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人生が去来

東京サンシャインボーイズ復活公演「蒙古が襲来」を見てきました。

 

東京サンシャインボーイズとは脚本家・映画監督の三谷幸喜がかつて主宰していた劇団であり、30年前に「充電」期間に突入。平たく言えば「充電」という名目でもって活動を終えた。しかし三谷の茶目っ気で最後の公演のパンフレットに「30年後の復活公演」を予告していた。そして今年がその充電を終える30年後だったのだ。本来は「リア玉」という作品で復活予定だったはずなのだが、この度「蒙古が襲来」という新作を引っ提げ、なんと全国ツアーである。

 

ここでも度々書いてきたが、自分にとっておそらく生涯取って変わることのないオールタイムベストのドラマが「王様のレストラン」である。もちろん脚本は三谷幸喜。当時スケベなことばかり考えていた中学生だった自分は、東京サンシャインボーイズ三谷幸喜なんて名前も全く知らない。ただ「なるほどザワールド」春の祭典スペシャル(当時放送していた「なるほどザワールド」をメインにした春改編の番宣番組)を見て「なんかこういうドラマがあるんだな、面白そうだな」と思って、本当に何の気なしに見たのがきっかけである。当時も(そして今も)いやらしいことばかり考えていた自分は、ドラマを見るなんて習慣もなかったのだ。

 

三谷幸喜という名前をしっかり意識するようになったのは、その後のこと。「古畑任三郎三谷幸喜が書いていたのか!」と知って驚いたのだ。当時「金田一少年の事件簿」が流行っており、自分もかなりの勢いでハマっていたので、「警部補・古畑任三郎」をちょっとしたミステリとしてとらえていて、こちらも何の気なしに見ていたのである。まさか「王様のレストラン」と同じ人が書いていたとは露も知らず、だ。第二シーズンが始まるときに「ああ、これは王様のレストランと同じ人が書いている作品なのだな」と、そこで初めて意識をするようになる。これまた今はなき雑誌「月刊カドカワ」で三谷幸喜の特集記事を読んで、「ああ、三谷幸喜ってこういう人でこういう作品を手掛けていたのね」と知るようになる。

 

それからは「竜馬におまかせ!」「総理と呼ばないで」「今夜、宇宙の片隅で」「合言葉は勇気」「HR」などの作品を「三谷幸喜が書いている作品」と意識して見るようになる。当時は「三谷幸喜の面白さを知っている同世代なんて自分くらいなもんだ」と完全に思っていた。絶対にそんなことはないのに、である。

 

そして三谷幸喜が最初に手掛けた大河ドラマ新選組!」を本当に食い入るように見た。堺雅人演じる山南敬助切腹するシーンで号泣した。「真田丸」も「鎌倉殿の13人」も本当に面白い大河ドラマではあったが、最後まで前のめりになって見た大河は「新選組!」であると自信をもって言える。

 

自分はこの30年、食い入るようにテレビを眺め、そしてそのほとんどを忘れてきた。主戦場はバラエティではあるものの、ドラマも毛嫌いすることなく見てきた。そのドラマのメインの柱として存在したのは紛れもなく三谷幸喜であり、三谷がいなければおそらくここまでちゃんとドラマを見るようなことはなかったのではないか、とすら思う。

 

だからこそ三谷幸喜が主宰していた劇団「東京サンシャインボーイズ」の舞台を生で見ることが出来るならばそりゃあ見たいけども、なにせもう解散(充電)している。見ることは叶わないけど、それは自分の生まれた時代が少し遅かったせいだし、もしもう少し早かったとしても、北海道在住の自分に見るチャンスなんてなかったろうなと思ってはいたのだ。

 

それが復活。札幌にも来る。見ないなんて選択肢はあるのか。

 

復活公演が発表されたのが昨年秋。その時は「絶対に見るんだ!見る!見ない選択肢はない!」と思っていた。しかし公演の時期は仕事の繁忙期。休みがちゃんと取れるかどうかの保障もない。そんなこと言ってたら何もできやしない、というのは今回の舞台の核にもなっている話ではあるが、もちろんそんなことは知らない自分。仕事にかまけて気づいた頃には、もうチケットは売り切れていたのである。アホすぎる。

 

そして仕事の予定が確定した2月。どうも上手く時間を調整すれば見られるっぽい。というわけでここからチケット入手を試みるも、どこも売り切れ。ああ困った。しかし粘り強く待ってみるものだ。忘れたころにアナウンスされる追加販売。運よく入手できた。というわけで、1か月も前から今日という日を本当に待ちわびて仕事の繁忙期を耐え抜き、今日。遂に憧れの舞台(を見る会場)へ。

 

平日昼間ということもあり、舞台を見に来ているお客さんは自分よりも年上の方が圧倒的に多い。今回の舞台はU35チケット(チケット代半額)なるものも用意されていたが、ものの見事にみんなご高齢。そりゃそうだ。東京サンシャインボーイズの全盛期を知る方々は自分より少し年上の方々だ。これは当然の帰結である。そんな自分より少し年上の方々が、みんなちょっとだけワクワクしているのが雰囲気から伝わる。いいよなあこういう雰囲気、とかみしめた。

 

時間に余裕をもって入場し、パンフレットを早速購入、時間まで席で読みふける。アナウンスがあり、開演、そして終演。まだ舞台は続いているので、中身に関することは書かないのがマナー。梶原善相島一之小林隆といった現在ドラマでも活躍する主要メンバーが出てくるたびにニヤニヤする自分、そして何より驚いたのが西村まさ彦の声のデカさ。舞台だからみんな声はちゃんと通るんだけど、その中でも一際でかいのが西村。そして「デカい声は面白い」ということをまざまざと見せつけられた気がする。

 

カーテンコールを見ていてオジサンは思わず涙ぐんでしまった。それはもうひとえに「生きていればこういうのを見れる瞬間が来るんだなあ」と、自分が30年前に見たドラマで受けた衝撃を、30年後の自分がちゃんと回収できたというえも言われぬ感情。感動とも違う何か。月並みな言葉で言えば「生きててよかったなあ」というやつか。

 

また、裏の懸念事項として「2時間尿意を我慢できるか問題」という、オッサンならではの問題。若い頃は映画でもライブでもトイレの心配なんかしたことはなかったのだけど、年食ってから尿意がまあ頻繁に訪れるようになり、久々の観劇の最中尿意で中座なんてことになりやしないか。そこは本当に心配だった。結論としては「特に問題なし」であったことは書き添えておきたい。

 

しかしまあ、30年越しの願望が実現するなんてこと、この先絶対とは言わないがほとんどないんだろうな、と思う。そんな経験が出来ただけでも自分は幸せ者だと思うし、またテレビを漠然と眺めてきだけの他人からみれば空虚な人生ではあるんだけども、それはそれでよかったのかなあとも思う。この先の人生こんなに楽しいことはないのかもしれないけど、それはそれでよいか。

 

ま、明後日の日曜もまた見るんですけどね。チケットは2枚取れたのです。

 

 




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