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【読書感想】両手にトカレフ(ブレイディみかこ)

 

中学生の少女ミアとその弟チャーリーは依存症のシングルマザーと暮らしている。生活費は生活保護費からまかなっており、しかしそのお金も母親が使ってしまうと、ミアは万引きをするなどして自分たちの食事を賄っていた。

当然スマホなども持っていない。英語の発音だけで所属する階級が分かってしまうような閉塞感の中、ミアは自分と弟のことを必死で守ろうとしていて……

そんな折図書館で「金子文子」という日本人アナキストの自伝と出会う。ふみこの少女時代の描写を自分と重ねて夢中になって読むミアだったが……

 

<ネタバレあり>

いやーこれすごい。ブレイディみかこが自著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」にノンフィクションの形で書けなかった少女を描いたと帯に書いてある。それは、あまりの過酷さに目を背ける人がいることや、性的な犯罪が出てくることなどからのプライバシーの配慮という意味もあっただろう。

ミアが必死でチャーリーとの生活を守ろうとする姿がいじらしい。ソーシャルワーカーによって母親が入院させられ、バラバラに預けられてしまうのではないかという恐怖と闘い、まだ14歳だというのに必死で弟を守る。さまざまなことを諦めているし、憤ってもいる。もう少し小さいとき、よく面倒を見てくれていた友達の母ゾーイに「わたしと弟をこどもにしてください」と頼むがもちろんそれは断られてしまう。それは当然のことなのだけれど、ミアにとっては人生で一番勇気を使ったお願いを断られたということで、絶望なんてものじゃなかったと思う。

いわゆるミドルクラスの少年ウィルが、ミアの言葉のリアルさ(リアルという言葉には若干の軽蔑が入るらしい)に惚れ込み一緒にラップをやろうと誘う。ミアにとってはあり得ない申し出で、家のことがある中で真剣にその申し出を考えることができない。

そんななか!

依存症の治療に通い出した母親が酒を浴び大量の薬を飲み尿を垂れ流して倒れている。ミアは「このままここにいたらチャーリーと別々に保護されてしまう」と咄嗟に判断し、チャーリーを連れて逃げる。

このときのミアの気持ちを思ったら本当に胸が裂ける思いだった。ふみこの幼少期を読んでしまっているから、その恐怖もひとしおだったのだと思う。

こどもたちは、こどもたちであることから、さまざまな環境や待遇や価値を大人たちからおしつけられる。それは劣悪なものかもしれないし、過保護なものかもしれない。でもとにかく、こどもに決定権はない。怒って当然だ。

それらの言葉は、魂の言葉になる。

 

しかしあれだね。本当に考えさせられる。
わたしは昔生活保護ケースワーカーをしていたけれど、貧困世帯の子どもたちが必ずしもこのような目にあっているわけではない。シングルの家庭でも、働いていて足りない分だけ生活保護費でまかなっている家庭もたくさんあるし、そうした家の子は母親が働いているのをみているのもあるせいか、しっかりと人生をあるいていけるようになる子が結構多かった印象。それに対して、依存症や病気のシングルのご家庭のお子さんはやっぱり難しい。大人に対する信頼感が絶望的に低いのに助けてほしい気持ちは持っていて自分の中でのアンビバレントさについていけなかったり問題行動を起こしたり。親をかばったり、虐待を隠したり。

むずかしいですねで片付くほど簡単じゃない(桜井和寿)。

わたしは何もしてあげられなかったな。それに、多分何も求めてなかったと思うし。

この本みたいなことって、日本でも普通に起こっていることだってことはみんな知っておいていいと思う。もちろん、日本では使ってる日本語の発音で階級がバレるというようなことはない。イギリスは差別社会だしね。それに比べれば日本はずっとマシと思える。でもマシじゃない部分がたくさんある。

言いたいのは、だから自分の幸せに罪悪感を持てとかそういうことではない。自分の恵まれた境遇を呪えとか、そういうことでもない。

ただ、自分だってそうだったかもしれないのだという視点を持ってもいいんじゃないかということ。逆だったかもしれない、もっとひどいことになっていたのかもしれない。

感謝?

でもその感謝も、欺瞞だということ。だって何も解決しないから。辛い人は辛いままだし、泣いてる人は泣き止むこともないし。おなかはふくれないし、虐待は終わらない。

心の弱さ。やるせない。心の弱い人が全員問題行動を起こすわけじゃない。けれど、心に傷を負ったミアが将来子供を産んだとき、同じようにならない保障がどこかにあるだろうか?

無いんだよ。それはどこにも無い。

つらすぎんだろ。目を背けたい現実に向き合わされる、そして解決策はなく、ただただやるせない、つらい、かなしい、そんな小説でしたとさ。

 

 




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