上山市の古窯(佐藤洋詩恵社長)が鶴岡市あつみ温泉の老舗旅館「萬国屋」(前田新一社長)の経営譲渡を受ける方向で調整していることが26日、複数の関係者への取材で分かった。旅館名は変えず、年明け以降に経営を引き継ぐという。全国的に知名度が高く、本県を代表する旅館2社が手を組むことで、県内の観光客増加、経済活性化への波及が期待される。
関係者の話を総合すると、古窯は萬国屋の老舗旅館としての歴史を守り、継承しながら双方の発展につなげ、県内の観光振興に貢献する戦略とされる。
萬国屋は団体客の落ち込みなどにより、4、5年前に一時、売り上げが減少。近年は個人客やインバウンド(訪日外国人客)を取り込んで改善していたが、設備投資などに関する負担の軽減が課題となっていた。将来を見据え、古窯の傘下で経営ノウハウの提供を受け、収益力を高めるべきだと判断したとみられる。
萬国屋は県内外の複数の企業に譲渡を打診した結果、県内に立地し、互いに事情を知る古窯に絞り、話し合いを進めている。従業員約150人の雇用は維持する考えという。山形新聞の取材に古窯、萬国屋とも「今は話せる段階にない」としている。
古窯は1951(昭和26)年に創業。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で毎年上位に入っており、本年度は総合6位。今年11月には、本県で開催された全国農業担い手サミットに出席した皇太子さまが宿泊された。2008年に山形市黒沢の「悠湯の郷 ゆさ」を取得しており、経営する旅館は上山市河崎の「おやど 森の音」を含め県内4カ所目になる。
萬国屋は江戸時代の寛文年間(1661~72)創業とされる。フランス・パリの万国博覧会にちなんで明治初期に「萬国屋旅館」とし、1981年にホテル萬国屋として法人化。86年に社名を萬国屋とした。94年に10階建ての新本館が完成。客室数127室。「雪の降る街を」の作曲家・故中田喜直氏らが定宿とし、本年度の同100選では総合11位となっている。