* ながーいブログです。気が向いたら読んでみてください。

* 原作者 吉田修一氏は、【国宝】を書くにあたり、3年間 歌舞伎の黒衣を纏い
楽屋に入った経験を血肉にして、書き上げた作品 と 紹介してありました。
* この物語は講談調で書かれている 人間ドラマ。
* 映画でも描かれていますが、
任侠の世界から歌舞伎の世界へ飛び込んだ主人公喜久雄が
上方歌舞伎の名門の跡取り息子である俊介と
互いに切磋琢磨しながら芸を磨き 人間国宝を目指す物語です。
才能と血筋という異なる背景を持つ二人が歌舞伎の世界で繰り広げる愛憎劇や
芸の道に人生を捧げる姿を描いています。
* 小説【国宝】には
主人公喜久雄の幼なじみとして
暴力団の世界に足を踏み入れた徳次という人物が登場します。
映画では、序盤に登場するのみでしたが、
原作では 喜久雄を支える人物として、信頼できる存在として、描かれています。
。喜久雄は長崎 立花組の総領息子。
。徳次は
元は長崎で貿易商を営んでいた華僑と芸者の間に生まれた子供で、生後しばらくは
洋館を借りてもらい、母子二人で何不自由ない生活をしていたのですが、
この華僑父親は、終戦の混乱も落ち着いてくると、大勝負に出たいと生まれ故郷の
中国福建省へ向かったのです。
徳次の母は、芸者に戻ったのですが、原爆症で徳次が5歳を迎える前に亡くなり
その後 遠縁の家で育てられるのですが・・・7歳の頃には、ホテルの調理場から
パンを盗んで捕まったというから 大事にしてもらってはいなかったようです。
その徳次が生きるために 歓楽街で、たむろしていた時、スマートボールで遊んでい
る立花組の若頭に声をかけ「兄貴 兄貴」と呼び、気がつけば 使いっぱしりのよう
な格好で組に出入りするようになっていったようです。
この二人 喜久雄が14歳 徳次が16歳で二つ違いで妙に気が合ったようです。
徳次は喜久雄のことを「坊ちゃん」と呼び
喜久雄は徳次のことを「徳ちゃん」と呼び合っています。
*映画では、喜久雄と俊介の二人に焦点が当たっていますが
原作では徳次のような脇役にも焦点が当てられ、深みが
与えられています。
* 映画の始まりと原作の始まりは 昭和35年 その年の正月。
長崎の老舗料亭「花丸」にて立花組の新年会
その盛大な宴に福岡や佐世保から集まった親分たち~
招待したのは立花組組長 権五郎 その隣に座っているのは女房のマツ。
(喜久雄は権五郎の息子)
その新年会に花井半次郎(大阪の歌舞伎役者)
長崎で映画の撮影があるらしく 親分との付き合いを忘れないで 挨拶に
来られたらしい。
その宴席で太鼓の音が鳴り響き、幕が一気に開いたその時
薄鼠地に枝垂桜をあしらった着付けの遊女黒染。
予期せぬ趣向に座敷では拍手が波を打つ~
「ほう 関の扉でっか?」と
二代目花井半次郎も声を漏らします。
「こりゃ 見事な黒染でんなぁ こんな達者な芸妓さんが長崎におりますねんな」
思わず呟いた半次郎に
「いや、あれは芸妓じゃのうて 立花親分とこの中学生の一人息子たい」
黒染は喜久雄
関兵衛役は部屋住み組員の徳次
二人の響きあう問答が続き 終わると、
舞台からおりた黒染が関兵衛を誘惑するように 花道に見立てた廊下を駆け抜けま
す。
座敷の拍手は鳴りやみません~~
*映画の序盤で 徳次が 出てきますが
原作を読んであの情景の中に徳次がいたのか~と
思ったくらいの出番でした。
褌一丁になりますと「風呂場 どっち?」
喜久雄が湯船に体を沈めたその時
「な、なんや? 地震?」
慌てて 立ち上がった喜久雄と徳次の二人の耳に
男たちの怒鳴り声!
