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ウォルター・サレス監督「アイム・スティル・ヒア」4063本目

この監督の監督作品は、「オン・ザ・ロード」、「モーターサイクル・ダイアリーズ」「セントラル・ステーション」を見た。プロデュースした「シティ・オブ・ゴッド」も。友達みんなに勧めたくなるような、明確な見どころはないし、すごく作品としての点が高いというのでもないんだけど、なんとなく好きなんですよね。この監督が描いている世界が好きなのかな。人と人の距離感とか。

今回はテーマが重いので、どういう心構えで見ればいいのか迷いましたが、とにかく見始めた、という感じ。でも、家族のつながりの強さがずっと感じられて、決して嫌な気持ちやつらい気持ちになる映画ではなかったです。妻・母役のフェルナンダ・トーレスは本当に素晴らしい。常に深刻なのに明るく、てきぱきとしているけど温かく、強いブラジルの女ってこんな風なのかな、とリスペクトします。アカデミー賞受賞も当然と思えます。

まず家族を守ること、夫を待ち続けること。長い年月のあとに真実が明らかになり始めたときも、しっかり立ち続けた。晩年の、ただそこに座っている姿を見ていたら、涙が止まらなくなってしまいました。何の涙なのか、自分でも説明はできないんだけど。

山場を作ろうとか、ことさらドラマチックな演出をしようという意図が感じられなくてよかった。軍事政権ひどいとか、元議員の夫が気の毒だとか、それもあるけど、その中でまっすぐ生きて家族を育て続けた母をドキュメンタリーみたいに追った映画のつくりがとてもよかったです。それを書き留めた息子もすばらしいし映画を作った人たちも。見てよかったです。

  • フェルナンダ・トーレス

ザック・クレッガー 監督「WEAPONS/ウェポンズ」4062本目

アカデミー賞が今朝早く発表されたので、助演女優賞を受賞したこの作品をさっそく見てみました。「謎の老婆」を演じたエイミー・マディガンが受賞だそうですが、映画中盤にしてまだ表れていないような? Itみたいなピエロが見えたような見えないような?

逃げれば安全なのに居残って死亡フラグの対象になりかけている教師ジャスティン、彼女と浮気してる警官ポール、警官が追っている窃盗未遂の不良ジェイムズ(教師の家の近くで見たな)、マーカス校長、一人だけ残ったアレックス少年…と、同じ時間軸を複数の視点で繰り返します。その中で徐々に見えてくる真相。

Itみたいなピエロは、ピエロじゃなくて赤毛の老婆でしたね。助演賞はItのピエロやジェイソンに続く新しいアイコンに対するものなのかなと思いました。続編があってもいいと思ったけど、無理か。

”藪の中”方式をとることによって、ジャスティンは浮気してない!と言い張り、映像でも男の方がつれない様子だったのに、後になってやっぱりやってたんじゃなん!となるとか。一人ひとりのカット終わりが「続く」っぽくて、他のエピソードの中で真実が判明するとか。コメディの要素があちこちにあって、残虐だけど重くなく、笑っていい雰囲気があります。なるほど、監督はコメディ出身とのこと。

いろいろ突っ込みどころはたくさんありますが…。防犯カメラは個人宅より公道にたくさん設置されてるので、家から走り出た子供たちが同じ場所に向かうところまで、ふつうに考えるとトレースできてるだろう、とか。まず警察だって残った子の家に行くだろう、とか。でも楽しませてくれたからいいか。

以下、蛇足です:

・冒頭のちょっと切なげできれいな楽曲、ジョージ・ハリスンかな?と思ったら当たり。ワーナーのサイトに「ビウェア・オブ・ダークネス」だと書いてありました。タイトルに含みがあるな。

