妹を探して奇妙な世界を放浪する2Dパズル・プラットフォーマー。
評価:10 /10
プレイ時間:4時間
1人森の中で目覚める主人公。何もわからないまま危険な環境を進んでいくと少女らしき姿を見かけるが…?
正直ストーリー性は薄い。一応、公式の紹介文で「妹を探して」とあるから主人公は妹を探しているんだろうが……作中で女性が出てくるのはラスト以外ではおそらく中盤の一度きり。それ以外に主人公もといプレイヤーの目的となるようなものは一切登場しないのだが、他にやることもないのでただひたすら画面右に進んでいく。
要素を抑えミニマルに表現された世界は美しく独特の雰囲気がある。
モノクロのグラフィックではもろもろの描き分けが難しそうだが、濃淡やシャープネスの微妙な差によって背景と前景、アクションできるオブジェクトをうまく表現している。
BGMもほぼなく、代わりに質感に満ちた環境音・効果音で世界を豊かに描いている。音楽らしい音楽がほとんどなかったにもかかわらず、プレイ中に音楽的に寂しくなることはなかった。
本作の美点として最初に挙がるのがこれら視覚的・聴覚的な表現の美しさだろう。『Ori and the~』シリーズほど「わかりやすい」綺麗さではないかもしれないが、本作もどの場面を切り取っても雰囲気のある画になる。作品のあらゆる部分に美意識が行きわたっており、ひとつのアート、ひとつの世界として完成されている。
肝心のゲーム部分について。ストーリー性の薄さによりアドベンチャーとしてはやや物足りないかもしれないが、パズル・アクションとしては一級だ。ベースにパズルがあるため、ひらめきを要するという意味でそこここに詰まるポイントはあるのだが、難しすぎないしちゃんと手ごたえがある。
パズル部分においてもミニマリズムは徹底されており、本当に最小限の要素しか出てこない。そのためプレイヤーが取れる択や考えることが少なく、なんというか詰まるときはすぐに詰まる。もう他にやれることなくない? どうすんだこれ??? という状況によくなるのだけど……それぞれの要素の「動き」をよ~く確認するとなにか思いついたりする(後述するがこのゲームには強い身体性が宿っている)。
個人的に本作のパズルでよく詰まった理由として、「力加減の壁」とでも言うべきものがある。自分的に、パズルといったら『パクレットのウサちゃん捕獲ゲーム』や『Understand』のような論理的なものが浮かぶのだが、本作ではそういう論理の部分に加えて、フィジカルな領域である絶妙な力加減が要求されることが多いのだ。大枠としてまず手順が合っていなければいけないのだが、正しい手順を見つけた上でかつ適切なタイミングで入力をすることで初めて壁を突破できるのだ。
シンプルな論理パズルからシビアなタイミングゲーへ。その傾向はゲームが進むにつれて強まり、終盤ではかなりアクロバティックなアクションゲームになる。
これだけ書くとパズルファンに敬遠されそうだが、Limboのすごいところはこの力加減の問題すらもパズル的な謎としてうまく組み込んでいるところだ。自分はそもそも0でも1でもない、半端な入力を択として考えたことがなかった(なぜなら考えるべき択の数が無限大になってしまうからだ)。だからそういったものを上手く組み込んだ本作のパズルは目から鱗だった。個人的に感動したパズルをひとつ紹介しよう。

わりと終盤だが、このパズルが上述した内容を象徴するような出来だった。本当に最小限の要素しかなく、正しい手順があり、かつ力加減も必要という。
結局自分ではわからなかったので攻略を見たのだけど……ここにいたっては攻略もそんなにあてにならないんだよね。なぜなら力加減って言葉で表すのが難しいから。このボタンを押してから0.X秒後にもっかいボタンを押す、みたいな書き方をすればできるけれども、そこまで書かんという。自力では解けませんでしたがこのパズルは美しいと思った。
タイミングゲー、いや、より正確に言うなら物理演算ゲーか。本作には精密な物理演算機能が備わっていて、それをうまくパズルに組み込んでいるところがユニークなのだ。
加えて言うと、物理演算機能がゲームの自由度に結び付いていないところもおもしろいと思った。自分の知る範囲では、物理演算を備えたゲームは自由度が高いことが多かったからだ。『Crayon Physics Deluxe』、『Human Fall Flat』、『ブレスオブザワイルド』……。なんならプレイヤーの発想の自由さをおもしろさに転化させる装置が物理演算、というような印象すらある。
しかしLimboでは物理演算機能はゲームの自由度を高めるようには機能していない。物理演算を組み込みつつも全体ではミニマルなビジョンを貫いている。それにはすべてを自由なままにしておくよりも繊細な制御が必要になる気がする。なんにせよ本作の物理演算の活かし方はまさに熟練のそれだと思う。
最後に、個人的に刺さったラストの演出について。時間制限のある重力方向変更装置が出てきたとき、その効果時間を示すためにだんだんテンポを増していくサウンドが鳴らされる(なんと表現すればいいのか、シャトルランみたいな…)。それがなかば強迫的なBGMとしてプレイヤーを煽り立てる中、最後の難関を突破したときに一気にスローになるあの演出。呼吸止まるかと思った。かっこよすぎるだろ。あれでグッと掴まれたところあります。
時間を知らせるだけの機能がだんだんとプレイヤーを急かす機能に変わる、その自然な変化を体感速度の落差の強化にうまく使っている。一石三鳥くらいある。
まとめ。まずアートとして完璧だが、加えてパズル・アクションとしても物理演算をうまく用いてユニークな領域を切り拓いていると思う。
体感では9点なんだけど、個人的な美学をとことん突き詰めた在り方は尊いと思うし、そういう作品が評価されてほしいと思うので10点にする。ただの雰囲気ゲーなのでは、と思っている人にこそ触ってほしいですね(自戒を込めつつ)(いや雰囲気もいいんだけどね)。
無理やりケチをつけるとしたら序盤。引き抜いたクモの脚ではなく腹部を使わせたところだけ納得いってない。脚でよかったでしょあそこ!?(クモ苦手)