親友が結婚したショックで新宿を歩き回った日に購入したサマージャンボが外れた。その日は大安のくせにとにかく運が悪く、藁にもすがる思いで購入したのだった。ミニジャンボとサマージャンボ、合わせて20枚。金額としては6千円。遊び続けてしまう薄給人間にとって、痛い出費だったのだ。
8月は7億が当たるつもり生活してみた。言霊思想を信じて、当たるからねーと口に出したらどんどん当たる気がする。月末の私は有給をとってみずほ銀行に換金に行っているような気がしてくる。
7億円あったら、少しは投資に回そう。社会との繋がりは欲しいからパートはしたい。あんまり人と話さなくてもいいけど、社員同士の仲がいいようなところで少しだけ働きたい。近所のプールに昼から通い、子供達のはしゃぐ声を聞きながら泳ぎたい。ついでにお腹の周りの脂肪も落としたい。
安い都内のマンションを購入してリノベーションをしよう。本棚を壁一面に作って、それを埋めていくことに喜びを感じたい。図書館なんて行かずに、全部新品で埋め尽くすのだ。己と同じぐらいの背丈の観葉植物を買って、相棒と名付けたい。ルンバだって導入するからね。風呂は追い焚き機能がついていて、足が少し伸ばせるぐらいの大きさがいい。風呂場にタッチパネルがついていて、お湯の温度を変えれるんだ。古くてもいいから、丈夫で大きな洗濯機が欲しい。
台所はシステムキッチンがいい。コンロは2つ欲しい。魚焼き機がついていて、いつでも鯖の塩焼きを食べれるようにしたい。冷凍庫と野菜室と両開きになっているとこらがある大きな冷蔵庫が欲しい。お酒とふるさと納税で購入した帆立を沢山保存するんだ。自動で氷ができるのだ。大きなオーブンレンジと、電動泡立て器が欲しい。私はふわふわなパウンドケーキを焼きたいのだ。
代金を負担して、友人たちと泊まりの旅行に出かけよう。温泉旅館にみんなで連泊して、特に観光もせずにだらだら各々の時間を過ごすようなことをしたい。みんなで和室に集まって妄想を語り合いたい。昔のジャニーズのDVDを流して、ワイワイ言いたい。それなら、大学の友達たちの住んでいる土地を回りたい。北陸の友人とは何年も会っていないのだ。みんなでちょっといい居酒屋で日本海の海鮮と日本酒を味わいながら、昔の話をしたい。駄々を捏ねて黒部ダムに行きたい。
彼氏が7億円が当たったら大学院にまた行きたいと言っていたので、資金を工面しよう。社会人学級みたいなのはあるのだろうか。週末だけやっている大学の講座を受けたい。西洋史か日本史を学びたい。郷土史も楽しそうだ。それなら、カルチャースクールに行って、絵手紙と小説の書き方を学びたい。時間も沢山あるだろうから、一つ話を完成させてみたい。
母親と豪華客船クルーズに乗りたい。母親は目が悪いので、お風呂では何も見えなくて嫌だからと旅行にそんなに行ってくれないからだ。実家もリフォームして、過ごしやすいようにしよう。断捨離の業者を呼んで、綺麗にしてもらおう。母親と犬はずっと楽しく暮らして欲しい。お母さんの親友が住んでいる方へ一時的に引っ越してもいいようにしたい。犬と暮らせるホテルを沢山回れるようにしたい。
ちょっといいカバンを買おう。本革の、使い続けたら光沢が生まれる黒いカバンが欲しいのだ。真鍮の指輪のほかに、ブレスレットも欲しいなあ。シンプルで何年も使えるものがいい。香水が欲しい。メゾンマルジェラのサンデーモーニングがいいと聞いたので、それを身にまといたい。
長くて薄いながらも暖かい、無地のチェスターコートが欲しい。ユニクロとGU以外の服を買いたいのだ。卑弥呼の大きなサイズのパンプスを購入し、ヒールで街を歩きたい。金子眼鏡みたいな品のある眼鏡が欲しい。髪の毛を美容院で染めたい。どうせならブリーチまでしてしまおう。傷んだ茶髪と金髪から脱却して、プロの腕で染めて欲しいのだ。
ホールケーキが食べたい。家に生まれた時から誕生日が同じ人間がいたので、誕生日ケーキはいつも半分こだった。私だけの大きないちごのホールケーキが食べたい。ケーキと記念日を独占したい。
イタリアに行きたい。今じゃ考えられないが、学生時代軽いバックパーカーみたいな一人旅をしたことがある。ルートの兼ね合いでイタリアにだけ行けなかった。直行便でイタリアに向かって、本場の薄いピザを食べたい。サン・ピエトロ大聖堂に行ってみたい。007で見た、ヴェネツィアだって行きたい。地中海を見てみたいのだ。
それなら、当時歩いて楽しかったスペインとオーストリアにもう一度行きたい。スペインは美術と美食の国だった。特にワインと生ハムは格安で格別だった。対してオーストリアは文化と甘味の街だ。ホテルザッハーでザッハトルテを食べて、近くのオペラ座に入って立ち見でトゥーランドットを見た。また、1人でフラフラしたいのだ。どの国でも、ワインを沢山飲みたい。
国内にも行きたいところが沢山ある。出雲大社に石見銀山。志賀直哉が一時期住んでいたとされる松江。サンライズ出雲に乗って、私は島根に行きたいのだ。沖縄にも行ってみたい。青い海というのを見てみたい。夏の北海道も涼しいと聞く。春夏秋冬を最適な土地で、美味しいものを食べながらゆっくりと過ごしたいのだ。倉敷の大原美術館に行きたい。涼やかに流れる小川を眺めながら、柳が垂れる街並みを歩きたいからだ。
回らない寿司を食べよう。よって、今月は消費を重ねて2万円の赤字になった。そんなこと気にならないぐらい、ちょっとした贅沢をしたい。回らない寿司、単品で頼む焼肉、揚げたての天ぷら、シェフのおまかせのコース料理。緊張すると味がしなくなるので、カジュアルな銘店で友人たちと大声で笑いたいのだ。人とご飯を食べて、楽しかった記憶を味と場所に結びつけたい。
犬と暮らしたい。実家にはずっと犬がいた。家に帰ってきたら、尻尾をふってお出迎えしてくれるような存在が欲しい。名前を呼んだら振り返り、歩いてきてくれるような存在が。毛がふわふわで、よく笑う。自分の足元をクルクルと歩き、いつもこっちの様子を伺ってくれる。そんな犬とずっと長く暮らしたい。
ここまで書いて、ふと思う。全部を一気に叶えることは不可能だ。7億円は必要だ。しかし、少しずつ死ぬまで叶えていくなら、もしかしたら全部できるかもしれない。全部は無理でも、8割ぐらいはできるかも。
大きな夢はなくなった。人生に期待なんてしていない。とにかく楽して暮らしたい思いは変わらない。今だって7億円欲しい。それでも、考え方によってはそこそこ幸せかもしれない。小さな幸せの可能性が、我が人生に溢れている。