
PCに取り込んだファイルのタイムスタンプからすると4/25にはCDが届いていたようなのだけど……文フリやらなんやらで聴くのが遅くなってしまった。yojikとwandaの新作がとても良かったので感想を書いていきます。
⇩アルバム情報&通販についてはこちら。
https://yojikwanda.jimdofree.com/new-album-info/
いいなという気持ちが抑えられなかったのでブログにまとめるより先にSNSに簡単な感想を投稿しました。
https://t.co/rq6PypwFcA yojikとwandaの『シーセイ』、なんとYouTubeでも聴ける いろいろ酷くて誰もが政治と無縁でいられなくなった20年代前半の時代感覚がギュッと濃縮されている 松永良平氏が「She sayで市井で私生」とコメントされているけど自分はここに政治も隠れてると思う(濁点ないけど)
— にんず (@ninz51) May 23, 2025
いつも通りに生活してるつもりなんだけど、ふとした拍子に政治のことが頭によぎる(そしてその頻度が増えていく) 音楽的には日常によくフィットするというか、テンポゆっくりで余白多くてマイペースな印象(1曲目だけ例外)なんだけど……ぜひ歌詞を見ながら聴いてほしい(Spotifyは表示できます
個人的には現代日本版の『What's Going On』みたいな印象もある。すごくいいアルバムです。
#4~#7の社会と私生活が自然に入り混じった表現の力強さ 精神世界という本屋のカテゴリ 「学校は閉館した 仕事の邪魔だからね」と歌う『仕事の歌』は実はかなり古い曲だけど時代を経るごとに強度を増していく そんな腐りゆく社会でも誠実でありたいっていう…
実は最初の「シーセイ」と最後の「いらかの波」(この曲のみyojik作)以外は既発曲ということで、実際自分もいくつかの曲は聞き覚えがあった。「短い邂逅」~「私の歌」~「本を読む」の三曲は過去にライブでまったく同じ流れで聴いたこともある。そういう事情もあって初見の人よりもいくらかアルバムが馴染みやすい状況ではあったのだが、それにしても馴染むのが早かった。
アルバムが早く馴染んだ一番の理由は全体のテンポののんびりさだろう。インストである#8「yw3」でアルバムを前半後半に分けるとして、それぞれのオープニングである「シーセイ」と「Free」こそアップテンポだが、他の曲は軒並みゆっくりだ。歪みを効かせたロックサウンドの「本を読む」「仕事の歌」ですらBPM80前後という遅さ(ロックだからテンポが速いというわけではないけども)。
アレンジの密度感もある。同じくらいのテンポであるミスチルの「HERO」があまりゆっくりに聴こえないのはアレンジが豪華だからで……そちらと比べるとシンプルな本作の楽曲には時間の流れをしかと感じられるだけの音楽的な余裕がある。地に足が着いている。
なんであれ余裕やら余白があったほうが物事は嵌まりやすいものだ。音楽的な余裕と、人間がリラックスしているときのリズム(心拍数)と同じようなテンポを持つ本作は肩の力を抜いたプライベートな日常にたいへんフィットする。
www.youtube.com 歌詞を意識して聴いてみてほしい。
そんないい意味で脱力している本作だけど、「本を読む」、「仕事の歌」、「Free」を中心として、歌詞にはかなりシリアスというか政治的なところがある。前述したフィジカルな日常生活感と、政治的な領域へも踏み込んだ表現がギャップなく同居しているところが本作の特徴であり、優れた点だと思う。
(これらの曲が、Bandcampで発表された当時よりも現在のほうがよりアクチュアルに響くというのが皮肉である。約5年経っても社会が好転していないということだから。)
自分が一番共感したポイントもそこだった。本作のそういった様子が、ここ数年の自分の感覚と一致した。自分はテレビも持たないし、かなり社会から外れた存在だと自分で思っているのだけど、それでも社会や政治のことを意識することがだんだん増えてきている(それこそこんな記事を書いてしまうくらいに)。そんな自分の感覚と今回のアルバムの佇まいがリンクした。
繰り返すが音楽的にはリラックスしているのだ。そんな状態で放たれる言葉にポーズも虚飾もないだろう。素で、自然に、彼らは政治的なことを口にしている。おそらく彼らの生活にもいつの間にか・否応なく政治が混じっていったのだろう。
『ナイトレイン』で目立っていたシュールで無邪気な遊び心は薄れている。改めて、前作から歌詞の描く風景が大きく変わったことに驚く。でもこれは自然だと思うし納得している。だって自分も同じ時代を生きて同じように感じ、同じように変化しているから。
(生活が政治じゃなかったことなんてなくて、実際はただ自分がそのことを意識しだしたのがここ数年というだけなんだと思う。ここ数年はありとあらゆることが……人の心すらも政治的になってきている気がする。)
リアルタイムの邦楽を追いかけていないこともあって普段そこまで「時代性」というものを感じることがないのだけど、本作のあり様には強く強く時代性が宿っているように感じる。自分のような半端者ですらそう感じるのだから、他の人はもっと共感できるだろう。
今まででもっとも滑らかな流れを備えたアルバムでもある。曲ごとの個性が強すぎて流れを断ち切ってしまうことがあった過去作と比べると、アルバム単位での完成度がはっきりと上がっている。詞も味わい深いけど、まず音楽が心地いい。あまり構えずに日常のBGMとして軽い気持ちで再生してみてほしい。YouTubeでもアルバム単位で聴くことができます。
僕らは同じ時代に生きている。そのことが強く伝わるアルバムで、嬉しいというか心強いと思った。めちゃくちゃ良いアルバムを作ってくれてありがとうございました。