しみじみとする佳作でした。
爆弾を作って権力者を攻撃する、というのは、想像しがたい恐ろしい犯罪だけど、警察も人間なら犯罪者も人間だ。犯罪を行っていた時間が終わって、悪の組織がバラバラになったあと、人はどう生きるのか。いろいろなことを恐れながら、目立たず騒がず、誰よりも普通の人として、生き切った人もいたんだな。
これ見て、彼のことを極悪だと感じる人はいないだろうな。それと、映画製作や評論をするプロの人たちって、どちらかというと権力に反発する人が多いんだろうか。爆弾の作り方を書いた手刷りの「腹腹時計」って本が存在したことは知ってたけど、映画の中に登場するのは、この作品の前に「夜明けまでバス停で」にも出てました。現実とは違って、彼女は自分をバス停に追いやった世間や権力者にリベンジするために爆弾を作ろうとする。同じ監督の作品だったんだな、と、つながりました。監督は、世界のはしっこに追いやられた人たちに寄り添おうとする。過去に何があっても、なくても。そしてこの映画はおもに評論家によって2025年のベストテンに入る。一方いまこの瞬間に行われている選挙では、与党が圧勝しそうな勢いだ。世界は変わらず、生きづらい人はさらに生きづらく、すみっこの人たちはさらにすみっこにいるしかない。
桐島聡という人の顔はよく覚えてる。ずーっと、ずーっと、交番に貼られてた人。他の事件の犯人と混同したりしてました。こんなに目立ちそうな風貌なのに、変装とかできるのかな、って想像したこともあった。笑顔だけど本当は怖い人なのかな、とか。
この映画だけでは、彼の頭の中は見えてこないので、彼が書いたものとかも読んでみたいけど、彼の逃亡について書かれた本はあまり詳しくなさそうなので、もう少し待ってみようと思います。