暴力的かつサイケデリックな見下ろし型2Dアクション・シューティング(死にゲー)。
評価:9 /10
プレイ時間:4.5時間
アメリカのゲームパブリッシャーDevolver Digitalのブレイク作。ゲーム性はシンプルながら、ショッキングなビジュアルとサイケデリックな音楽によりインパクトのあるゲーム体験を作り上げている。
ゲーム部分の目的は敵の殲滅。敵は聴覚視覚を持っていて、布陣的にこちらが攻め込むのが難しい場合は、音を鳴らしたり一瞬自分の姿を見せたりして敵をおびき寄せることも有効だ。ゲームは全体にスピードが速く高難易度だが、リトライも恐ろしく速く(1秒もかからない)何度も挑戦してしまう。自分が今までにプレイしたゲーム作品で言えば、例えば『メタルギアソリッド』と『Nidhogg』を合わせたかのようなゲーム体験だと思う(『Nidhogg』が2014年なので、こっちが『Hotline~』の影響を受けているのかも)。
武器や環境を利用して敵を倒すゲームプレイがまずおもしろいのに、それが高速リトライによってすごいスピードで回っていく。さらに幻惑的な色彩、トランシーなBGM、猟奇的な演出が重なって、まさに麻薬のように快楽的なゲーム体験が創出されている。
思わず熱中し気がふれたようにリトライし続けてしまう。実際、プレイしていて自身の制御が効かなくなることがあった。死んでもデメリットはないし、一応クリアが早いほど高得点でもあるので、もう狂人みたいに敵陣に突っ込んでいったりしていた。もちろん闇雲な突撃でクリアできるほど簡単ではないのでそのうちに冷静にはなるのだけど。
「麻薬」というのはものの例えだが、本作のゲームプレイはそれくらい気持ちよく、もはや恐怖を感じるほどだ(プレイ中の自分は確実に普段よりも暴力的になっている)。
アクション部分とそれ以外とで快感のギャップがあるために、アクション以外の部分を飛ばし気味になってしまう問題も個人的に発生していた。ゼンゼロであるやつ。戦闘が楽しすぎて戦闘以外をスキップしてしまう問題。ただまあこれはプレイヤー側の問題でもある気がするので…。とりあえず、そのくらい本作のアクションは気持ちいいということだ。
ストーリー面について触れていこう。……と思うが、正直に言うと自分はプレイ中あまりストーリーをちゃんと追えなかった。アクション部分がおもろすぎてストーリーを半分くらい読み飛ばしていた。CHAPTER 4(TENSION)で主人公の前任者らしいマスクマンが拷問されてることにも気づいてなかったし。しかし言い訳もさせてほしい。OneDriveも悪いんですこれ。
どういうことかと言うと、こういうこと⇧がありました。これのせいで初回プレイが遅れに遅れストレスがマッハ。問題解決後は半ば暴走気味にゲームをプレイしてしまったのでした。
ただ、飛ばし気味なプレイを差し引いても本作のストーリーの語り口はふわふわしていて掴むのが難しかった(この部分は『Lorelei and the Laser Eyes』や『killer7』も思い出す)。作中で起こる出来事のどれが事実なのかもわからなかった。もし自分が冷静にストーリーを追えていたとしても、正確に理解できたかは怪しかっただろう。結果的に自分はこれらのページで本作のストーリー解釈を補完しました。
ストーリーの解釈について、極めつけはこちらの記事。以下の記述はこの記事を踏まえた内容になっています。

デヴィッド・リンチの作品などから影響を受けた本作は掴み所のない語り口をしているが、作品の意図を捉える最低限の糸口は用意してあって、それが序盤に提示される4つの質問である。
1. 他人を 傷つけることは 好きか?
2. 留守番電話にメッセージを残すのは 誰だ?
3. おまえが 今いる場所 それは どこだ?
4. なぜ オレたちは ここで会話を しているのか?
