筆者近況
私事ですが、リアル仕事が新展開しまして、最近私・残響(筆者)は妙に忙しいのです。正直、この忙しさに少し引いてます。なので結局音系・メディアミックス同人即売会「M3-2024秋」に、8TR戦線行進曲でサークル参加が出来ませんでした。誠に申し訳ございません。
そんなわけでM3秋の新譜ですが、正直ここのところで、やっと少し落ち着いて聞くことが出来ました。情けないですね。この忙しさは前々から続いていて、結局M3春のあたりの音源感想が書けませんでした。うーむ。音楽愛好ブログとして情けないですが、でもやっぱり良い作品に触れて、感想を書きたい時は書かなくちゃね。
例によってネタバレがかなりございますので、お気にされる方は先に音源をお聞きになられてからどうぞ。
At the Garret「千夜一夜バーザール」
↑ 特設サイト
物語音楽同人サークル・At the GarretのM3-2024春での作品です。この作品は音・世界観共にアラビアンテイスト!
これまで流麗なヨーロピアンスタイル、ミュージカル風の楽曲を手掛けてきた作曲・霧夜氏です。今作ではアラビアン風だけあって、エキゾ音階&音色で攻めていきますが、やはりメロディラインの流麗さ、華麗さは強い。そのメロディを歌う鹿伽あかり・桃羽こと両氏も見事に歌いこなしております。何の心配もいらない。ヨーロピアンスタイルとアラビアンテイストの華麗な融合です。豊かなメロディの甘さ+エキゾ音のスパイス=旨い(UMAI)。この方程式がおわかりか?
特に私が心うたれたのはTr.#2「砂漠の薔薇」。この曲で提示される風景というか哲学が凄い。こちらは笛やシタール系などエキゾ音色を用いたバラードです。しずしずと夜露に濡れる花の姿を思わせる情感あるバラードで、歌詞でうたわれる「物語への渇望」に感じ入ります…。
バーザールの彼女たちが求めるのは「物語」。その姿は物語音楽を作るAt the Garret三人の姿と強烈にシンクロするように思えてなりません。物語を、ひとつでも多くの物語を読み、愛し、それを歌にする。私たちはそういう生き物なんだ、という哲学の表明を勝手に感じ取っています私は。砂漠に咲く花ほど水を求めてやまない存在はありません。その、物語への渇望を音楽で表したところに私は感動します。ここまで物語を、音楽を求めたことはあっただろうか私は、と。
At the Garret「C.ヘインズマンの第三研究室」
特設サイト ↓
そこまでやるか、やりすぎやで貴女たち、というのが第一声w
本作はM3秋の新譜です。Tr#1のイントロダクション語りの不穏さから入る、Tr#2「C.ヘインズマンの第三研究室」この表題曲での鹿伽氏の超絶難度のハイトーンのシリアス感といったら。
↑表題曲「C.ヘインズマンの第三研究室」MV
ユーロ的な壮麗さに、ザクザクと重く刻む電気ギターのバック。ひとつひとつ丁寧に音を積み重ねていって、サビで鹿伽氏の緊張度高いハイトーンの連続!この緊張度、シリアスさ、暗さ、まさに密室、屋根裏、霧夜純がメロディで殴る!これがAt the Garret!!!
絶叫で終わる曲のあとに、Tr#3「Cher Monsieur」で桃羽氏が優しく平和な曲を歌ってくれます。温度差に風邪をひくとか言ってはいけない。それは罠にかかった素人。歌詞に耳を傾けましょう。親愛なる先生へ送った手紙。ここで書かれている内容が微笑ましいほど、歌が平和なほど、この手紙こそが次の曲で暴かれる惨劇のきっかけになっちまっているのですから……何気にあくどい構造だな(失礼
#4「真実からの呼び声」、弩級のドが付くほどダークな音、シリアスな語り、光など全然ない妄執の暗がりの世界。「〇〇からの呼び声」と聞くとすぐにクトゥルフの呼び声を思い出してしまうどうしようもないH.P.ラヴクラフト信者の私でありますが、まぁ本作の世界観にクトゥルー神話体系はございませんが、どうしようもなくゴシック文学、ホラーの匂いはしますねぇ、本作!
