以下の内容はhttps://mywaymylove00.hatenablog.com/entry/2025/09/19/215509より取得しました。


サガフロンティア2リマスター 追加要素に思いを馳せる。その2(終)


www.youtube.com

カナリヤです。サガフロ2リマスター 追加要素に思いを馳せる。その2(終)は追加シナリオについてです。前回はこちら。

mywaymylove00.hatenablog.com

思った以上に長くなってしまいました。ネタバレ全開ですし、そもそも前提知識が必須のためサガフロ2未プレイの方はスルー推奨です。

 

1251年 ケルヴィンとマリーの婚礼

ファン待望の追加シナリオ。もともとギュスターヴの母ソフィーに思慕の念を抱いていたケルヴィンはギュスターヴの妹で既にオート候カンタールに嫁いでいたマリーのソフィーに似た顔立ちに一目惚れしてしまう。原作ではケルヴィンとマリーの邂逅はシナリオ「兄弟再会」のみだが後に二人は結婚しチャールズとフィリップ3世を授かることに。

この設定は僕自身アルティマニアを購入した際に気づかされる始末。リマスター購入の半分くらいはこのシナリオを読みたかったから、というのは少々大袈裟だけどあながち嘘でもない。

ギュスターヴとノール候の弟フィリップはシナリオ「兄弟再会」で和解。マリーはその様子を夫カンタールへ嬉々として報告するものの、フィニーとノールの関係がこじれることを期待していたカンタールは激怒。

もともとオートの領土をフィニーへと半分譲ることを条件に年上のマリーを娶りフィニーの庇護下に入ったという屈辱を受けた経緯からフィニー王家への相当の恨みがあったカンタール。彼はその後ほとんど夫婦として交流のなかったマリーの寝室に突然現れ刃を向けながらフィニー王家への恨みをぶちまける。夫からの寵愛はなくともそれでも良き妻であろうと努めたマリーはここで完全に心が折れてしまう。

傷心のマリーはフィニーへと戻り、宰相ムートンの活躍もありオートへの領土譲渡を条件にカンタールと正式に離縁。彼女を支えたケルヴィンはマリーへ自身の思いを伝え結ばれることになる。

王様なにやってるの

ヤーデ伯として紳士足る行動を見せたケルヴィンの誠実さと「兄弟再会」で見せた伏線回収、そして設定上黒幕扱いを受けることが多いもののゲーム上ではそこまで登場頻度のないカンタールのフィニー王家への確執に焦点を当てたシナリオであるとともに、親友と妹の恋路を影で楽しむギュス様と後の諜報員っぷりを遺憾無く発揮するフリンの微笑ましいやり取りが楽しめる、至高のシナリオ。こんな時間がずーっと続けばいいよね。

ケルヴィンご乱心

 

 

1260年 ラベールの願い

シナリオ「ウィル対エッグ」後にディガーを引退しヴィジランツだった妻コーデリアと共にワイドへと移住したウィルの元にかつてパーティーを組んでいたタイラーが現れ、ヴァイスランドでのとある邂逅を語り出す。

ラベール再登場と、後のエーデルリッターの一人、水の将魔ボルスのまさかのプレイアブル化。当時13才ながら才能溢れるボルス少年は氷のメガリスを彷徨うラベールの兄ウィリアムことメガリスビーストを討伐することで名声を得ようとする向こう見ずさを披露。ウィリアムの様子を見に偶然居合わせたタイラーとラベールの助力もありメガリスビーストを海に沈めることに成功するものの、その危うさから苦言を呈するタイラーを一顧だにせずその場を後にするボルス少年。

ボルス「ギュスターヴもそうやって有名になったんだろ?みんなにボルス様って呼ばせてやる」

そんなボルス少年のロールは「自信家」という自身の攻撃効果をアップさせる代わりに味方の攻撃効果をダウンさせるという彼の生き様を体現したかのようなもの。彼が後に北方深追い野郎としてサウスマウンドトップの戦いにおける敗戦の要因となると思うといっそう香ばしい。彼についてはまた別の項にでも。

顛末を聞いて少年に危うさを覚えたウィルだったが僕らのナルセスさんがオチに使われた挙句結果的にウィルの株が上がるのが大変面白い。

 

 

