真夏の街角に、小さなアイス屋さんがありました。そこでは「絶対に溶けないアイスクリーム」が売られていました。どんなに直射日光にさらされても、どんなに放置されても、形を崩さずに凛と立っているアイス。けれど、不思議なことに――口に入れた瞬間だけ、ふつうのアイスよりも早く溶けて、ひんやりと喉を駆け抜けてしまうのです。
お客さんたちは驚きました。
「外では溶けないのに、口の中で一瞬で消えるなんて!」
ある人は言いました。「これは記憶みたいだ。思い出そうとするとすぐ消えるけど、心の奥では形を保っている。」
またある人は笑って言いました。「失恋したってことだね。外からは平気そうでも、胸に入った瞬間にじわっと溶けちゃうんだよ。」
店主はにっこり微笑みました。
「このアイスはね、“願い”でできているんだよ。だから、太陽には負けないけど、人の体温にはかなわないのさ。」
子どもたちは走り回りながら舌に消えていく味を楽しみ、大人たちはそれぞれの人生に照らし合わせて考え込む。
結局、このアイスクリームは「味」よりも「溶け方」で評判を呼び、夏の風物詩となりました。
――暑くても溶けない。でも、食べればすぐに溶けてしまう。
そんな矛盾を抱えたアイスは、どこか人間そのものの物語でもありました