2022年8月21日更新:

都内で初の都立中高一貫校が誕生してたのは2005年。もうすっかり中学受験の定番の一つとして定着しています。
その様な中、2020年度の一般募集枠の状況は、全校平均で昨年度より倍率が下がったとはいえ、それでも平均倍率は5.74倍と依然狭き門となっています。
比較情報として今年の有名私立進学校の実質倍率は、市進の中学受験情報ナビの速報によると以下の通りです。
- 男子
開成 2.9倍
麻布 2.7倍
武蔵 3.1倍
駒場東邦 1.8倍
早稲田1日目 2.7倍 - 女子
桜蔭 1.7倍
雙葉 2.7倍
女子学院 2.6倍
豊島岡1日目 2.5倍
受かる見込みのない受験生も一定数含まれるとはいえ、辞退者も含めた実質倍率が概ね3倍程度に納まる私立中学と比較しても、都立中学の場合は著しく倍率が高い状況があります。
しかも1校しか受験できないという現実も相まって、結果的に入学が叶わない受験生の数の方が圧倒的に多い入試です。
都立不合格、理由なきその理由
合格に向け、塾に通ったり通信講座を受講したり、コツコツと真面目に受験勉強に向き合ってきたわが子が、模試の結果からも塾の先生からもそれなりに合格する確率が高いといわれる状況にあっても尚、合格発表で自分の番号が見つからないという受け入れ難い結果となる可能性が高い都立一貫校入試。
倍率が5倍を超えている試験ですから、それは当たり前のこと。
宝くじに当たったようなものと評される、倍率の高い都立進学指導重点校の推薦入試でさえ、受験倍率5倍を超えるのは推薦人気の青山高校くらいのもの。日比谷や西や国立高校の推薦入試でも、5倍を超えることはありません。
しかも都立中学入試のライバルは、実力伯仲のまじめな仲間たち。そこに合否を分ける明確な理由などあるはずがないと思うのです。
仮に不合格の理由を求めるならば、そこには運や縁といった人智の及ばない世界が思い当たるのみ。努力不足というわが子に帰する理由ではないはずです。
ですからもし、直前の予想と異なり夢が叶わなかった場合でも、保護者が口にする言葉は、頑張ったわが子の不断の努力を称える言葉がふさわしい。
そして親としてもう一つ大切なこと。
それは、わが子が通う中学の選択という現実的な決断です。
都立中学受験で最も大切な親の役割
わが家は結局中学受験することなく地元公立中学に進学することとなりましたが、それでも都立一貫校の受験にも対応できるよう、早い段階から様々な学校の説明会や学校訪問に自ら参加し、数年にわたりいくつもの記事を配信してきました。
また大手学習塾の都立受験向け体験授業に次男が参加した際に、私自身も国語と算数の授業を一緒に受けるということも経験しましたし、関連する書籍や雑誌の記事などもそれなりに目を通してきました。
そんな中で個人的に感じているのは、それなりに力があっても大部分の受験生が不合格となる厳しい現実がある中で、都立一貫校を第一志望として受験する保護者にとって最も大切なことの一つは、不合格となった場合の出口戦略を予め決定しておくということです。
その際、都立一貫校は国立附属校と試験日が同じですから、具体的には次の2つしか選択肢がないように思います。
- 公立中学に入学する
- 併願私立に入学する
1校しか受験できない入試ですから、二次募集や第二志望の都立に入学するという選択肢はありません。その点が都立中学受験の難しさであり、また保護者にとってブレのない決断力が強く求められる点でもあります。
適性検査型私立中学の増加
最近は、適性検査型入試を行う私立中学が増加傾向にあり、学習塾や教育研究者の多くが、本番の予備演習や「合格体験」を子に与えるために、進学するしないに関わらず何校かの私立中学受験を行うことを強く推奨しています。
ここにきて、私立中学が適性検査型入試を導入する理由は様々考えられます。
- これからの学びに沿った入試形式
- 大学共通テストの方向性と合致
これらの前向きな建前はあるにしても、本音のところは、都立一貫校を専願し不合格となる生徒を取り込みたいという、学校側の経営戦略と考えるのが第一の動機としては確からしいように思います。
都立受験生の保護者の方には大変失礼で不謹慎な言論と自覚しつつも、事実を明記してしまえば、狭き門である都立受験は不合格者が山積みとなる入試であり、しかも都立専願受験生の割合が比較的多い状況があることから、生徒集めに苦労を強いられる中堅以下の私立中学校にとっては宝の山と映る状況に違いありません。
ですから多くの私立が、そうした真面目で能力のある生徒を求めて集まってくる。
私自身は適性検査型入試校が増える背景をそのように解釈していますが、保護者にとっての課題は、塾のアドバイスに従って受けた私立のお試し受験に合格した後で、第一志望の都立中学に不合格になるという状況下で、どのような進路選択を行うかということです。