1261年 ラウプホルツ制圧作戦

ケルヴィン「やばい、始まったぞ」

ハン・ノヴァから南方に位置するラウプホルツへの遠征を目論む我等がギュス様と無邪気に主君の望みを叶えようと進言するヴァンアーブル少年、なんだかんだ流される将軍ネーベルスタンと最後の良心だったはずの宰相ムートン、そして振り回されるケルヴィンの苦悩が垣間見えるコメディタッチなシナリオ。

戦場で暴れ回る口実をいつでも探すギュス様と鋼鉄兵モブで構成させるパーティーが新鮮。あと案外ノリの良いヨハンにびっくりと言うか困惑。ただやってることはヴォルカノイドの出てこない「グラン・ヴァレを越えて」なのでそこは不満。ギュス様とヴァン、ヨハンの貴重な戦闘機会なんだからもっと長尺の話でもよかったのにな。

 

 

1277年 ヤーデ伯の息子たち

ギュスターヴの死後、勢力争いを続けていたケルヴィンとカンタール。元々誠実な性格だったケルヴィンは、権謀術数に長けたカンタールと対峙した際その性格が仇となり裏工作にはまり多くの同盟者を手放した結果、一時は盟友ギュスターヴが築いた都市ハン・ノヴァを放棄することに。

アルティマニアではハン・ノヴァを巡ってカンタールと幾度となく奪い合いを繰り広げたとされるが、その最中カンタールは病没。彼の死後オートは後継者を確立できなかったためケルヴィンはその絶好の機会を逃さず勢力を奪いようやく覇権を握ることとなっているが、本シナリオではケルヴィンの誠実さが政治における武器として機能し、同盟国の信頼を勝ち取ったことでカンタール存命中においても彼の勢力をロードレスランドから放逐する大逆転勝利を収めたことが示唆されている。

しかし乱世の奸雄と謳われたカンタールはロードレスランドからの敗走の最中、功を焦るチャールズの心情を見抜き自身を深追いさせ味方から追撃し一矢報おうと画策。弟フィリップ3世の援軍によって事なきを得たものの自身が罠にかけられたことなど忘れたかのように弟を叱責するチャールズの隠しきれない小物臭。増長した慢心さを隠そうともせず、父や弟の持つ思慮深さを単なる甘さと捉える短慮な性格が後の彼の悲劇に繋がっていく。仕方ないこととはいえこれに限らず追加要素では尽くチャールズの良くない部分がフォーカスされている気がする。

カンタールの娘ヌヴィエムへの「犬のにおい」発言などに代表されるように元々彼の好感度は高くないものの長子である自分を差し置いて弟フィリップ3世にファイアブランドを継承させフィニー王家の継承権を与えたこと(フィリップ2世謀殺はチャールズ誕生後であったことからギュスターヴの願いで次男がフィリップと名付けられファイアブランドを継承させたというやむにやまれぬ事情はあったが)など境遇が恵まれていないことも事実。何かひとつくらい彼を見直すイベントなりを挿入してほしかった気も。

またこの追加シナリオのコンバット戦ではチャールズ軍を指揮してカンタール軍の攻撃に6ターン耐えればフィリップの援軍が到着し勝利となる。そこまで難易度の高いものではないが勝利条件から見ても実質的に作中でも屈指の難易度を誇る「サウスマウンドトップの戦い」のチュートリアルと言える。これまでコンバット戦はバケットヒルの戦いというプレイアブルキャラが参戦する圧倒的に武力で優るケースのみ経験したプレイヤーに対して、本シナリオでははじめてごり押しでは勝てない場合敵に対して一度立ち止まらせどう戦略を立てていくべきかプレイヤーに思考を促す貴重な機会。ゲーム的にも物語的にも一層深みの増すシナリオ。

 

 

1278年 峠の追い剥ぎ

後のエーデルリッターの一人、獣の将魔トーワが登場するシナリオ。ザール峠で追い剥ぎをしていた盗賊団の討伐を依頼されたサイモンとパトリック。盗賊団のリーダーだったトーワはあっさりと自身の部下を見捨てて逃亡。その際に放出したアニマが尋常ではなかったことからパトリックは戦っても勝てたかどうか分からないと口にするほどの実力はあったはずだが、トーワはそのしたたかさ故に自身の生存を優先したのだ。

