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2025年の本

 ここ最近、読めたけどブログが書ききれなかったという年が多かったですが、今年は4月以降に一気に仕事が忙しくなった影響で、読む速度も大幅に鈍化。そして、当然のようにブログも書けなくなったので、後半は章ごとのまとめをTwitterにあげて、それをまとめてブログ記事にするという苦肉の策で何とかという感じです。

 

 とりあえずは、小説以外の本を読んだ順で6冊紹介し、その後に小説を3冊紹介します。そしてさらに読んだけどブログで紹介できなかった本を紹介します。

 新書に関しては別ブログにまとめてありますので、以下をご覧ください。今年の新書は歴史ものが豊作でした。

 

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 基本的には比較政治学の視点からの韓国政治についての教科書的な本なのですが、本書の大きな特徴は教科書的な本でありながら可能な限りタイムリーな話題を取り入れている点です。

 韓国の政治体制を解説するだけではなく、同時に現在の韓国政治と韓国社会の姿も描き出そうとしてます。また、文章の中でもいわゆる流行語を数多くとり入れています。

 政治だけではなく、韓国の社会問題にも目を配っており、昨年末の尹錫悦大統領の「非常戒厳」と弾劾や逮捕をめぐる問題についても、本書を読むことで政治制度に起因する部分と、社会問題に起因する部分が見えてくるのではないかと思います。

 韓国政治の混乱を語る際に、どうしても韓国の「国民性」や「地域対立」といったところに目が行きがちですが、本書を読むことでその背景にある制度的要因が見えてくるでしょう。

 

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 ここ最近の中国経済の低迷や、アセモグルらのノーベル経済学賞受賞もあって、「中国は収奪的国家だからやはりダメなのだ」という論調が強まっていますが、本書はそういったやや単純な見方に対するワクチンにもなる1冊です。

 最後の方の章はやや楽観的すぎると感じる面もありますし、現在の習近平政権の政策に対する批判的な視点も控えられている面はあります(この点を補ってくれるのが巻末に置かれた監訳者の梶谷懐の解説)。

 それでも、中国における中央政府と地方政府の行動様式の違い、一人っ子政策インパクト、中国の金融市場が抱える問題点など、非常に興味深い点が論じられており、改革開放以来の中国経済を理解するのに格好の本です。

 特に、2000年から18年にかけて中国の経済規模は4倍になったが、2000年に中国株の多様なポートフィリオに一ドルを投資した人が18年を経たインフレ調整後に保有していたのはその1ドルだけという機能不全を起こしている株式市場や、北京と上海の住民はボストンやサンフランシスコの1/5の所得にもかかわらずボストンやサンフランシスコと変わらない費用を住宅に費やしている不動産市場の背景にある中国の金融市場を分析した部分は必読かと。

 

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 日本国憲法の制定過程については、「押し付けか否か」という議論がずっとあり、近年でも「9条幣原発案説」をめぐる議論があります(笠原十九司が幣原発案説を主張しているものの、多くの研究者がこれを否定する状況となっています)。

 この「9条幣原発案説」の背景には、現在の憲法が押し付けでなく日本人の望んだものだったということを示したい欲望のようなものがあると思うのですが、実は憲法については当時9条と並んで、あるいはそれ以上に重要だった問題があります。それが天皇の地位、「国体」の問題です。

 通説では、昭和天皇象徴天皇制を受け入れたる「聖断」を下したということになっていますがで、本書はその「聖断」はフィクションであり、昭和天皇憲法の規定に対してさまざまな抵抗をしていたということを明らかにしています。

 新たな史料を駆使ししながら、通説を覆していく筆致はミステリー小説を読むような感じで非常に面白く、また、そこで明らかになった動きは、占領史、戦後史の書き換えを迫るものです。刺激的、かつ重要な本です。

 

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 副題は「統計分析が解明する移民・エスニックマイノリティに対する差別と排外主義」。本書は、この副題が表している通りの内容になります。