・怖いときのマーカス校長、ロバート秋山かと思った

・校長室に初登場するときのグラディス、イザベル・ユペールかと思った

・子どもたちの走るポーズを見てると「キーーン」って効果音つけてしまう

リン・ラムジー監督「少年は危険な弓を射る」4061本目

「怪物の作り方」ってタイトルにしたい。抱きしめるのが遅すぎた。

残虐な場面を極力避けているので、何が起こったのかわかりづらい場面が多いですね。だから邦題はタイトル落ちみたいにわかりやすくする必要があったのかもしれません。でも原題の「We need to talk about Kevin」もいいなぁ。彼の行状を、ではなくて、一つ一つの出来事の積み重ねで、どうやって彼が形作られてしまったかを、ちゃんと話す必要があった、これからでもいいから話す必要がある、のかもしれません。

悪って世の中からつまはじきにされたり、家族からさいなまれたり、いろんなことで醸成されていくこともあると思います。もっと言うと、まったく悪いことをしていない人を悪人扱いすることで、世間的にその人が悪人になってしまうこともあります。悪い子扱いをされつづけて、こんな少年に育ってしまったケヴィンはものすごく素直な人だったのかも。

ティルダ・スウィントン若い。といっても当時すでに50歳くらいにはなってたのかな。今も年齢不詳で若々しいです。この人とデヴィッド・ボウイはもしかしたら、半分くらい宇宙のどこかの血が入っていて超人類なんじゃないだろうか。この作品では彼女は(つめたい母という欠点が与えられているとはいえ)さいなまれる方の役なんだけど、どうしても「デッド・ドント・ダイ」とかの、キーとなる異世界の人・感がぬぐえません。

ケヴィンは大きくなってエズラ・ミラーになってからは、目つきが本当の極悪のようで、なにかを秘めたような子ども時代からだいぶグレてしまった感じ。どうしてもっと早く手を打たなかったんだ、と言いたくなります。でも徹頭徹尾彼の味方だった父と妹は…。激しく憎む相手のことを、人は一番強く意識して、もしかしたら一番愛しているのかもしれません…。

橋本忍監督「幻の湖」4060本目

犬殺しはそれなりに重い犯罪だと思うけど、恨みに人生を焼き尽くされてしまうのはよくない、こうなってしまうよ。という映画なんだろうか。

脚本家が撮った映画といわれても、人間性が浮かび上がってくるような気がしないし、ストーリーがむちゃくちゃだし、荒唐無稽で…っていうと映画を専攻した学生の卒業制作みたいなんだけど、それにしては他の部分の完成度が高すぎます。

こういう荒唐無稽なストーリーは、シリアスに作ろうとすると難しいのかな。アニメだけど時や場所を超える共通点のある「千年女優」は素晴らしいと感じました。もっとテンポよく、壮大なフィクションをドライブする気概で作れば…なんて、素人が想像するような簡単なものだとも思えませんが。(しかも、やっぱりカルトムービーと呼ばれるだろうと思う)

Hikari監督「レンタル・ファミリー」4059本目

テーマはテレビドラマみたいだけど、話題になってるので見てきました。

じわっときたり、くすっと笑ったりする場面がいくつかあってよかったけど、全体的には、セリフが硬いところがあったり、日本の悪しき習慣からくる過剰反応(何としてもお受験に成功するためのレンタル父にしても偽の不倫相手にしても)がただ悪弊として平べったい描き方をされてたりするところに、愛とか人間味がいまひとつ足りない感じはありました。私も反発を感じるけど、もしかしたらあんな彼らにももう少しは、やむにやまれない事情や背景があったりすることもあるのかな、と。その辺が、ヨクワカラナイ日本人、というひとくくりになっているようで、映画全体の感動が冷笑で薄められているような気がします。

(Xでずっとフォローしている「レンタルなんもしない人」はレンタル・ファミリーの類似業種だと思うんだけど、依頼者の事情の深刻さにはいつも驚いています)

でもブレンダン・フレイザーの情緒あふれる表情や、柄本明や平岳大ののアクの強さ、ゴーマン・シャノン・真陽の演技の深さが、この映画を見る意義を大いに高めていると感じました。

