* 今回もながーいブログになりました。
(長崎篇)と同じく(大阪篇)も 要約してみました。
最後の一文を読み終えたとき・・・・
過去と今を絡み併せながらの文章に引き込まれていました。

* 大阪編
大阪駅に停車した列車のドアーが 開くと 先を争うように、ホームに飛び降りる二人
早朝4時のホーム。
徳治が
「・・・坊ちゃん ほら迎えの人」
「うん。・・・誰やろ?」
戸惑う喜久雄を置いて、徳次が駆け寄ります。
「喜久雄君でっか?」
「いや 坊ちゃんは あっち」
男は「わいは半次郎んとこの番頭やわい。」
番頭さんに 喜久雄は、マツに言われていたように、 丁寧に挨拶をします。
「・・・お初にお目にかかります。立花喜久雄と申します。そして、こっちが兄弟分の
早川徳次です。」
ほう 立派なあいさつでんなぁ。おっちゃんは、多野源吉。まぁ源さんと呼んでくれたら いいね。
なんか 困ったことがあったら、いつでもおっちゃんに 言うてや。
喜久雄と徳次は、なんや ホットしました。
翌日の半次郎の家・・・
寝ぼけまなこの二人
なんとも とぼけたことですが、
やっと自分の居場所がわかった様です。
そんな時 「三味線の音」
「もう昼近いで、ぼちぼち起きたらどや」と手代の源吉
女将さんのけいこが終わるさかい 顔あろうたら、あいさつに行こか。
女将さんが喜久雄たちに気づき、
「今まで、寝とったん?」
ほんならおなか減っとるやろ?と
喜久雄は、マツ仕込みの挨拶をすると
「こちらこそ でも うち何も聞いてへんねん。まさか、こんな大きい子の親代わり
なんかでけへんし」と とにかくお昼にしょうか。
歓迎されているような、早くも厄介払いされているような、なんとも半端なお目見得の
言葉です。
元々 人懐っこい徳次ですが、なぜかいつも腹を空かせておりまして、自分に食事を
与えてくれる人にたいしては、その懐きかたが尋常ではありません。
その日の
俊介は、義太夫のおけいこに、養育係もしている源吉が付き添いです。
義太夫に興味を示したのは喜久雄。
「義太夫知ってんの?」と幸子(女将さん)
「母が文楽好きでしたけん~」 喜久雄が応えると
「興味あるんやったら お昼を済ませたら 行ってみたらええね」
「よかとですか?」
思わず そんな言葉が口をついて出てくるあたり やはり喜久雄も義太夫が好きなよう
です。
お勢さん(料理を作ってくれる人)に 教えてもらった 数寄屋門の切戸をくぐると
稽古をつけてもらっている俊介。
大汗をかく俊介と机をパンパン打ち鳴らしている古希を迎えている義太夫のおっしょうさん。
その様子を縁側の雪見障子から見ていた 喜久雄と徳次。
「ちょっと休憩にしようか。」
「ただ眺めていたいただけの二人までも 一息・・・」
「あぁ あんたらが 九州から来てる俊介くんのお仲間さんいうのは、さっき幸子さん
から連絡あったわ」・・・
「そんな寒いとこらにおらんと上がっておいで・・・」と
「こいつら友達やないわ」と一応俊介も抗議をします。
遠慮のない徳次がまず座敷に上がり その後 喜久雄も・・・。
「あんたら ちょっとお聞き。歌舞伎役者は義太夫と踊りを知ってなければ一人前は
おろか 半人前にもなれません~~」
喜久雄は、 なるほどそうかと 妙に感心顔。
踊りのけいこでは
踊りは骨で覚える
「ほんま 何遍言わすんや! これもできんで役者になんかなれるかいな!」と
半二郎の平手が喜久雄の頬に飛びます。
その横では、徳次が何食わぬ顔でアメ玉を しゃぶっています。
徳次、逃げるが勝ちを一度経験すれば 人間辛抱が足らなくなってしまいます。
実際 徳次もその例に漏れず、この頃 半二郎邸での手代の修行にも飽きて、師匠である源吉の目を盗んでは、弁天と遊び歩いている始末。
徳次の話によれば