 しかし、「差別」と「統計分析」というのは基本的には相性の悪いものです。人々の平均身長を知りたいならば測ればいいわけですが、社会全体の差別の強さのようなものを知りたいと考えた時に「何を測ればいいのか?」というのは難しい問題です。

 人々の差別心を測るには、何らかの形でその考えを表に引き出す必要があるわけですが、本書は「差別を測る」ためにさまざまな実証を積み重ねてきた差別研究のレビュー本になります。

 とり上げられている差別は基本的に移民や人種・エスニックマイノリティに対する差別で、差別とは何か? という問題から始まり、具体的な差別の実態、それが与える悪影響、さらには差別をもたらす排外主義についての分析を紹介しています。

 とにかく分厚い研究の蓄積が紹介されており、その中には意外なものもありますし、「そういう方法もあるのか」と唸らされるものもあります。

 差別の問題の根深さと、それを明らかにしようとする社会科学の手法の進化の両方を知ることが出来る本です。

 

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 アメリカといえば競争の国で、それがすぐれた製品やサービスを生み出していると考えられていますが、近年についてはそうでもないよ、ということを主張した本。

 著者は「トマ」という名前からもわかるようにフランス人で、1999年に経済学の博士号をとるためにアメリカに渡りました。そのとき、ノートパソコン、ネットのプロバイダー、航空券、ほとんどものがフランスよりも安かったといいます。

 ところが、2017年になると、ブロードバンドの料金はドイツ35.71ドル、フランス38.10ドルに対して、アメリカは66.17ドルになり(7p表Ⅰ.Ⅰ参照)、航空会社はヨーロッパでは乗客1人あたり7.84ドルの利益を上げたのに対して、北アメリカでは22.40ドルの利益を上げるようになりました(8p)。

 21世紀の最初の20年間で、アメリカは物価が高く、消費者がカモられる国に変貌してしまったのです。

 本書は、さまざまな分析を通して、その実態とロビー活動などによって健全な競争が阻害されている状況を明らかにしてます。

 

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 なんといってもトランプが代表例ですが、近年の政治では政治経験がほとんどない、あるいはまったくない人物が大統領などの指導者の地位につくケースが増えています。

 また、議院内閣制の国においても、新興政党が勢力を伸ばして無視しがたい勢力になっている国も増えています(ドイツのAfDなど)。

 こうした状況を本書では「アウトサイダー・ポリティクス」と名付け、各国ごとの背景や現状を分析しています。さまざまな国の事例が取り上げられており、特にラテンアメリカ、フィリピン、日本のれいわ新選組といった欧米以外の事例が取り上げられているのが大きな特徴だと思います。

 相変わらず「ポピュリズム」は政治の世界のバズワードですし、さまざまな形で論じられていますが、どうしても分析対象を低く見る形になったしまいやすいです。

 その点、本書では「アウトサイダー」という言葉を使うことで、よりフラットな形で現代の政治現象を捉えることができているのではないかと思いました。

 

 

 つづいて小説です。

 

 

 

 河出書房新社の「世界文学全集」シリーズに入っていた鴻巣友季子訳のものが新潮文庫から出たので読んでみました。

 ウルフは前に『ダロウェイ夫人』(角川文庫、 富田彬訳)を読んだことがあったのですが、この『灯台へ』の方がぐっと面白く感じました。この『灯台へ』は鴻巣友季子の訳によって、かなり現役感を取り戻していると思います。

 本書の魅力の大きなものとして、主人公のラムジー夫人の造形、描き方があげられると思います。決して完璧な人間性を備えているというわけではありませんが、持って生まれた人間の持つストレートな善意のようなものが溢れています。

 そして、第2部で一気に時間を経過させ、第3部でラムジー夫人がいなくなった同じ場所を描く。この構成も見事です。

 

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 本書は19世紀のイギリスを舞台に借りた歴史改変ものであり、「銀工術」と呼ばれる特殊な力が支配する世界を描いた作品でもあります。