血縁があろうがなかろうが、人と人の結びつきは時間と信頼によってはぐくまれるもので、逆に血縁だけが絆だと考えるほうがファンタジーなんじゃないかという気もしています。家族だから大切にする、のはいいと思うけど、その上にあぐらをかいては何も育たないし、他人でも長年大事にしあっていくうちにますます大事になっていくと思うので、思いと努力と時間を積み重ねていきたいものだと思います。

そういう意味で、”嘘から出た実”ってことで、偽ジャーナリストにはその筆名でハセガワキクオの伝記を本当に書いてほしいなぁと思ったのでした。

ルイ・マル監督「五月のミル」4058本目

これ、1989年の公開当時に劇場で岩波ホールかシネセゾンかどこかで見たんじゃないかな。「ゴーストバスターズ」くらいしか映画館では見なかった貧乏学生の私が、多分就職を意識して日経新聞を購読していた頃。日経の映画欄で毎回いい映画を紹介していて、確か星の数で評価してたんだけど、たまに満点の作品があって、そういうのは見に行くことにしてました。「バベットの晩餐」とかもそうやって見たかも。名作揃いで信頼を置いていました。

「五月のミル」は、当時それほど”わかった”とか”よかった”って思った記憶はないけど、今までに見たことのない不思議なフランスの田舎のろくでもない大人たちの世界が、ただ新鮮だったように思います。フランス版「お葬式」みたいな印象だったかも。

って書きながらなんだか「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」とか連想します。ミシェル・ピコリは思ってたほどおじいさんじゃなかった(このとき65歳)。ミュウミュウがおしゃれで素敵、”薄情な実の娘”キャラはイザベル・ユペールでも互換性がある。(cf.愛、アムール ほか)

それでも、今でも「五月革命」のことはまったくわからず、今はWikipediaがあってよかった(数年後には「ChatGPTが、」って書くかな)。「五月革命のときのブルジョア独身中年ミル氏の数日間」ってことだったんですね。いまさらだけど、じつに大人の映画だなぁ。初見の際に(フランスの大人たちは親戚筋だろうが誰だろうが、すぐに手を出すし、死者を大事にする気持ちはないのかしら)と思ったのは覚えてるけど、革命で右往左往するだけのブルジョアや、ブルジョアの出でありながら革命ごっこをする若者、そういったものも含めて人間って愚かだよね、とカラッと笑う映画なんだな、と感じます。意外と細部まで覚えてました。こういうコミカルで皮肉たっぷりの、フランスの群像劇って好きだな。あざ笑うというほどの冷たさがなくて。

こういう映画を気軽に見直せるのもVODのありがたみですね。今日もありがとう、U-NEXT。(TV上のアプリが調子悪くなって今も映らないけど、コンテンツがよすぎるのでPCつなげてでも見ます)

タイ・ウェスト監督「MaXXXineマキシーン」4057本目

X、パール、マキシーンときて、ミア・ゴスの怖さがここで極まる!と予想(期待?)して、体調を整えて時間がゆっくり取れる今、やっと見てみました。

が、マキシーンわりと普通。ちょっとワルっぽいくらいで、この程度ならタランティーノの映画なら冒頭でやられてしまいそうなキャラです。あのどす黒さはどこへ行ったんだろう。逃げ惑うマキシーンじゃなくて、逃げるふりをして極悪のかぎりをつくす彼女が見たい…と思っていたら、結末は…そういうことなんですね。でも、悪魔祓い的なものはこのシリーズにはあまり持ち込まないでほしかったなぁ、特に加害者サイドには。

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの音楽はきらびやかなハリウッドの表と裏、にふさわしい。ベティ・デイヴィスの瞳も、なつメロだな~。

一つの映画として破綻はないんだけど、今まで盛り上げてきた期待とちがう、という気持ちはぬぐえないのでした。頭のどこかで、ミア・ゴス主演のもっと怖い映画がこの先いつかできるといいなと思っている…。

  • ミア・ゴス

 




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