後に自身の配下となる優秀な素材を探していたエッグからの誘いを安易に受けたことを後悔する様は同時期に誘われていたロベルトと重なる。しかしエッグの依代とされていた偽ギュスターヴことデーニッツを一目見た瞬間にその危険性を察知し挨拶すら拒みその場を去ったロベルトとは違い、エッグという存在の恐ろしさを感知できず旗色が悪くなったらまた逃げればいいと楽観視してしまったことが彼の悲劇に繋がってしまう。

 

 

1292年 ミーティアの師とその師

目キラキラさせてそう。可愛い

資質的に貴重な体術要員ながら加入時期の遅さと初期HPの多さからエッグとの最終パーティーではなく各将魔とのデュエル要員になりがちなミーティア主人公の貴重なシナリオ。原作ではこれまでバックボーンが一切語られなかった彼女だったが、本シナリオでは孤児院を出てヴィジランツの真似事を始めてからヴァンアーブルの弟子となるまでのお話が描かれる。

高名な術士の系譜にもかかわらず弟子であるミーティアがゴリゴリの脳筋キャラという謎がファンの間では疑問符が付けられていたが、本シナリオにおいて偶然ミーティアを助けた縁と自身の師シルマールの執り成しもあり術の手ほどきをすることになったこと、またヴァンアーブルが親友フィリップ3世の死から立ち直るきっかけとなることを期待してのものであると語られた。というかシルマール先生どんだけ長生きなの。

お師匠様の先生98て

またリマスター版の追加要素として固定装備の「形見の石斧」を持たされているがこちらは威力40かつ耐久性無限という破格のスペックに加えなぜか本作唯一の一撃必殺無効の効果付き武器。そして次に控える追加シナリオでミーティアのオート強化が可能となったことで最終パーティーの有力候補に躍り出たことがゲーム的に非常に大きい。

なお先述の「ラウプホルツ遠征」でヴァン先生の出番は終了したと思い込んでいた僕は早々にヴァン先生の装備を剥ぎ取ってしまったことでミーティアを助けに来たヴァン先生が何もできずモンスターに一撃で戦闘不能にされるというお話を台なしにする失態を演出してしまった。なにしに出てきた。そしてそんなヴァン先生はさておいて「将軍の思い出」後に装備を剥ぎ取ってもなお活躍するシルマール大先生さすがっす。

シルマール先生がヴァンアーブルを弟子としたのも何かしら理由があったのだろうか。友人だったソフィーの死だろうか、と考えたものの年代が合わないし。ううむ。

 

 

1292年 ウィル、北大陸捜索行

消息を絶った息子リッチの安否を確認しに単身北大陸までやってきたウィル。リッチの説得によりワイドへ避難してきたディアナからの話でリッチがエッグに再び接触したことを知ったウィルだったが、エッグの危険性を誰よりも知るウィルはリッチがエッグに取り込まれる最悪の事態も想定していた。

老年期ウィルを強化できる貴重なシナリオであり、物語の重要なフレーバーとなるシナリオ。ウィルがこれまで見せたエッグへの執着を思えば老いたとはいえエッグの情報を聞けば自ら動くことは自明の理であり、それが最愛の息子を手に掛けることになるかもしれないという思いと重なることでより一層悲壮感が増す。

結局この捜索行ではリッチの発見には到らずワイドへと帰還することになるのだが、その際の彼の心境を吐露する場面はその複雑な思いを察するに余りある。

 

 

1293年 或る伝令兵の脱走

フィリップ3世の軍の伝令兵だった男は合流地点の変更を伝令しにやって来た。しかし何らかのミス(兄チャールズによる謀略の可能性も示唆)により本陣とは異なる場所に到着してしまったフィリップ3世は戦死。結果だけ見れば謀略に加担してしまった彼は処刑されることを恐れ戦場から脱走。敗残兵を処理する紅いサソリからの襲撃に自身も自覚していなかった強大なアニマを放出して追っ手を石化させる。その後自身の死を偽装することを思いつき味方の兵士の遺体から奪った認識票からモイと名乗るように。

その後は人さらいに身をやつしただただ敗走を重ねる日々。後にエッグに見出だされエーデルリッターの一人、石の将魔モイとなるも何かから逃れたいという意識は消えず、彼の責任ではないが「サウスマウンドトップの戦い」でもボルスの深追いという失態が原因とはいえここでも敗走することに。「最後のメガリス」においてエッグと同化すれば終わりのない恐怖から逃れられると語るモイはジニー一行と相対する。ゲーム的にはパーティー全員を石化させる「エインシェントカース」を繰り出す石の将魔が合流するかでエッグとの最終決戦の攻略難易度が天と地ほど変わるため、彼の悲痛な願いを阻むプレイヤーは非常に多いことだろう。