弁天は天王寺村に敗戦直後、満洲から流れてきた芸人夫婦の子として生まれたらしいのですが、乳飲み子の頃に母親が病死 すぐに父親もどこかへ出奔し 残された弁天を
不憫に思った女漫才師が育て上げたらしいのです。
その弁天と一緒に 手配師から北海道での仕事の説明を受け~
早速 喜久雄に事の次第を報告しようとするのですが~
当の喜久雄は、能の真似をして、腰を安定させるために 畳を擦って歩く退屈な稽古を
毎晩のことながら この夜もやっていました。
結局 1時間ほど待たされて、やっと摺り足が終わると、こんどは三味線を弾こうとするので
「坊ちゃん ちょっと待ったら、ここで寝てしまうわ」と徳次
「なんやねん、さっきからそこで」
早速 三味線の弦をつま弾く喜久雄に
「坊ちゃん、けいこすなと言わんけど、ちょっとやりすぎやで。」と
たしなめる徳次
「そやかて ぜんぜん辛うないねん。」と喜久治も引きません。
「それより なんやねん」
「あ そや、あんな俺な北海道行くね」
仕事を紹介してくれる人があって
俺もここらで いっちょ勝負に出たろ思うて・・・
いよいよ 坊ちゃんとも離れ 離れや
北海道で金作って 将来事業起こして 成功した暁には
立派な坊ちゃんのご贔屓さんになって、楽屋にペルシャ絨毯を買うたるし
もっと成功したら専用の劇場を作ったるから それまで坊ちゃんは地道に芸道を励んどいてえな」
急な話に喜久雄は、
「北海道で成功って・・・。誰にダマされてるん?」
「心配せんかて 大丈夫やて」
弁天という連れがおんねん そいつと一緒に まぁ1年も頑張れば、まとまったお金も
できるから・・・
とにかく おれがいつまでも ここにいてもしゃーないやろう」
ずーっと そばで面倒を見るのもええけど 大きなことで、坊ちゃんを応援でけへんか
な と思うようになってん」
大阪に来てからは、学校やけいこなどで
喜久雄は、俊介と過ごす時間の方が多く 気がつけば徳次を放っておいたも同然でした。
「・・・俺は坊ちゃんからの恩は一生忘れんばい。」
こうやって字が書けるのも 計算ができるのも 全部 教えてくれた坊ちゃんのおかげやけん」
立花組の組員の名前を全部漢字で書けたときの満足そうな徳次の笑みを思い出します。
「徳ちゃん」
喜久雄は、それだけ言うのがやっと
引き留めたところで ここに徳次の居場所がないことも分かっています。
「心配いらんで なんか困ったことがあったら いつでもこの徳次が飛んでくるけん」
徳次の笑顔を久しぶりに喜久雄は、見たようです。
大見得を切って
徳次と弁天は頑張っていたのだといえば
健気にと思うのですが・・・
実際は意気揚々と向かった北海道から 大阪へ舞い戻ったのは なんと出発から
一ヶ月後
というのも「北海道に楽な仕事がある」とそそのかされ
飛びついて行ったのですが、悪徳手配師に話が違うと抗議したところで詮無き事
徳次と弁天は雪の北海道の原野を追ってから逃れつつ~
途中事情を知った農姉から握りメシを持たせてもらったり トラックの荷台に乗せて
もらったり はたまた見ず知らずのひとから汽車賃を貸してもらったり・・・。
連絡船の切符を買ってくれた人もあったようです。
北海道から 大阪まで 見ず知らずの人たちの恩義に頼りながら どうにか
大阪までたどり着いたのです。
転んでもただで起きない徳次は
大阪へ帰って来てから 釜ヶ崎の労働者の福祉向上を目的とした西成労働福祉センター
へ行き
北海道で もらい損ねた給料を代わりに請求しに 弁天と共に乗り込んだその日、
この福祉センターの映画を撮影中 だったのです。
この時 ドキュメンタリー映画を撮っていたのは、偶然にも「三友」の映画部出身の
清田誠監督 社会派の名作を次々と送り出していました。
徳次と弁天は 悪徳支配師にダマされて北海道へ売られたのも同然、死ぬ思いで大阪
まで戻ってきた話を 唾を飛ばし話始めます。
結果的に二人の陳情はどうにかなるものではなく、