 銀工術とは、銀の棒の表面にある言葉を、その裏に別の言語でその翻訳となる言葉を刻み、その意味のズレによって不思議な力を生み出すというものです。本書は言葉や翻訳を巡る小説にもなっています。

 この銀工術のためには複数の言語に通じている人間が必要で、主人公のロビンもそのために中国から連れてこられた人間になります。

 基本的には白人男性の入学しか認めていないオックスフォード大学ですが、銀工術を扱う王立翻訳研究所だけは、有色人種や女性の入学も認められており、ロビンはそこでインドから来たラミー、白人女性のレティ、ハイチから来た女性のヴィクトワールと出会い、友情を深めていくことになります。

 この小説はほろ苦い青春小説としても読めますが、何と言っても架空の世界の構築の仕方が素晴らしいです。また、本作が中国の成都で行われたワールドコンで賞から排除されたということは、現在の中国の状況についてもいろいろと考えさせられます。

 

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 この小説は著者のベン・ラーナーとその両親を題材にした私小説的な部分があり、自らの家族の歴史を振り返るような内容になっています。

 ただし、私小説のようなスタイルを取りながら、現在のアメリカ社会の分断の起源を浮き上がらせるようになっているのがこの小説の特徴であり、まさにトランプ時代の小説とも言えます。

 まず、本書を通読して印象に残るのは主人公のアダムが高校時代に取り組んでいた競技ディベートの話でしょう。

 解説で白岩英樹も指摘していますが、ものすごいスピードで主張をたたみかける競技ディベートの世界は、対話というよりも一方的な言いっぱなしであり、現在にいたるアメリカの分断を助長したものともとれます。

 ただし、個人的にはそれ以上に印象に残ったのがこの小説の冒頭とラストのシーンです。

 冒頭のシーンでは、ある夜、アダムが湖畔にある彼女の家に入っていくのですが、2階に上がってバスルームに入ったところで、そこが彼女の家ではないことに気づきます。

 一方、ラストのシーンでは、アダムが娘を連れてICE(アメリカ合衆国移民関税執行局)のオフィスに抗議に行き、抗議の混乱と子どもの不安が同時に描かれます。

 主人公はそこで戸惑い、立ち尽くすわけですが、この描写が抜群にうまいです。明庭社という新しい出版社から出た翻訳小説ですが、これはお薦めできます。

 

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 以下は、読んだけど新書で紹介を書けなかった本です。

 

 

 

 戦前の日本のデモクラシー史を高く評価し、五・一五事件のあとも二・二六事件までは政党内閣復活の可能性があったと見ているのが1つの特徴ですね。

 

 

 

 

 今年読んで非常に面白かった新書、高杉洋平帝国陸軍』(中公新書)では、第1次世界大戦後に陸軍が世間から批判され、一種の被害者意識を持っていたと書かれていましたが、こうした認識についての先駆的研究が本書になります。

 「日露戦争から変われなかった陸軍」という印象を持つ人も多いと思いますが、本書を読むとそうではないことがわかると思います。

 

 

 

 第20回樫山純三賞、第29回司馬遼太郎賞、第25回大佛次郎論壇賞と各賞を受賞している話題の書。

 「陸軍や右翼(+政友会)が悪玉で、幣原喜重郎を代表とする外務省は善玉」的なイメージを覆す本で、外務官僚たちが過去の路線を継承していく中で大東亜共栄圏まで行き着いてしまった姿が描かれています。

 

 

 

 本書は、今思えば章ごとに少しずつでもまとめを書いておくんだった…。

 地方分権の中で教育に関する権限も分権化され、文部科学省の「教育の論理」に対して改革派の首長などが「市場の論理」を掲げて教育改革を行おうとしたわけですが、それはどのように行われ、結局どうなったのかということを論じた本。

 地方分権全体でもそうですが、教育の場合は特に教員不足という問題を通して再び集権化へと動きそうですね。

 

 

 




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