
よくわからんまま謎に満ちたダンジョンを下っていく倉庫番ライク(を組み込んだ適性検査あるいは耐久試験)。
評価:8 /10(クリア直後)
9 /10(wiki読んだ後)
10 /10(この記事を書き終えた後)
プレイ時間:53時間
非公式の日本語化パッチを当ててプレイしました。
あまりまとまってないがご容赦。ネタバレ薄めです。
評価がブレブレですが、まあそういうこともあります。今回は特に、クリア後に(あれってああいうことだったのか!)となることが多くて、じわじわと評価が上がっていきました。
www.youtube.com 公式のサウンドトラック(プレイリスト)を貼っておく。雰囲気を掴みたいときとか思い出に浸りたいとき用に。もちろん記事を読むときのBGMにも。
まず注意。自分はかなり攻略を見てプレイしていたので、上記のプレイ時間はあまり参考にならないと思う。
「最初からやり直し」を多く求められる、プレイヤーに厳しい仕様。自分は単純に、考えても進め方が分からなかったときに攻略を見ていたが、逆に解き方に確信が持てたときにも攻略を見ていた。謎解きにおいて、解き方が分かったら後はもう作業じゃん?という考えがあるから。もう一つ加えると、本作ではその解き方が分かった後の作業の量がわりとキツかったことがある。イチからやり直してなにかを確認しなきゃいけないことがかなりあった。何度もイチからやり直すのは辛い。必要以上に辛くなりたくなかったので適宜攻略を見てプレイした。(それでも50時間以上かかったのか…)
ストーリー付きの倉庫番ライク+謎解きみたいな感じのゲームだが、本作ではプレイヤーに厳しい仕様のために、パズル脳や謎解き脳よりもまず「ストレス耐性」が求められる。
ストレス耐性の強さは人によって本当に千差万別だと思う。なので本作の厳しい各種仕様については、究極、各々で適当に対策してもらうしかないと思う。攻略を見るのはその一環という感じです。
他、個人的に有用だと思った対策として、「手動でセーブデータを取っておく」ことがある。本作はセーブデータが一つのみで、また細かくオートセーブが入るため、ちょうどいい地点からゲームをやり直すことが難しい。人生と同じでリセットやらリトライやらが効かないように基本はなっている。だが試行錯誤が求められるパズルゲーにリアルな一回性が備わっているというのは、思った以上にきつい。おそらく作り手側からしたら邪道に映るだろうが、大きなやり直しを減らすために手動セーブは有用である(やり方はsteamレビューを参照)。
あとは単純にメモを取った方がいいですこのゲーム。結局どっかで情報を整理する必要が出てくる(Lorelei and the Laser Eyesみたいにゲーム側からメモ取れ!って言ってくれたら助かった……けど、そんなことしたら文字通り玉に瑕になってしまうことがクリア後の自分ならわかる)。自分はスプレットシートに情報をまとめていました。スクショとか画像も貼れるからオススメ。
覚えておかないといけないギミックが多いし、途中からやりたいこと・確認したいことが増えてくるので頭がパンクしそうになります。プレイごとに「今回のプレイの目的・方針」を固めておくと精神的に楽になります。自分は途中からアプリをウィンドウモードにして、隣に今回のプレイ方針をまとめたメモを常に表示しながらプレイしていました。
あまりにもろもろの仕様が厳しいため、プレイしていると自然と、ゲームに対する自分の考えに向き合うことになる。苦行めいたゲームプレイを続ける理由は? 自分はなんでこのゲームをプレイしているんだろう?…
自分は……まあ元から分かっていたのだけど。自分は快楽主義者なので、あまりこういう厳しい…というか接待のないゲームをプレイする動機がない。自己満足だけじゃあ身体を動かす理由としてはちょっと足りない。そんな甘ちゃんである。プレイに爽快さを求める時点でその気(快楽主義者の質)はあると言えるだろう。キャラを動かしてるだけで気持ちいいゲームとかいいよね。
そんな自分からしたらCelesteとかThe Witnessとかはハードコアに映る。そして言ってしまえば、Void Strangerもそれらに近しい作品だと思う。
もちろんゲーム側からの牽引がないわけではない。パズルや謎解き自体のおもしろさや興味深いストーリーがある程度プレイを促してくる。ただまあこれらの報酬(?)が厳しいプレイに見合っているかどうかは人による。個人的には、特に一周目はストーリーのおもろさは見合ってないだろうと感じたし、ゲーム性の拡張についても、先に『パクレットのウサちゃん捕獲ゲーム』をプレイしていたので、驚きそうなところであまり驚けず、少しワクワクが削がれてしまった部分はあった。
(ここは横道)自分に関して言えば、キャラクターやストーリーよりは謎解きの方が魅力的に映っていたように思う。当初は単なる嫌がらせのように思えたギミックや、逆にただプレイの快適さを上げるだけのTIPSだと思っていたものが、最終的にすべて謎解きの一手順として嵌まってくる。この構築には唸らされた。マジで全部使うんだ、と。