大見得をきった徳次は、おめおめと半二郎宅に帰るにもいかず、弁天のところで
そのまま~
清田監督が撮ったドキュメンタリーがテレビで放映されると、反響を呼び公開討論会
もあり、徳次は、呼ばれるのですが 舞台にあげられた徳次は、インテリの話には
チンプンカンプン 変わりに北海道での話をすると、会場をどっと沸かせます。
ちなみに徳次は転んでもただは起きない男 本領発揮 ゴロゴロしていた徳次の元へ
清田監督から直々に「次 撮る映画の主役をやってみたいか」という誘い。
「この俺が主役でっか?」
もちろん 徳次に遠慮などありません。
立花組の新年会に出ていたせいか監督も驚くほどの芝居の勘の良さ。
この映画は、全国七か所で上映され なんとその年のキネマ旬報文化映画ベストテンの
六位に入ったのです。
その後、順調に徳次の俳優への道が拓けるということには ならなかったのですが、
そのウワサは半二郎の元で稽古に励んでいた喜久雄の耳にも入り・・・
喜久雄が探しに行くと、長屋の路地裏で 子供たちを相手にウルトラマンごっこで
遊んでいる姿が・・・
「徳ちゃん」
「なんで こんなところで ウルトラマンやねん」
家のみんなも心配しているから とりあえず 連れて帰る。
事情を聞いた半二郎は
「芸人横丁で ぶらぶらしていても ロクなことにならん
あとで世話をかけられるより 先に世話を焼いたほうがマシや」と。
早速「三友」に口を利いてくれ「キネマ旬報」で六位に入った映画の主役ということで
晴れて 大部屋俳優の一人として正式に雇ってもらったのです。
花井半二郎交通事故にあった
このあたりから おおまかに 映画とほぼほぼ おんなじです。
この時 すでに新生丹波屋を離れた喜久雄の世話を、
それこそ体裁も気にせず やり通したのは、彰子です。
千五郎(父親)の逆鱗に触れた後・・・
焦り うろたえ 自分を見失い 次の一手を考えていた喜久雄の元へやってきたのは
徳次。
もちろん ずっと喜久雄のそばに いたとはいえ まさか喜久雄ともあろう男が
女の気持ちを利用するなど そんな卑怯な手を使って立身しようと考えているとは
つゆ知らず 開き直って 本人から告白されてしまうと、
悔しいやら 情けないやらで、
「ここで こうせんかったら 俺一生後悔するわ」と呟き
ふてくされている喜久雄につかみかかり、
役者なんかやめてしまえ と 顔や身体を容赦なく殴りつけたのです。
「見損のうたわ! 俺の知っている坊ちゃんはそんな男やないわ!」
涙ながらに殴りつけにくる徳次の拳を 顔や体ではなく喜久雄は、心で受け止めたのです。
徳次と 大げんかの後 顔をはらした喜久雄に全て打ち明けられたとき、
「中途半端なことはしないでよ!」
「だますんだったら 最後の最後まで だましてよ!」
彰子はそう叫んだのです。
喜久雄が、自宅の近所で借りているスタジオで昔の映像を見ていて「桜門の場」を
最後まで見終わり、喜久雄が、顔を上げると鏡に徳次が映っています。
普段 この手のビデオを最後まで付き合って見ることのない徳次ですが、喜久雄が、
珍しがれば~
「坊ちゃん ちょっと話 あんねん」と
神妙な顔 どうやらそのために待っていたらしい。
「何 改まって」
徳次の方に向きを変えると
「坊ちゃん 研究熱心さに ケチつけるつもりはないけどな、昨日まで舞台に立っとった いうのに今日はもう昔のビデオ見て、次の芝居のけいこ て ちょっとやりすぎ
やで。一日くらい 体 休ませんと いつまでも二十代の体ちゃうねんから」
「・・・わざわざ 待ってたの そのため?」と首を傾げれば
「あ、せや、あんなぁ 俺 大陸へ行くわ。中国。
特にあてあるわけちゃうねん けどな、なんや最近、妙に体がムズムズしてしょうが
ないねん。
中国大陸で何か商売を始めて おお金持ちになった暁には
誰よりも立派な坊ちゃんのご贔屓さんになって