居場所を、名前を失い、何者でもなくなった彼はとうとう逃げることすら出来なくなったのだ。

 

 

1296年 大術師、アニマに還る

大術師として名を馳せたシルマールが己の死期を悟り樹海において天寿を全うしようとした瞬間、ひとりの少女と出会う。

出会って間もない彼らは友人と言って差し支えないほどお互いを理解するように気安い会話を重ねるも、邂逅はあっけなく終わりシルマールのアニマは自然へと還る。

どんな人でも最後は死んでしまう虚しさを口にしながら、彼女はその後鼻歌混じりに周囲のモンスターのアニマを手当たり次第に吸収し、ひとり自身が遊ぶための森を広げていき、果ては周囲の村や人すらも飲み込むことを示唆してシナリオは終わる。

彼女の狂気はその後エーデルリッターの一人、樹の将魔ミカとして開花する。エッグと出会う前からその幼さに見合わぬ強大なアニマを有し、自身の特異性を母親に打ち明けられるも理解されないどころか気味悪がられ、孤立し、ひとり誰もいない森で遊ぶことしか出来なかったことが語られる。

シルマールの最期を見届けた後ミカは彼の亡骸をモンスターから守るように樹木で覆った。彼女なりの手向けだったのかもしれない。無邪気にシルマールと語らっていた姿は普通の少女そのものだった。もしシルマールともっと早く出会っていたら、母親が彼女を受け入れられたら、彼女はここまで歪まず、孤独に森で遊ぶこともなかったのかもしれない。

 

 

1300年 ミーティアの冒険

ヴァンアーブルに師事して6年。20歳となり術士として着実に成長したミーティアはヴァンアーブルからとある試練を受けることに。

ひとり樹海を踏破したどり着いた先は、かつてヴァンアーブルの師シルマールが没した場所だった。弟子の道程を見守っていたヴァンアーブルは試練を乗り越えたミーティアに自身が仕えた鋼鉄王の事、シルマール先生の事、そして己に課された使命について語り始める。

エッグ戦に先んじてヴァン先生のヒドイところが露呈した追加シナリオ。一人旅を敢行した若き頃のネーベルスタンを諌めたシルマール先生だったら絶対そんなことさせなかったでしょ。一応見守ってたみたいだけど、相変わらず装備ないままだからまたワンパンだよきっと。

ゲーム的にはミーティア待望の強化の機会。オート戦闘を駆使してハンデを乗り越えろ。次にサガフロ2をやるときはジニーとグスタフ、プルミエール、ミーティアによる剣と体術による圧倒的火力でエッグを滅ぼすと心に決めている。

 

 

1300年 ロベルト、九死に一生

駆け出し時代のロベルトが描かれるシナリオ。とっくに掘り尽くされたハンの廃墟を漁るディガーのヴィジランツとしてうだつの上がらない生活をしていたロベルトはモンスターに襲われディガー共々命の危険に晒される。どうにかモンスターを退けるもこれをきっかけにパーティーが解散したことで成果の上がらない生活に見切りをつけて北大陸へ渡ることを決意するのだが、そこで金髪の怪しい男から声をかけられる。

てっきりロベルトがモンスターにやられそうになるところがシナリオ名の由来かと思いきや、北大陸に来る直前にとんでもない邂逅を果たしていたことが明らかになるシナリオ。

ウィル編の最終パーティータイクーン・ウィル本人とその孫ジニー、フィニー王家の血筋とヤーデ伯ケルヴィンの血筋を受け継ぐグスタフ、そのケルヴィンのライバルにしてその名を轟かせたカンタールの娘プルミエール、大術士シルマールの孫弟子ミーティアと名だたるメンバーが揃っているなかで単なる一般人でしかないロベルトは極めて異質な存在に映る。

けれどエッグに目をつけられるほどの才覚は元よりサルゴンやトーワ、ボルスらが見破れなかったエッグの危険性を一目見ただけでいち早く察知する能力は単なる一般人と思えない。いまいち地味なロベルトにスポットの当たるお話のフレーバーとして非常に良いシナリオ。

ナルセスさん、割に常識的だった

 

 