仲居の悲鳴!
「殴り込み! 宮地の殴り込みかもしれん!」
風呂を飛び出す喜久雄
「行ったら あかん!」
マツは日頃見せることのない形相で
「徳次!あんたも押さえて!」
「なんの真似や?」
武器を持つ宮地組 組員相手に、立花の男たちは素手。
権五郎が ゆっくりと一歩前へ
その顔は すでに死んだようであります。
仕掛けてきたのは宮地ですが、立花の反撃も正当防衛と呼べる代物ではなく
双方の逮捕者は、52名にも及んでいたようです。
ある日の午後
喜久雄と徳次が映画を見に行くと
立花組の招待席に 悪童たちが座っていて、徳次がそのシートを蹴り上げると
言い争いになり、
『立花』の名前がいつまでも通用すると思うなよ!
「落ちぶれやくざの部屋住みが、一端に粋がんな」と言われ・・・
乱闘騒ぎになり、
近くの交番から巡査たちが駆けつけてきて、みな我先にと逃げ出し
「坊ちゃん逃げろ」と血まみれの徳次に背中を押され、二人同時に腕をつかまれますが
徳次が最後の力を振り絞り「坊ちゃん逃げろ!」
喜久雄は逃げ果たせたのですが、徳次は現行犯で逮捕され、それまでの悪事も込みで
鑑別所送りになったのです。
そんな徳次がその年の大晦日に脱走してきて、喜久雄の元へ~
親分の敵討ちはいつね? そう急く 徳次に「だけん敵討ちなんかせんって」
と喜久雄は笑い飛ばす。
「せんって 坊ちゃん・・・それ本気で言いよるんじゃないないやろね」
「本気も何も 敵討ちなんて、考えたこともなかもん」と喜久雄。
徳次は大晦日に鑑別所を脱走してから この3週間 権五郎の一回忌法要は寺の
天井裏で手を合わせていたようです。
*ここら辺りで 彫りもんのことを~
。徳次の背中には スジ彫りの虎が。
。喜久雄の背中には ミミズク
数ある絵柄のなかからミミズクを選んだのには、
この鳥は、一度恩を受けた人間には、決して忘れないと言われています。
ある時 怪我をしたミミズクを助けた男がいました。
家へ連れて帰り、傷を癒してやりますと、命を助けてもらったミミズクは
無事に飛び立っていった 翌日から毎日助けてくれたお礼にとネズミやヘビを男に
持ってきてくれるようになったそうです。
この話を聞いたとき、喜久雄は胸が熱くなったようです。
このミミズクのように生きたいと思い、このミミズクの気持ちこそが、この世で
最も尊ぶべきものだと思い ミミズクの彫りもんにしたのです。
喜久雄が彫りもんをしたのは権五郎が亡くなった後です。
権五郎が亡くなったことで、喜久雄は天涯孤独になりました。
といいますのも 喜久雄を育て上げたのは マツで権五郎の後妻で、実母は喜久雄が
二つの時に亡くなっています。
* 喜久雄は久しぶりに学校へ・・・
喜久雄は学校の正門に駆け込みます。
今朝の朝礼で児童図書館に多大な寄付をしている慈善家と推進する市議会議員が
「夢を持つこと」というテーマで演説を行う予定!
その慈善家こそが、宮地組の大親分 改め 「センチュリー建設」の会長宮地恒三
その人。
喜久雄は校庭に向かう列のなかで、腹に当たる ドスを握りしめます。
壇上では、娘婿の市議会議員による 退屈極まりない宮地の紹介が続いています。
喜久雄は 朝日に目を細める大親分を見上げると そのまま一気に駆け出し~
叫んで突進し~
気がつけば 目と鼻の先に大親分の顔!!
横眼には大男の体育教師の尾崎!!
