<結末について詳しく書いてあります。ご注意のほど!!>
94歳の映画監督は、どんな風に演出業務を行うんだろう。どんなに頑丈な人でも、50歳のときの100%とは違いそうなものだけど、画面のひとつひとつが緻密な、繊細な演出が感じられる作品でした。
しかし、日本の映画館で一般公開されなかった理由もわかるような気がしました…オチが明確につかない作品は敬遠されやすいように思います。陪審員という素人たちが白黒をつける裁判って、あいまいで影響を受けやすい「主観」の集まりなので、映画を見るものに納得感を与えるためには、白黒がつく証拠が見つかるようなエピソードが必要だけど、そういうのはない。ニコラス・ホルト演じる後ろ暗い陪審員2号が意見をひるがえした瞬間やその前後はなぜか全く描かれてない。彼の良心のせめぎあいに付き合って震えながら見ていた観客が、「え?」となる。で結局どうなるのか、最後の最後も、怖い顔のトニ・コレットで終わり。とってもオープン・エンディング。考えさせる映画には答えがない、納得感が得られにくいので、娯楽を求めて映画館に行く(映画マニアでなく)一般の人たち(友達と気軽に出かけるときの私も含む)には厳しいのかもしれません。
この作品、最初からニコラス・ホルトになって見ていたので辛くて苦しくて、どこまで追い詰められて終わるんだろうと、途中で何度も止めたりしながら見ました。あまり辛いのでハッピーエンディングを勝手に考えて、たとえば実は夫は妻を激しく殴打していて、そのために意識を失って倒れていた妻を…とか、車の状態から見て実は違う車であることが判明したとか、ニコラス・ホルトがちょっと楽になる結末を想像したりもしました。そういうことも、スコッと何もないまま終わり。…残るのは、罪の意識はたぶん消えないし(開き直ったとしても)、陪審員制度とトニ・コレット怖い(笑)という気持ちだけ。
ニコラス・ホルトとトニ・コレット(「アバウト・ア・ボーイ」では親子!)のキャスティングは理想的だし、刑事や他の陪審員たちも、それぞれの普段の生活がしっかり見えてくるような配置です。しかし、感想を書くにしても、結論とか締めとかを書きづらい映画ではありました。