これらの問いの答えを考えていくと否応なくチラついてくる影がある。そう、主人公を操作している現実世界のプレイヤー自身である。なにも考えずにプレイしていると本作はトリガーハッピーな狂ったゲームのように思えるが、このようにメタ的な部分までも射程に含んでいることが分かると途端に恐ろしく思えてくる。
そしてその自己言及の鋭さは、ゲーム部分が快楽的であればあるほど……ゲーム部分を楽しめば楽しむほどに増していく。いちプレイヤーとして楽しんでおいてなんだが、意地の悪いゲームだと思う。だがこの、現実世界でのタブーの疑似体験……「ゲームだからこそ得られる快感」に釘を刺すメタ的な解釈のできる余地を残したことは、見方によっては倫理的とも言えるだろう。
難点があるとすれば。本作の快楽的なゲームプレイに我を忘れるような衝動的・即物的なプレイヤーこそ考えて向き合うべきストーリーだが、彼らには抽象的な表現に向き合い続ける忍耐力がないかもしれないことだ。自分自身、ネットで検索してこれらの優れた記事がすぐにヒットしなかったらストーリーの解釈を放っていたかもしれない。ただこの点は前述したように、味わいの鋭さと表裏一体の関係にあり、一概に悪いとは言えない。
多様な解釈のできる奥深いストーリーと中毒性の高いゲームプレイを備えた傑作。自分の視界外から狙撃される理不尽さ、明らかに難易度が突出しているいくつかのボスやエリアなど粗削りなところもあるものの、それらを上回る快感がある。そして全体としてはミニマルに完成しているところも好感が持てる。
なにより、圧倒的な暴力を描きプレイヤーにその快感を味わわせながらも、最終的には暴力について自省を促すような出来になっているところが渋く、かっこいい。慣れてくると突き放したようなテリングもハードボイルドに思えてくる。
非常に優れた「ゲーム」だが、前提としてショッキングな内容であるということは承知しておいてほしい。また難易度も高めで、クリアまでたどり着けなかった(けど気になったからストーリーだけネットで検索した)という人もネット上で複数見られた。それでもゲーム性、ビジュアル、音楽など多くの面でユニークで後世への影響も大きい、触る価値のある作品だと思う。おすすめです。
以下は雑談。
・終盤までロックオン機能に気づいていなかった。でもそのおかげで腕前が上達したところもあった。
・マスクはずっと犬と仲良くなれるやつを被っていた。まあ最終的には犬も始末するんですが…
・グロいけど、プレイ中は正直そこまで意識していなかった。そこまで見ている余裕がない! 敵がちゃんと死んだかどうかの判別がはっきりとつきさえすればよかった。ただ、第三者として他人のプレイ動画などを見ているとたしかにグロいとは思う。
・音楽はけっこう時代を感じた。懐かしいですね。Not Not FunとかItalians Do It Betterとか、今作のサントラみたいな音楽が当時流行っていた記憶。00年代終盤くらいからチルウェイブといってローファイ&ノスタルジー志向が顕在化してきていて、本作もその流れにあるんじゃないかと思う。
・その流れの果てには多分ヴェイパーウェイブがあって、実は本作のタイトル画面で自分が思い浮かべたのはこっちの方だった。製作陣が『Floral Shoppe』を通っていたかは知らないけど、ケバケバしいビジュアルの方向性など似通った部分はあると思う。
⇧こんな作品も思い出した。フロッピーディスクでリリースされた最初のヴェイパーウェイブ作品、とされている。マイアミ、ヤシの木、2012年…。(寂れた)リゾート地のイメージなのか、ヤシの木や海岸線はこの手のジャンルでけっこう出てくるモチーフな気がする。
・超ダビーなSun Arawはまたそれらの流れから距離がある存在のように思うが、サイケデリックという意味では一番ハマっているかもしれない。サントラのラインナップの中ではおそらく一番のビッグネームだが……音楽性が尖っているので一般的なゲームファンにはそこまで訴求しないだろう。実際、自分が今までに見た本作の日本語感想記事でSun Arawに言及しているものはなかった(一番人気っぽいのはM.O.O.N.の「Hydrogen」)。
・Sun Araw、これからの季節によく合います。おすすめ。ぼんやりするときのBGM。
調べるとPitchforkが23年にHotline Miamiの音楽についてのコラムを書いている。サントラ候補をBandcampで探すってのが時代を感じさせて良い。M.O.O.N.はサントラのオファーが来た当時まだ16歳だったらしく。インディーらしいいいエピソードだなと思った。