入学併願校と非併願校
第一志望の都立に届かなかった場合でも、入学前提の併願と定めた私立に合格した場合には、私立中学に進学することにそれほどの迷いは生じないでしょう。
問題は、入学併願校とは捉えることなく受験したお試し校に、公立中学進学と比較して相当高い学校費用負担を受け入れてまで入学するべきかどうかという点です。
個人的には以下のような場合には、その学校に入学することに対し、今一度冷静に考えることが必要だと思います。
- その学校に一度も行ったことがない
(学校説明会、学校訪問など不参加) - 都立第一志望の動機が経済的理由

受験前訪問経験のない学校
もし仮に、実際に一度も訪れたことがない学校に合格している場合、入学することはよくよく考えた方がよいと思います。
この点は、例えば車の購入を考えてみれば明らかです。
自動車ディーラーの営業マンの勧めるままに、実車を自分の目で直接見たり触れることなくカタログだけを見て何百万もする高級車を購入するかということです。
訪れたことのない中学に進学するということは、いざとなったら買い替えることのできる車の購入よりも、ずっと難しい選択を行おうとしているように私の目には映ります。
入学併願校であるならば、少なくとも学校説明会や見学会に一度は訪れ、学校の雰囲気や教職員、あるいは在学生へのイメージを持っているはずです。
その最低限の情報収集さえ行っていない学校への入学を検討しているならば、それは不合格者特有の、冷静さを失った視野の狭さが原因かもしれません。
その際、せっかく合格している私立中学への入学権利を手放してまで、地元公立中学に通わせることへの迷いが生じるのは自然な感情だと思いますし、訪れたことのない中学が、なぜだか不思議とわが子に適した良い学校のように感じるのも、追い込まれた状況の中で自然に生じる感情です。
だからこそ中学側は適性検査型受検を実施して、総じて純粋で真面目な都立専願家庭が入学する環境を整えるわけですし、学習塾や教育研究者の多くが適性検査型入試校のお試し受験を勧めるのだと思います。
繰り返しになりますが、合格した学校を、仮にホームページやパンフレット、雑誌や塾の先生の話しでしか体験したことがないようであれば、それはあなたにとっての入学併願校ではないはずと強く感じます。
経済的理由による都立第一志望
ここに記載する内容はどれも余計なお世話だということを承知の上で敢えてお伝えするのですが、もし仮に都立中学を専願または第一志望とする理由の第一位が経済的理由であった場合、その合格したお試し私立中学に進学することはよくよく考えたほうがよいと思います。
理由はもちろん、中学高校6年間にかかる費用が家計を圧迫するからに他なりません。これは高校進学時に私立無償化の恩恵を受けることを前提とする場合でも同じです。
仮にその学校が入学してもよいと感じる併願校だった場合でも、入学後に必要な教育費について予め算出して把握できている家庭は多くはないのではないでしょうか。
ですから改めて、募集要項や学校ホームページ上の学費関連の情報をにらみつつ、冷静に電卓をたたいて家計簿と相談するのが賢明だと思います。
もちろんその際には中学3年間の教育費だけでなく、高校入学後の費用についても予め把握することが必要となります。
どの程度までの負担であれば容認できるのか、本来は出願する前に確認すべきことですが、倍率が高いとはいえ第一志望に落ちるという想定に対して受験前から準備することは、一般的な保護者にとってはできるものではありません。
合格発表までの合理的備え
都立合格発表までの1週間に、保護者としてはやっておきたいことがあります。
もちろんそれは、万一不合格になった場合の進路をどうするか決定することです。
そしてそのために、併願校に出かけたことがない場合は実際に電車に乗って学校周辺を歩いたり実際に校内を見学させてもらったり、必要な教育費の算出がまだであれば、入学関連費用や学費だけでなく、通学定期代や部活費用、交際費やお小遣いまで想定される費用について予め把握することが求められます。
私立中学受験の場合には、どの学校までなら入学してもよいのかという質的な課題に対処することが保護者の役目となるところを、都立志望の場合には私立か公立か、全く価値観の異なる選択を行わなければならない。
合否の結果が出た後に、平常心ではいられない心理状態の中で誤った選択をしてしまわないよう、比較的冷静な今だからこそできる判断について、家庭内で話し合い準備するのが賢明ではないでしょうか。
無駄な準備をしたものだと、笑って第一志望の都立中学に通えるよう、今改めて心の準備をしてみてはいかがでしょうか。
ではまた次回。
都立一貫校と千代田区のアドバンテージ