先日、数年ぶりにブックセンタークエストに入った話をブログに書いた。
【しばらくぶりの ブックセンタークエスト小倉本店】 - 農家の嫁が働きながらこっそりつぶやく独り言
あれから少しずつ本を読み進めている。
疲れてぼんやりスマホの画面を眺めて過ごすことが多かったけれど、ここ最近手を伸ばすのは、スマホではなく文庫本。
そういえば、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という本が話題になっていたけれど、その本の帯は「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」だった。
読みたいと思っていながら、クエストでは見落としてしまったらしい。
でも、スマホばかり見てしまう私から、本を手に取る私に変化しつつあることが、なんだか嬉しい。
『店長がバカすぎて』 早見 和真 著 ハルキ書店。

クエストで出会い、最初の一文を読んですぐ、購入を決めた。
絶対作者は女性と思ったけれど、よく見たら男性だった。
こういう私も「バカ」だよな。
主人公は、吉祥寺にある「武蔵野書店」で働く契約社員、谷原京子。
店長の山本猛という名前ばかり勇ましい、「非」敏腕店長の下、文芸書の担当として働いている。
超多忙に働く彼女の身に起こる数々の出来事が時間の流れに沿って1話ずつ収められている。
第一話:店長がバカすぎて
第二話:小説家がバカすぎて
第三話:弊社の社長がバカすぎて
第四話:営業がバカすぎて
第五話:神様がバカすぎて
最終話:結局、私がバカすぎて
店長をはじめ、彼女の周りを囲む仲間たちとの真面目だからこそ面白いやりとりとともに、物語はテンポよく軽快に進んでいく。
題名に「バカ」なんてついていること自体どうなのかと思うし、作中で使われている言葉も決して品の良い言葉ばかりではないけれど、腹の中で毒づきまくり、店長にキレまくっている彼女に猛烈に共感できるということは、私の周りも、いわゆる「バカ」ばかりなんだろうなと気付かされる。
「バカすぎる」登場人物のそれぞれが、私の日常にいる○○さんみたいだなってあてはまる怖さを感じるけれど、主人公谷原京子の彼らの言動に対する心の叫びが痛快で、私の気持ちを代弁してくれているようで、読んでいてい気持ちが良い。
それでいながら、途中途中、ぐっと心をつかまれるようなセリフが登場する。
そして、そのセリフを、あの、バカな店長が突拍子もなく発したりする。
この店長は、本当はすべてお見通しなのでは?
本当は、あのバカさ加減は演技なのではないのか?
と思わせる一方で、話の最後ではしっかり店長のダメさ加減が露呈されたりする。
だから面白い。
そして、「働く」ということについていろいろと考えさせられる。
お客からのクレームは日常茶飯事だし、超多忙なわりに薄給、誰よりも本を愛し、仕事へのプライドを持ちながらも契約社員である谷原京子のセリフ。
「いいんですよ。自分で望んで飛び込んできたんですから。べつに私は賃金が安かろうが、他の業界の人から笑われていようがかまいません。でも、せめてそのやりがいだけは感じさせていてくださいよ。それまで奪われちゃったら、私たちは何を目的に働いたらいいかわからないじゃないですか!」
このセリフに猛烈に共感する私。
それからもう一つ。
弊社の社長がバカすぎたおかげで思いがけず意気投合することになったライバル書店「リバティ書店」のカリスマ書店員、佐々木陽子のセリフ。
「結局、バッグに退職届を忍ばせている時点で、私たちは辞められないんだ。年月を経るたびに重たいものを背負わせれていくし、ままならないことも増えていく。どんどん上の人間がバカにみえてくるし、バタバタしている自分がアホらしくなっていく。でもね、そういう状況に追い込まれれば追い込まれるほど、本が愛おしくなっていくんだよね。というか、いまの自分を逃がしてくれる救いの物語が、タイミングを見計らっていたかのように現れるんだ。あれって本当に不思議だなぁ。」
本庁に比べ市民に近い場所であるセンターは、いろんな人がやってきて、いろんなことを持ち込んでくれる。良いこともそうでないことも。
正規職員なみに、いや、それ以上に仕事を捌いていると自負しているけれど、所詮会計年度職員で、職員ならばつく手当も会計年度職員はただの「振り替え」で済まされてしまう。
まちづくりのためにいろんな人と知り合いいろんな団体と繋がればつながるほど多忙になる。それらをやりがいと感じているうちはいいけれど、上から一方的に言ってくるばかりで、一向に自分たちでやろうとしない身内の人たちにうんざりしながらもそれでも従順な態度でしかいられない自分に嫌気がさしたりもする。
でも、本当に不思議なことに、見計らったようなタイミングで救いの物語が現れる。
今年は次々にやってきているんだなぁ。
今目の前にある物語が、救いなのかあるいは絶望なのかはわからないけれど、その物語に積極的に巻き込まれ、物語を紡いでいこうとするのだから、つまりは「結局、私がバカすぎ」るということを自覚するのだ。

本が好きな谷原京子。
まちづくりに夢中な私。
どんな職業についても、楽しいことばかりではない。
つらいことやうまく行かないときに逃げ出さずに乗り越えていけるのは、理解し合える仲間がいるおかげ、そして最後は、自分の仕事に対する誇り、プライドだったりするのだろうな。
笑って、ときにしんみりしながら、結局今の仕事が好きなんだと気づかせてくれる、そんな一冊。
働いて忙しい!というときにこそ、ぜひ、どうぞ。