要は死者蘇生の話なのですが、この妄執を作品…「盤」全体で描き出しているのが、今作でAt the Garretがやったことです。
音で、歌詞で、物語で。そもそもジャケットに描かれている少女の瞳がやけにおびえていることは?本のタイトルにフランス語でよりにもよって「死者の蘇生」と書いてあることは? CDを保護している特殊紙のケースに六芒星の魔法陣が描かれていることは? CD盤面の少女の胸が穴でブチ抜かれていることは?
もう全部が全部「音盤」というメディアを活かした(悪用した)表現ですよ。そこまでやるか、やりすぎやで貴女たちーーーこれよ、これこそが同人音楽、物語音楽!ここまでやる愉悦を、手にとって触れて味わえるからこそ、同人音楽CDを買いたい!って人たちがいるのですよ。
歌詞カードなどを手に取りながら音楽を聴き、とても満足しました。やっぱり音楽を聴くってこうでなくちゃね。
鹿伽庭「Giorni」
本作はAt the Garretのシンガー・鹿伽あかり氏の個人サークル「鹿伽庭(かがてい)」の初作品で、歌唱・ピアノ・作曲・mixをすべて鹿伽氏自身が行ったものです。
鹿伽氏と桃羽氏のサークル・Ideadollの時も書きましたが、私はロックバンドや同人サークルのメインコンポーザー以外のメンバーが作曲を始めるという展開が大好物なのです。とにかく私残響は「楽曲派」リスナーです。この世には一人でも多くのメロディーメーカーが居てほしいのです。また、こうしてメインコンポーザー以外が曲を書くことにより、バンド/サークルの活動により一層の刺激や好循環が生まれる、という風に思うのもわくわくすることです。
modernclothes24music.hatenablog.com
modernclothes24music.hatenablog.com
さて本作ですが、全て鹿伽氏の歌唱&ピアノの弾き語りで、他の楽器は入っていません。硬派(ストロングスタイル)です。
豊かなピアノの音色と鹿伽氏の伸びやかな歌声、作風は春風かおるような清々しさ、これからへの希望を感じさせるような心和む音となっております。生まれたての瑞々しさも感じさせます。でも生まれたての小鹿のような弱弱しさではない。
私は本作を聴いて「手紙を受け取った」という感じがしましたね。鹿伽氏の庭から見えた景色、思う情景、人との思い出。そういったものを音のスケッチにして、こちらに手紙として送る……実際、本作の物理メディア形式は、白い紙封筒ジャケットにCDが収められているものです。そして本作は「1st Sketch CD」と銘打たれていますから。
歌とピアノだけで寂しくないか?それは思わなかったですね。ここにバンドサウンドが加わってオーバープロデュース的なtoo muchになるより、ピアノ弾き語りだけの方がずっと良い、と本作は思える。例えばNHK-FMの「弾き語りフォーユー」を心和やかに聴いている感じに近く思えた。鹿伽氏の紡ぐこの清新さ、和やかさが好きです。
小品だけれども、暖かな手紙。そういう音楽は絶対に有って良い、と思う。ピアノのフレーズも、鹿伽氏が作り出すメロディも、和やかでとても自然。静かに落ち着いて午後の昼下がりに聞きたいシングルと言えましょう。off vocalのピアノ演奏が収められているのも大変嬉しいです。こういう聞き比べもまた楽しいものです。
思うのですが、こういう「親密さ」って良いですね。それもまた同人音楽の喜びであると、とても強く思います。表現者(「同人」)が好きなようにやる、それが同人活動です。それは時としてとても「日記」的なプライベートなものにもなると思います。
その「日記」さを私は最大限肯定したい。音楽は、そういう「日記」的に喜びを謳える表現形式でもあるのだから。けして商業音楽や壮大な音楽を否定しているわけではありませんよ。まして安易なインディー/同人礼賛でもないです。私は…とにかく私は、こういう音の日記「も」聞いてみたいのです。これからも鹿伽氏の「音日記」を聴いてみたいです。また「音のお便り」を頂けたら嬉しく思います。
過去のAt the Garret作品の感想
屋根裏部屋のある生活--At the Garret全作品感想 - 残響の足りない部屋
↑ 他のあとぎゃれ過去作感想へのリンクもこの記事に貼ってあります。