
この音楽の良さをどう語ろうか。とにかく丁寧な語り口。テンポは遅く、音数は少なく、メロディーははっきりと。まるで親にあやしつけられているかのような語り口が特徴の一つ。
もう一つの特徴は一般的なゲームのBGMと違ってループに頼っていないこと。実際にゲームをプレイするとかなり珍しい音楽の使い方をしていることが分かる。ステージに入るとまあBGMが流れ出すのだけど、1曲分が終わるとしばらく曲が流れない時間があるんです。1分ぐらいなにもない時間を置いて、そこからまた同じBGMが流れ出すんです。
これにはちゃんと意図があって、実はこのゲームではBGM以外にも環境音が常に流れていて、環境音によってそれぞれのステージを表現しているのですね。都会だと車の音がしたり、自然豊かな環境だと鳥や虫の声がしたり。BGMがない余白の時間を取っている一番の理由はこの環境音を聴かせるためだと思います。
この「BGMをループさせない」という方針の影響だと思うのですが、サウンドトラックの一曲一曲の完成度がすごいことになっています。ループに頼らないことでよりスケールの大きな作曲ができている。少なくともシームレスなループ前提のゲーム音楽より数段複雑な曲展開を持っています。ポップスでよくある(AメロBメロサビ)×2+α~みたいな形じゃないです。
例えば上に貼った「Lost and Found」という曲は、5分半という尺の中で楽曲として一番盛り上がる部分が4分20秒くらいからという、壮大な構成を持っています。それまでゆっくり時間をかけて滑らかに流れを太くしていくのです。もはやプログレ的と言ってもいいかもしれない。
最初のステージの曲である「Child's Play」も同様で、全体で約6分の楽曲ですがクライマックスは終盤も終盤、5分あたりとなっています。それまでじ~っくり丁~~~寧に楽曲を展開させていきます。
この、気持ちの籠められた丁寧な曲構成がユニークな味だと思っています。一曲一曲が一本の映画みたいなストーリーアークを持っている。すげえ~。
最初に述べたような語り口もあって、そんなに難しい印象がないのも良い。壮大な構成がするっと入ってくる。それでいて盛り上がる部分以外も普通に良いという。これはメロディーが常に研ぎ澄まされているからなんですが。まあそりゃそうなんですよ。BGMとしての機能的にはサビとそれ以外でテンションに差がありすぎるのもよくないから(ゲームプレイと音楽が完全に結びついたデザインなら話は変わりますが)。
ポジティブとネガティブの狭間を繊細に揺れるムードもすばらしい。まさに「Lost and Found」がそうなのですが、聴いていると(そこで下げるんだ)という驚きがあります。
ということで全部良いです。普通に音楽の理想の一つだと思う。ゲームも良いけど音楽単体で見ても最高。丁寧さを突き詰めた作品で、わかりやすい凄さはないのですが、しかし自分はこういう作品を評価していきたい。Pavementで言ったら『Terror Twilight』だし、Sonic Youthで言ったらもちろん『Murray Street』です。超おすすめ。