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殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス / 五条紀夫

 

「第一話 メロスは推理した」「第二話 メロスは約束した」「第三話 メロスは奮闘した」「第四話 メロスは入水した」「第五話 メロスは激怒した」の第五話からなる小説。

第一話において、メロスは自分がつかまるべきところを、親友のセリヌンティウスを差し出すことで3日間の猶予を得た。たった一人の身内である妹の挙式をとり行ってから処刑されようと言うのだ。

しかし村に帰り、方々へ調整を行い、いよいよ明日結婚式という段になり、なんと新郎の父ギフスがメロスとその妹であるイモートアの羊小屋で殺されてしまうという事件が起こる。事件当時、この羊小屋は完全な密室だった。

本来であれば早急に挙式を執り行い、シクラスへ戻らねばならない。メロスは、事件を解決し挙式を断行すべく犯人の捜査を行う……

 

<ネタバレあり>

文章がうまい。過剰に次ぐ過剰で、それがうるさくなくて心地よい。文章はとにかくめちゃくちゃよい。

メロスが急げば急ぐほど解決すべき殺人事件が起こり、解決したと思いきや二転三転し、一向に進むことができないもどかしさとおかしさがたまらない。登場人物の名前もいちいち適当なのか凝ってるのかいや適当なんだ、適当さがたまらない。読者の読みやすさと面白さのちょうど中間みたいな感じで、すごい技巧的に感じた。

ミステリとしても普通に出来がいいと思う。ミステリよく知らんけど。

「第四話 メロスは入水する」はめちゃくちゃメタで面白かった。オサムス(太宰治)、カズオウス(檀一雄)、イブセマス(井伏鱒二)などが出てきて、めっちゃメタ的な話の展開があって、すっごい楽しい面白い話だった。オサムスのセリフで「私は、恥の多い日々を送ってきました」とあったり、カズオウスが「オサムスを題材とした小説を書く」と言ったり。

「第五話 メロスは激怒した」は、ハウダニットミステリーかつ「読者への挑戦状」となっている。わたしはミステリはよくわからないので、頭から普通に読んで、ほーへーおーあーなるほどーと読んだ。史実に基づいた話もされており、そうだったんだなあとなんかここだけちょっと深さはあったかもしれない。

とはいえ、この小説って本当に文章が面白くて上手くてメタ的で最高だったんだけど、別に深い洞察がいるとか超深淵な問いがそこにあるとかそういうことではなく、本当に単純に太宰治の「走れメロス」を「俺、これもっと楽しい小説にできるよ」で書いた小説なんだと思うんだけど、一個だけすごいいいセリフがあったのでご紹介したい。

 

「自ら死ぬつもりだったのだな! 死ぬまで、死ぬな!」

 

太宰にそう言ってくれるメロスっていなかったのかなーとか少し思っちゃった。

 

走れメロス」のパロディとしては森見登美彦の「新釈走れメロス」などがあるがあればパロディというかオマージュ作で、舞台が京都、登場人物は森見登美彦お得意の腐れ大学生、という作品であるのに対し、今作は舞台設定も登場人物も走れメロスのまんまだから、まったく別のベクトルで両方最高に面白いって感じ。

頭空っぽにしたい読書にどうぞ(ミステリだけど)。

 

 

 

 




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