見てて辛くなる、自分のことのように迫ってくる映画でした。ダイアン・クルーガー演じる主人公は、家族を愛し、真面目に暮らしている主婦なんだけど、昔はコカインをやったこともあった。夫はトルコからの移民。麻薬の密売で過去に摘発されたこともあるけど、今はすっぱり足を洗って真面目に暮らしてる。…彼らの真面目・不真面目のバランスが絶妙なので、見ている人のほとんどが共感しうる設定になっていると思います。
移民問題を、ターゲットである一般のドイツ人が、自分のこととして捉えることができるように作られた映画なわけです。だからあえて主人公は金髪で四角い顔のゲルマン系。トルコ人の家族が隣人なら見過ごせるかもしれないけど、たまたま彼らが自分の家族だったら?それでも見過ごせる?それでも攻撃する?
彼女の人生の中心にあるのは「愛」。だから夫と子どもを失わせたものたちを憎む。だから、破壊を試みたキャンピングカーに一羽の鳥の命を見てためらう。夫と子どものいない世界で、憎むものもいなくなったあとは、自分には何もないと認識して、最後の決断をする。
この「最後の決断」が、「キャンピングカーに帰ってきたテロリストもろとも」だったらこの映画は別の意味で批判されるだろうけど、最後は自分だけを持っていくことにしたから、悲しく美しいエピソードになったんですよね。あらゆる場面で、見る人の心理を丁寧に想定して、訴えかけつつ、誘導しつつ、うまく構成した巧みな作品だと思います。
- 発売日: 2018/11/02
- メディア: Prime Video