楽屋にペルシャ絨毯買うたるし
もっと成功したら 坊ちゃん専用の劇場も作って・・・
あれ? これどっかで?」と首をひねる徳次に
「そう言って昔 弁天と二人で北海道に行ったんだよ」と
呆れる喜久雄。
しかし、すぐ、徳次がこうやって口にするということは 散々考えた末のことであり
強い覚悟があることも知っています。
「ちょ ちょっと待ち 徳ちゃん。
大陸で商売って そんなに急に・・・」
「大丈夫やて 何とかなるわ 坊ちゃんのお陰で小銭も貯まってるしな」
「そんなん、この俺の貯金かて知れたもんやのに。」
いやいや 冗談じゃすまされないって、いつから考えてたんだよ、そんなこと」
さらに 慌てる喜久雄に
「俺と坊ちゃんの関係は変わらんたい」ととつぜん懐かしい徳次の長崎弁
「俺みたいな根なし草が こうやって 一つ所に落着いておられたんも、ぜんぶ
坊ちゃんのお陰や。
坊ちゃんのお陰で 普通の人が見られんような景色を どんだけ見せてもろうたか、
この俺が歌舞伎座の舞台で照明を浴びて トンボ切ってるなんて俺の子供のころを
知っている誰が想像できるかいな。
この徳次、もう一勝負したなってん。根なし草の習性や。
俺や母ちゃん捨てて大陸へ渡ったまま音沙汰なしの親父の血やろな。」
何か言葉を返さなければと分かっておりながら どう言えば気持ちが伝わるか思いあぐね乍ら
「そんな急に言われても・・・」
「俺もさすがに明日出ていくとは、言わへんわ。
次の舞台まで きっちり勤めさせてもらうつもりでおる。」
そう言うと ひょいと立ち上がる徳次。
さて
それから
鳴り物入りで幕があがった。
喜久雄の背後に しゃがみ込み 後見しておりますのが黒衣の徳次。
慣れた手つきで 錦祥女の乱れた裾を直しておりました。
「徳ちゃん」
ふいに落ちてきた喜久雄の声に
「なんや?」
「俺がいくら引き止めても行くんだろう?」
「せやな、行くとおもうわ」
「この世界に入って、ずーっと徳ちゃんだけが味方やったわ」
「わかってるて もう幕開くで 出発の日は綾乃や市駒も呼んで盛大に見送るから」
「いらんわ そんなん 一番苦手やから」
「その代わり 約束してえな」
「坊ちゃんには、芸の道を極めてほしい、日本一の女形になってほしい」
そう言って、徳次がポンと喜久雄の肩を叩き、
・・・ほんで、俺はこれから大陸でもう一勝負や。
もし 坊ちゃんが日本一の女形になれたら 大きな河?長江か?
俺がその長江に白粉でも流して 真っ白にしたるわ
徳治の言葉に思わず 噴出した喜久雄。
「だったら、こっちからも約束がある 絶対に河を赤く染めるな」
そう 真顔で伝えた喜久雄。
徳次が 自身の言葉通り
誰にも知られぬ様に姿を消したのは、その月の舞台が無事に、千秋楽を迎えた翌日の
ことでした。
「そろそろかい?」
いつもは きっかり出番の15分前に喜久雄にかかる声が今日は5分ほど早く
「ちょっとだけ彰子と二人きりにしてほしい」と喜久雄
「どうしました」
「いや 何でもねんだ、ただ、ここしばらく、おまえとちゃんと話してなかったなーと
思ってさ」と喜久雄
驚いた彰子がその目を覗き込んでみるといつもより正気なくらい。
「どうしたんですよ?」
「いや だからなんでもないんだけど、いつも すまねぇなと思ってさ」
いつも かけぬ言葉を彰子にかけ
「しっかり」と見送られれば・・・
今日 初めてこの半二郎を見に来てくださる客もいるのだと、
その客の前で生ぬるい芸などできるものかと、この50年舞台に上がるたびに
言い聞かせてきた言葉が胸にせり上がります。
ちょうど その頃
三友本社に文化庁から喜久雄の重要無形文化財保持者認定の通知がありました。
時間を確かめれば 歌舞伎座では
「阿古屋」の舞台が開く時間。
その後
開演5分前を知らせるブザーが鳴り
そのドアーから綾乃の姿が映ったのはその時