その他、自分がゲームをクリアまで続けた理由として、作品を見極めたかったという思いもあっただろう(半分くらいはサンクコスト効果かも)。結局、プレイの苦しみはクリアで得られるものに見合っていたのか。それを正しく評価するには自分で実際にクリアまでいかないといけない。結果は、まあ少し見合ってなかったという評価になったが(ゆえの9点である)。ただここの、難易度の評価は本当に感覚的なものなので、繰り返しになるが人によって変わるだろう。ストレス耐性も関わってくるし、ゲーム的な頭のよさだって…ゴニョゴニョ
まあでも、慣れの問題もありますよ。繰り返しプレイしてダンジョンに慣れるほどゲームを効率よく進められるようになる。そのうちにダンジョンが自宅の庭みたいな感じにもなってくる。そうなったら後は思う存分謎解きを楽しむだけだ。いやまあそこに至るまでが大変なんですが…
評価について。クリア直後は8点のつもりだったが、wikiを読んで自分が到達できなかった情報も確認していったら作り込みのすごさを強く感じたので評価が上がった、という経緯がある。
あらゆる表現に意味があるゲーム。作中のすべての表現が意味を持っている。だからこのゲームに関するどんな思考も無駄になることはない。
自戒として。思い出は美化される。クリアして数日経っただけの今の時点でも、自分の中の本作に関する美しい記憶だけが残り、苦しんだ記憶が薄れつつあることを感じている。それとは別に、クリアして初めて伝わる凄みや美しさがあって、それらがだんだん本作の評価を底上げしてきているのを感じる。クリア直後の自分の評価がたしかに8点だったことをここに残しておきたい。プラス1点はwikiを読み、自分では見つけられなかった本作の構築性に触れたからだ。これは自分ひとりの力では本作を味わいきれなかったということでもある。
作品として見るなら10点満点もつけられるだろう。前述したように、本作は「文字通り」あらゆる部分に意味がある。あらゆる部分が他の部分と関連し、繋がっている。自分はそんな作品を美しいと思う。またそれ以前にまず巨大でもある。その威容はまるでエジプトのピラミッドようだ。
ただ、自分にとってゲームとはやはり娯楽でもあって。快楽主義者の自分は本作を満点評価にしない。これはもうゲーム側の問題ではなく自分の問題である。自分にとってゲームとは気持ちよくなるための道具なのだ。これは将来変わるかもしれないが、とりあえずこの文章を書いている時点ではそんな感じである。
いろんなキツさにより万人におすすめできる作品ではない。しかし作品としての強度はとんでもなく、どこを打ってもなにかしら返ってくる。その返ってくるものが行為者にとって見合ったものかどうかは分からないが……それでも「作中のすべてに答えが用意されている」ことは驚異的だ。創作物としてひとつの理想に到達している。
美しいタイプのゲーム。美しさを維持したままここまでの大きさ・深さを備えた作品は稀だろう。だがそれを感じられるようになるまでのハードルは非常に高い。大きいから当然である。クソでかいジグソーパズルがあったとして、まずパズルをすべて完成させなければ1枚の絵としては評価できないだろう。本作も同じで、その美しさを感じ取るためにはパズルを解いてクリアまでたどり着かなければいけない。
間違いなく傑作。昔ならその厳しさゆえにおすすめするのを躊躇っただろうが、少し時間の経った現在では、ファンによるヒントやガイドが充実しているためもう少し気楽に勧められる……かもしれない。時間的・精神的な余裕のあるときにぜひプレイしてみてほしい。
VOID
しかし、本作の在りようからはいろいろと考えさせられる。先ほども書いたが、「作中のすべての表現が意味を持っている」から「このゲームに関するどんな思考も無駄になることはない」。そしてその裏には「だから諦めないで、考え続けて!」というような祈りが透けて見える。
諦めなければいつかはたどり着く。しかしそれが「いつなのか」はたどり着くまで分からない。ちょっとパラドックスめいている。苦行っぽいし。生存バイアスなんて言葉も浮かぶ。
厳しさはある。しかしクリア後に、最後に見られるメッセージからすると、なんらかの希望を示すために本作は作られたように思えるのだ。考えるに、この「あらゆる表現が意味を持っている」という本作の在り方自体が、おそらくは作者からのメッセージであり、つまり全プレイヤーに対するEncouragementで、このゲームのコンセプトなのだと思う。諦めずになにかを続けること。考え続けること、作り続けること、そして声を上げ続けること。絶対になにかが返ってくるから。Void Strangerはそれを示すためにここに在る。
本作は、己だけのVoidを進み続けるすべての人に向けた賛歌なのではないか。そこまで考え至った時点でふたたび評価点を改訂した。合ってるかは分からないよ。でもそうじゃないかなって思うし、もしそうならこんなに尊いことはない。たとえ違っていたとしても、このようなことをプレイヤーに考えさせただけですごいし、偉大だと思う。
ここまで書いてもまだ万人に勧められる感じではないのだけど、しかし少なくとも、自分の中で本作が神ゲーであることは確定した。こんなに綺麗なゲームは他にないだろう。
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