ

待つ大地のように凍てついている。

 

 竹林から漏れる微かな風音は、彼女の胸中

掻き乱すように響き、遠くで鳥たちが目覚

る声が、希望と絶望の狭間を行き交う彼女

心を映し出す。

 

 その瞬間、祇王の吐息は白く空に溶け、ま

で彼女の想いが風に乗って恋人へと届こう

しているかのようだった。

 

 十二単衣の裾がそっと揺れるたび、それは

るで秋風に舞う紅葉が地に落ちる瞬間を描

ようであり、その一つ一つが彼女の涙とな

って地面に染み込んでいくようにも見えた。

 

平家物語 祇王

 




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