1301年 歌声は消え、剣士は旅立つ

ヤーデから出奔後冒険者として行動していたギュスターヴ15世ことグスタフはラウプホルツの酒場で歌手をしていたイシスと名乗る女性からグールの塔へ行くための護衛を依頼される。

楽家として塔のパイプオルガンの音色を聴いてみたいと語るイシスと護衛のグスタフは無事パイプオルガンまでたどり着く。グスタフが試しに弾いてみるも聴くに堪えない不協和音が鳴り響きグスタフは倒れこんでしまう。すかさずイシスが動かすとこの世のものとは思えない華麗な音楽が鳴り響きイシスは思わず聴き惚れる。だがそれは単なる心地よい音楽などではなくかつて隆盛を誇るも滅亡した文明種族によるメッセージだった。その意味を理解した、してしまったイシスはうつろなままグスタフを置き去りにどこかへと去って行った。

彼女は後にエーデルリッターの一人、音の将魔としてジニー達の前に姿を現すが彼女との一騎打ちでグスタフを選択すると専用セリフが用意されている。メッセージに囚われた彼女はエッグに魅入られるまでもなく人間を価値のない存在として見做すようになってしまっていた。彼女が街の酒場で音楽を楽しんでいた記憶とそこからの変容がやるせない気持ちを抱かせる。愛らしい容姿から禍々しい見た目の音の将魔の姿、そして作品世界に似つかわしくない音響機器と現代音楽の戦闘BGMが非常に特徴的。

 

 

1303年 高貴なる六騎士が揃う

ひとりの男が酒を飲みながらくだを巻いている。それはかつてメガリスビーストを討伐した少年ボルスの老いた姿だった。自身の才能を認めさせると豪語していた男は周囲から見放され何も成し遂げることが出来ないまま、こうして安酒を煽りやさぐれることしか出来ない惨めな人生を過ごしていた。

ギュスターヴに憧れ背中を追い続けたボルスがなぜこうもおちぶれてしまったのか。彼の言うようにボルスの力を認めなかった周囲が悪いのか。無鉄砲な性格は確かにかつてのギュスターヴを思わせる。けれどギュスターヴとの決定的な違いは、生来備わっていたアニマを活かせなかったボルスとは異なりギュスターヴは行動力以外なにひとつ持ち合わせてはいなかったことと、それをギュスターヴ自身が誰よりも深く理解していた点だ。

大国フィニー王家の長子として生まれるも術不能者の烙印を押され、母とともに国を追放されたギュスターヴは自身を人間のクズと宣い時に自暴自棄になり成長してもなお周囲に迷惑をかける悪ガキだった。

そんな彼が変わったのは19歳の頃、最愛の母ソフィーが流行り病によって亡くなる際に授けた教えがきっかけだった。

フリンには優しくしなさい

レスリーを大切にしなさい

ケルヴィンを信頼しなさい

何か起こったらトマス卿とシルマール先生に相談して、お二人の意見を尊重しなさい

自身の進む道の正しさを証明するにはなによりも周囲の助けが必要不可欠であり、それには自身が周囲を助けなければならない。自身に足りないものは何か。成し遂げるには何が必要か。ギュスターヴはソフィーの教え通り常に誰かに助言を求め、耳を傾けていた。

更に言えば術不能者のギュスターヴは術全盛だった時代にあって強度は絶大だが術効果を阻害する不遇の存在として廃れつつあった鉄鋼技術に自身の活路を見出だした。術を使えないからこそ金属のデメリットを享受できる自身ならば、メリットのみを最大限活用できる。10代の頃から研究を重ね、術不能者による鉄鋼兵団を組織するとともに晩年には自身の憧れた象徴さえも容易に上回る剣を生み出すことに成功したのだ。

ギュスターヴが13歳の時、彼のロールは敵味方のなかで最速で行動可能とする「鉄砲玉」という実に彼らしいものだが、28歳時のロールは「統率」という味方の素早さを上昇させるという彼らを付き従えるものに変化している。生来の気質はそのままに彼の成長をゲームに反映させていることが窺えるが、一方で落ちぶれてもなお周囲に責任を押し付けようとするボルスはきっと「自信家」のままだったことだろう。