「綾乃!」
誰かを探して辺りを見回しています。
「おばちゃん 徳ちゃん見てへん?」
「徳ちゃんて、あの徳ちゃん?」と驚けば
「・・・さっき これがバイク便で届いて慌ててきたんや」
差し出されたのは本日分のチケットで、クリップで留められたメモには
「お嬢へ 天狗より」と書かれてあります。
とりあえず座席へ、指定された席とその横は、空席
とちりの席と呼ばれる一番見やすい席です。
大陸へ渡って一旗あげると、徳治が突然喜久雄の元を去ったのは、からこれ20年前の
こと~~
あとから思い返せば 大学受験を目指して春江の家から夜間塾に通っていた綾乃を、
夜道は危ないからと 毎日のように迎えに行っていた徳次は、綾乃が無事に大学に
入学して 楽しげに学生生活を送る その姿を確かめてから姿を消したのが分かります。
そして その後一切、連絡がないのです。
その徳次が突然に綾乃に チケットを~
不自然なれど 徳次らしくもあります。
祇園の市駒と喜久雄との間に
産まれた女の子が綾乃です。
やっと渋滞をぬけた竹野の車が歌舞伎座の地下の駐車場へ
部下と電話中だった 竹野はふと気が付き
「明日は三代目の人間国宝の緊急記者会見になるかもしれないから~~
先程の件はどうされますか? 断るわけにはいかんだろう、
ご紹介したい方がいらっしやるそうで~~
紹介したい人って誰だ。
「白河集団公司 という会社の社長ということでした。
「中国の会社か?」 「何の会社だ?」
「簡単に言えば 中国版のAmazonみたいな会社で 中国国内では業界第三位なので
相当大きな会社です。
本社はシンガポールになっています。
パソコンで調べながらの報告らしいです。
喜久雄の舞台は続いております。
羽田空港から都心へ続く渋滞は未だ緩和することなく 首都高速に赤いテールランプが
並んでいます。
「社長 日本は何年ぶりですか?」
助手席から尋ねる若い秘書に、外を眺めていた男が、
「20年ぶりやわ」
さらりと答え 今 渡ってきたレインボーブリッジを振り返ります。
「銀座までとはいえ、やはりヘリをチャーターすべきでした。すみません」
謝る秘書に首を横に振った男が
「陳、お前、歌舞伎見たことあるか?」
「はい 一度だけ、日本に留学している時に、5分で寝ました」
若い秘書の素直さに男もついに輿に乗り
「国姓爺合戦」って芝居に「紅流し」という 有名な場面があんねん。
作戦が失敗したら河に紅を流して知らせ、成功したら河に白い粉を流すっちゅな」
河を白く・・・。白河集団公司 うちの社名じゃないですか?」
「それにしても どうして突然、それも李首相との会食断ってまで来日したんですか?」
との秘書の問いかけに、
「あるお人がな、日本の宝になんねん。 それ決まったら すぐの知らせてくれて、
最大限のコネをつこうて頼んでたんや」
「ある人って?」
「俺が昔からずっと贔屓にしてる役者や」
90年代初頭 この男が渡った大陸は 現代的なビルよりも赤い砂ぼこり。
なんにもないからこそ なんでもある そんなところでした。
腕力を頼りに始めた仕事が運送業で、そこで知り合った瘦せっぽちの出稼ぎ青年に目を
かけてやり、大学資金をだしてやったのが運の始まり。
「アニキ インターネットって知ってますか?
一緒に会社を作って電子商取引をやりましょう」
誘われるままに始めたのが、日本でもまだ Windowsを知らぬ者も多い頃でした。
一か八か 一世一代の大勝負、全財産をつぎ込んで上海で作った会社が
「白河公司」
客席に響く胡弓の調べ
三代目 花井半二郎 客のほとんどは
その圧倒的な喜久雄の世界感に口をぽかんと開けたままです。
幕切れは 原作と映画は、違いますが、
それは 夢のかたちの違いでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました!