先月、誕生日だったので時間給を取って淡路町へ行った。お目当ては近江屋洋菓子店。老舗の洋菓子屋さんだ。
地元の役所で働いていたころ、銀行の帰りに昭和からある洋菓子屋さんでケーキやタルトを買ってみんなで食べるのが好きだった。もったりして固いクリーム、バターたっぷりの生地に、シロップが浸されたスポンジ。華美ではないお菓子たちの甘すぎない上品な美味しさの虜になってから、筆記体のパティスリーよりも街に溶け込んだ洋菓子屋が好きだ。
誕生日は祝福されるもの。私と兄で双子だったから、一日しかない誕生日は貴重なイベントだった。子供が二人いるのだから、ケーキを食べるチャンスは二日あって然るべきなのに、双子は絶対同日開催になる。親も不憫に思ったのか、我々子供が駄々をこねるからか、力の入った誕生日を催してくれた。
といっても外食文化がないので、ケーキも親の手造りになる。電動泡だて器にこびりついた生クリームを一つずつ兄弟で分け合って舐めた。スポンジを半分にするのが難しく、ちょっと斜めに薄くなったのを、外壁になるクリームで隠していた。母親がリンゴとレタスのサラダを作ったとき、子供には背伸びした味だったので残そうとしたら、「食べないとケーキなし」と言われたな。大学生の時は、友達のためにケーキを焼いたこともある。白と赤のショートケーキは祝福のアイコンとして、大人になった今でも私の中に残っている。
成長につれて家族が険悪になっても、ケーキは好きだ。親類皆々重度の花粉症を患い、バラ科の果物アレルギーを発症してからも、唯一いちごを食べても喉が痒くならない父と私だけがショートケーキを食べていた。父はこっそり犬にクリームがついたセロハンと皿を舐めさせるためだったけど。チョコレートは犬にとって毒なので。かといって推奨される行動ではない。
夜には売り切れると聞いていたので急いで向かうことにした。途中、翌日中島健人のソロコンのためにうちわ作成の材料を買うため銀座の百円ショップに向かったら、エレベーターに外国人しかいなくて、(ここは日本だよな・・・)と不安になった。銀座に百円ショップがあるのも異質だが、空港並みに外国の人しかいないのも不思議だ。平日の都内は日本じゃないみたいだ。
知らない駅で地上に降りると、方向が分からなくなる。大きい交差点を前にするとどっちに進めばいいか分からなくなり、しばらく歩いてグーグルマップの動きを確認することをしがち。青だから渡っとくか、って急いで渡ってよかったことが一度もない。焦らずにグーグルマップの位置情報を祈るように見つめることが大事だ。
お店につくと外国人のグループが前に並んでいた。香辛料の香りが鼻をくすぐる。満員電車で外国の方が近くにいると、大衆とは別に香辛料の香りがするのだが、この香りの柔軟剤があるのかな。日本語がペラペラですぐに会計が終わりそうだったので、慌ててショーケースを見渡す。売り切れてなかったが、種類が豊富なのが嬉しい悩みを生む。
有名なフルーツポンチも購入したいけど、ここはケーキを攻めよう。誕生日ボーナスで、数種類買ってしまおう。仕事中の彼氏はLINEの返信がないので、チョコレート系のケーキを買っておけば問題ない。何種類か選んで、ほくほくと外に出た。
帰りに丸の内線に乗ろうとしたら、駅が複雑すぎて泣きそうになる。地下に入って、階段を上って、降りて、改札にたどり着かない。難易度が高くないですか。帰宅ラッシュの人と沢山すれ違うので、ケーキを守るのに必死である。

家に帰ってケーキを食べるぞ!写真は一目ぼれしたイチゴサンドケーキ。普通のショートケーキの2倍以上の大きさで、小さなホールケーキみたいだ。これこそ、誕生日の祝福にふさわしい貫禄のある雰囲気だ。イチゴが甘酸っぱいしたくさん入っている。甘めのクリームをあっさりしてくれる。贅沢で美味しい!

並べると壮観だ。このケーキ達のほかにレーズンサンドも購入しました。六花亭とはまた違う、フレッシュな味わいだ。戸棚の奥からちょっといいウィスキーを出しました。
ここで蝋燭をつけたらお洒落なオーセンティックバーです。大人な味だ。

大人の味はもう一つ。手前のサバランも人気なんだって。じゅわっとシロップと洋酒が染みている!スポンジではなくブリオッシュというパンらしい。こんなおいしいパンがあるんですか。夜に食べたいケーキだ。生クリームが挟まっていて、洋酒といっしょに口の中で溶けていく。
お店を出た後に「ザッハトルテ!」とラインが来ていたのに気づきました。ラスト一個のショコラケーキを買ってきてしまった。申し訳ないなとおもって差し出したら、こちらも絶品だったそうです。チョコケーキの表面に削ったチョコレートがまぶされているの大好き。
地元でも跡取り不足で閉店しているケーキ屋さんが多いですが、ずっと続いてほしい。一つのジャンルとして、昭和レトロ平成レトロとかチープな名前で盛り上げてもいいからさ。親の手作りお菓子の延長線上にある、圧倒的なプロの腕。どこか懐かしい、思い出と結びついて想起させるようなケーキ。日本中から無くならないで。その筆頭、神田近江屋洋菓子店。東京に来たらぜひ行ってみてください。
私ももっと前に知っていたら、東京観光の間に買って、ビジネスホテルで夜にこっそり食べてたと思います。コンビニの小さなウイスキーのボトル、ホテルに備え付けのお茶類。こじんまりとしたテーブルとイスにケーキと一緒に並べて、知らない町の夜を見る。いつも見ないテレビの番組を流し見する。足に休息時間を貼ってさ。なんという贅沢だろうか。