こうしてシナリオを見返すとギュスターヴは「ありがとう」という言葉を多用している。それは彼を支えてくれた人であったり、彼を諌めてくれた人であったり、様々だ。単純な衒いのない、そして温かさを持つ言葉はだからこそ胸に響き、彼の本心からの言葉なのだと理解できる。そんな彼だからこそ、フリンは付き従い、レスリーは傍らに寄り添い、ケルヴィンは支え合った。そんな彼だからこそ、ネーベルスタンやムートンといった有能な家臣が彼に覇道を進ませたのだ。何よりも母の無償の愛に報いるために。

タイラーはかつて少年だったボルスに「人の話に耳を傾けろ」と忠告するもボルスは背を向け去って行った。彼の才能とそれを鼻にかけた態度を見かねて似たような言葉を投げかけたのはタイラーだけではなかったはずだ。ただそんな心からの言葉を素気なくあしらったあの瞬間に彼の運命は決まっていたのかもしれない。

 

そんな彼の前にひとりの男が現れる。名乗ることもせず、ボルスの事を褒めたたえ自身について来るよう促す男。なにもかもを失ったボルスは石切場跡のメガリスに連れていかれると複数の人間とともに振るいにかけられ、目覚めるとボルスひとりだけが生き残っていた。エーデルリッター、水の将魔ボルスの誕生である。

けれど気質はそのままに力だけを与えられた彼はサウスマウンドトップの戦いにおいてその圧倒的な力で北方軍を追い返すも、増長から禁止されていた追撃を強行したことで偽ギュスターヴの計画は破綻。デーウィド率いる西方軍を挟撃できず南方軍の援軍到着を許してしまい偽ギュスターヴ軍敗戦の決定的な戦犯となってしまう。

圧倒的な力を得てもなお望んだ未来を手に入れられなかったボルスは「最後のメガリス」において自らエッグとの同化を望むもののエッグを追ってきたジニー一行と戦い、そして敗れ去る。余程のことがない限りダンジョンの最初に相対するように配置されたことからも敗戦の責任を押し付けられエッグから切り捨てられた可能性も十分考えられる。だとしたら彼の一生は、たとえ自業自得なのだとしてもあまりにも虚しすぎる。

 

 

1305年 幼きプルミエールの記憶

養母ヌヴィエムの元から出奔し北大陸に流れ着いたプルミエールは周囲の助けもあってどうにか冒険者として活動できていた。そんな彼女はふと幼い頃に出会ったひとりの男との邂逅を思い出す。

血筋的にどこかで出会っていてもおかしくなかったプルミエールとグスタフとの出会いを描いたシナリオ。

自身を探しに来たグスタフのセリフに当時を回想していたプルミエールはあの時伝えられなかったセリフを返して、ふたりは冒険者へと戻っていく。飾らずともすべてが伝わるセリフ回しが抜群に素晴らしい。

ゲーム的にはラスボス&裏ボス戦で必須のLPブレイク無効持ちアイテム「くすんだ指輪」入手の重要イベント。比較的入手しやすいデッドストーンでも対処は可能だがあちらはアニマなし&防御効果ダウン持ち。それに比べて水のアニマ付与のくすんだ指輪がどれだけ有用だったことか。

騒いでるジニーとそれを笑顔で見守るロベルト、そして合流したプルミエールがジニーを叱るところまで想像できた

 

 

1305年 デーヴィドとギュスターヴ

偽ギュスターヴと対決するデーウィドを助けに単身戦場へと赴くグスタフ。しかし敵の包囲網が激しくせいぜい敵の補給物資を焼き払う後方支援程度に留まる。敵の敗走する様からデーウィドが勝利したことを知るも結局はデーウィドを助けることができなかったことを悔いると同時に自身がヤーデを出奔するきっかけとなった出来事を思い出す。

デーウィドの父である伯父チャールズがケルヴィンの死後ヤーデ伯を継ぐもロードレスランドの戦乱は納まらず各地で戦闘が続いていた。初陣だったグスタフことギュスターヴ15世は従軍中に人さらいから子供を救出する無茶にデーウィドを巻き込んでしまった結果、自身が秘密裏にファイアブランドを継承しフィニーの継承権を獲得していた事がデーウィドに知られてしまう。

デーウィドはグスタフをその名の通り大陸の覇者に相応しい特別な人間だと語り自分が彼を支えフィニー王家を継ぐことを勧めるが、グスタフ自身は亡くなった父フィリップ3世から生前デーウィドを支えるよう言伝されていた。しかし父の遺言を守れずデーウィドを危険に晒す、そんな不甲斐ない自分がフィニー王家の正当後継者である事とギュスターヴというあまりに大きすぎる名前、ふたつの重圧に耐え切れず家を捨て、名前を捨てることになったというエピソードが明かされることに。