たまたま大親分の腹に革財布が差し込まれていて、その傷はさほど深いものには
ならなかったのです。
逆に咄嗟に体当たりしてきた体育教師のせいで壇上から吹っ飛んだ喜久雄が肩を
脱臼する大怪我。
当然、警察が呼ばれ 喜久雄はその場で保護という流れになるのですが、
ここで機敏に動いたのが、体育教師の尾崎!!
まず 大親分を保健室へ案内。
耳元でささやいたのは『親分ここは美談にしませんか?』
世間では息子が親の敵をとろうとした健気な行為として 広がるでしょう。
そうすれば 親分はどうしたって悪役の吉良上野介
そして喜久雄が若き大石内蔵助と映ります。
今日の喜久雄の行為を世間知らずな子供の愚かさと その怒りをぐっと吞み込んで
はいただけないでしょうか、と。
「なるほど、先生がおっしゃるのも一理ある。それじゃ あの子が持っていたのは
ドスではなく竹を削った刀だったことにしましょう」と
早々に話が纏まったのです。
おさまらないのは喜久雄「早う、警察ば呼べ!」
大親分が喜久雄の前に立ち
「君は想いのよか子やなぁ 自分の親父さんが暴力に屈して、さぞ悔しかったこと
やろねぇ でも喜久雄君、君の敵はこの宮地じゃない。
君の敵は、未だこの日本にはびこる暴力そのものたい。
君はそれと戦うだけの度胸がある。君の人生はこれからぞ。
慈愛あふれる演説をする宮地に 教師たちのあいだから パラパラと拍手まで
起こったのです。
喜久雄だけは、両手を縛られ、強制帰宅。
* 談合の際、一つだけ大親分が尾崎につけた条件は
「立花の息子は、すぐに長崎から追い払うこと」
喜久雄と徳次の二人
よほど 縁があると見え、鑑別所から逃走中だった徳次が「おい、長崎ば離れて、大阪
にでも行こうと思う」と伝えにきたその日が喜久雄 一世一代の敵討ちの朝でした。
さすが うちの坊ちゃんは男や!
早速 徳次が立花へ向かいますと 事務所では駆け付けた 愛好会の辻村とマツ
そして 体育教師の尾崎。
話は このまま長崎に置いても、ろくな大人にならないからと喜久治をどこかの
ヤクザ一家へ預ける話が挙がっていたのですが マツは断固反対します。
【うちは喜久雄の実のおっかさん、千代子さんに頼まれとるんよ。喜久雄は絶対に
ヤクザにはせんでくれって。必ず堅気に育ててくれって】
そこで 出てきたのが 昨年 立花組の新年会にも来てくれた大阪の人気歌舞伎役者
二代目花井半次郎だったのです。
長崎駅で
マツは「喜久雄、切符は?」
「大阪の半次郎さんのお宅に着いたら、ちゃんと挨拶するとよ!」
「わかっとる!」
二人を乗せてきたタクシーのあとに着いた別の車からは、立花組の組員たちが四人、
こちらも慌てた様子で旅立つ喜久雄を見送ろうと追いかけてまいります。
長崎を出た寝台特急「さくら」
体を起こした喜久雄のまえに、なんと徳次が立っています。
「えっ? 徳ちゃん」
「徳ちゃん、偶然じゃないだろう?」
「まさか! 偶然なもんね、俺も、坊ちゃんのお供で大阪へ行くとたい!」
「なんでって 俺がおらんと、坊ちゃん、何もできんやろ」
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この辺りで・・・
徳次、本来ならば鑑別所から逃走中の身の上なのですが~~
喜久雄のお供として大阪行きが決まりますと、愛甲会の辻村が裏で動いて
後見人となり鑑別所での収容期間を短縮させたのです。
ただ、このように逃げるが勝ちを一度経験すれば、
人間 辛抱が足らなくなってしまいます。
任侠の世界は苦手なんですが~~
幼なじみの喜久雄と徳次に焦点を当てるには
避けて通らない訳にはいかず、何とか要約して、
みました。
次回は大阪~~