その後一介の冒険者となったグスタフだったが兄弟同然のデーウィドの危機を見過ごせず、そしてそんなグスタフの事情を知るヴァンアーブルから自身の名前の元となったギュスターヴの剣を托される。

術全盛の時代を象徴するファイアブランドにそんな時代を否定するギュスターヴの剣、ふたつの名剣を継承したグスタフは後にエッグを打ち倒すことになる。

アルティマニアによれば、デーウィド率いる連合軍は術と金属とを同時に扱うハイブリッドな部隊であり、鉄鋼兵団を駆使したギュスターヴ13世の時代から一歩先を行く編成であったようだ。

本シナリオでのデーウィドとグスタフの初期装備を見ても金属装備とアニマ武器両方を所持しており、ギュスターヴ13世当時の時代では金属装備はあくまで術不能者やアニマの弱い者が己のハンデを活かすために使用する要素として扱われていたが、それと比較しても金属装備への抵抗感が明確に薄れていることが窺える。かつて忌避されていた金属。それは術不能者でありながら覇王まで昇りつめたギュスターヴ13世の登場によって変革され、そして人は金属と元々持つアニマとの融和を模索したのだ。

偽ギュスターヴことエッグは80年という長い時間人を介して学習し、強さとは個人ではなく群れによって構成されることを知る。そしてエッグの知る最も名を馳せた「鋼の13世」と呼ばれたギュスターヴのように優秀な家臣を従え、ギュスターヴのように優秀な鉄鋼兵団を携え、そしてギュスターヴの名前を騙り人を集めた。けれどエッグはギュスターヴ以上にはなれなかった。あくまでも模倣という域を出なかった。

強大なアニマを有しながらギュスターヴ13世を真似ることしか出来なかったエッグが、13世から学び更なる進化を模索し続けた人類の叡知と平和を求め協力することを躊躇わなかったデーウィドの前に敗れ去ったのは必然と言える。そしてそんなエッグがギュスターヴの剣によって破壊されることも。

エッグの悲痛な叫び声とともに無残にも吸収された数多のアニマは解放された。時代を作ったギュスターヴの象徴だった大剣は折れ、そしてギュスターヴという名も新たな時代に移り変わる中でその役割を終えて消えていった。「デーウィドの平和」という新たな時代が始まった。

 

 

本編終了後

1269年 南の砦を逃れて

遠征中に砦を包囲されたギュスターヴ。ヴァンアーブルの避難を命じられたフリンは合流した息子ダイクにヴァンアーブルを預け、主君の元へ舞い戻る。

しかして、ギュスターヴはまだ生きていた。最後の力を振り絞り周囲を覆っていた敵を殲滅させた守護者ヨハンのおかげで。彼の死を無駄にしないためにも、生きる理由の出来たギュスターヴは従者フリンと共に四面楚歌の砦から脱出を図る。

本編クリア後に開放される追加シナリオはなぜギュスターヴの剣が地面に突き刺さったまま放置されていたのか、その理由が明らかに。あれは役目を見事に果たしたヨハンへ手向け、亡くなった彼の墓標だったと気づいたときの驚きたるや。出番は決して多くはなかったもののプレーヤーに存在感を示し作中でも屈指の人気キャラとなった彼の相応しい花道。

シルマール先生がなんとかしてくれました

ここで思うのは、果たしてシルマールはギュスターヴの生存を周囲に伝えたのか、という事。弟子であるヴァンアーブルも知らされなかったことを察するにケルヴィンも知っていたのかどうか。片腕を無くし満身創痍の彼がこれ以上戦いの舞台へ上がり続けることを、ケルヴィンやフリン、そして彼女が望まず、それをギュスターヴ自身も受け入れたのかもしれない。

 

 

1288年 或る英雄の最期

グリューゲルのとある小高い丘。老いた男が伴侶と思われる女性に憎まれ口を叩いている。女性の手慣れたあしらい方からそれが日常の光景であることが窺える。

レスリー

美味い茶だ。

ありがとう。

唐突ないつもは口にしない言葉に面食らうも、いつものように他愛もない世間話をする女性――レスリーはやがて男から返事がないことを訝しむ。

そして遅れて気づく。彼――ギュスターヴがいつのまにか事切れているのを。

南の砦からの脱出後、戦いの日々から開放されたギュスターヴが過ごしたであろう穏やかな時間。それは唐突に終わりを迎えた。

 

レスリーは過去に術が使えない彼が自暴自棄になっていた際に割って入り彼が涙を流している姿を目にしている。

 

道端の草や石にも宿るアニマ。人は死ぬ際に自身のアニマを解放する。アニマは有ることが当たり前。分かりやすく言えばアニマ=魂のような存在だったのだろう。そんな世界にあってフリンでさえ術使用に至らないまでもアニマ自体は有していたことからも、ギュスターヴはまさしく異質な存在であり、彼の苦悩は誰に理解されるものではなかった。けれど彼女は彼がこの世を去ったその瞬間にアニマを持たないことがどれほど辛いことなのかを彼女自身が思い知ることとなったのだ。

 

ギュスターヴの死が大陸中に広まるとギュスターヴの遺志を継ぐケルヴィンと反意を示したカンタールが覇権を争う。ギュスターヴは数多の女性と浮き名を流したとされているが、彼の血を引く存在は居らずそれもあって彼の死後も後継者の座を争い戦乱は収まらなかった。彼の権威を利用しようとギュスターヴの血筋を名乗る者も幾度となく現れた。

ギュスターヴは己の血を呪っていた。自身がアニマを持たなかったがためにフィニー王家を継げず母共々追放され、周囲から出来損ないと嘲笑われ、自分の大事な人達をも巻き込んで不幸にしていく。何も持たない自分がどこまで行けるのか試したい前向きさを抱いてはいたものの、彼の根深いコンプレックスは何を果たそうと払拭することは出来ない。そしてそれは晩年になっても変わらなかったことだろう。

 

けれどギュスターヴは本当にアニマを持たない者だったのか?ギュスターヴの死を知覚できなかったレスリーからの問い掛けをかつてギュスターヴを指導したシルマールは否定し仮説を立てる。彼はアニマを持たないのではなく、我々が知覚できないアニマを持っているだけなのではないかと。

それはもしかしたら最愛の人を亡くし失意の中にある彼女を慰めるシルマールの優しさからの言葉だったのかもしれない。ただ彼自身が幼い時分のギュスターヴから強烈なアニマの気配を感じていたにも関わらずファイアブランドが反応しなかった、その違和感への答えをずっと探し続けていたのは間違いない。

 

そしてその仮説は、最後の最後に立証されたのだ。

 

 

エッグ(未知なる力)

リマスター版では強化された各将魔を倒した後、本編の最終ボスであるエッグの強化版との対決が用意されている。すべての将魔の力を有し、新たな攻撃を仕掛けてくる姿は最終パーティーを鍛え上げたプレイヤーであっても最後まで苦しめることだろう。

その強化エッグは通常のエッグと同様HPを削っていくと各将魔の姿を形取り様々な攻撃を繰り広げてくるが、その中に見慣れない姿の将魔が含まれている。炎、樹、獣、水、石、音。既知のアニマのどれでもない未知なる力と呼ばれたその姿は天地二段やマルチウェイなど様々な剣技を繰り出す「鋼」。

だからきっとギュスターヴは出会ったときと同じようにフリンを従えて困った顔したケルヴィン達と、レスリーの言うようにそこに至るまでの長い長い話を続けているんだろう、いずれは彼女も加わって。いつまでも。

 

 

 

感情というものはとてもフワフワしていて、それがどのようなものであれどういった在り方をしていたのかもいつか忘れてしまいます。時には必要以上に美化したり貶めたりすることも。なんにせよ備わっていたものを歪ませてしまった時点で悲しいことです。それは人間に備わった機能であり、殊更悲しむことではないのかもしれません。それでもあの頃の僕が、そして今の僕が抱いた感動をこうして言葉にすることで形になる。僕の血となり肉となる。本来ならすべての事象に対して同じように扱えればいいのですが、残念なことに時間は有限でやらなければいけないことはいくらでもある。だからこうしてやる気になった時くらいはきちんと言葉として残さなくちゃ。いつか「楽しかった」「悲しかった」という感情が色褪せてしまう日のために。作品のためにも。僕のためにも。と、フンスフンスしてたら気付けばこんだけ長くなってしまいました。

それではまた。




以上の内容はhttps://mywaymylove00.hatenablog.com/entry/2025/09/19/215509より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14