
2025年4月。フランシスコ教皇が亡くなったタイミングもあり、気になっていた今作を視聴。
公開は去年ですが、このニュースを見てから興味本位で見たって人も多いはず!
思いっきり余談なのですが、教皇が亡くなった日、私はたまたまパリにおりまして、ニュースを聞いた翌日、たまたまノートルダム大聖堂に行ったんだけど、意外にも観光客に溢れてたし、”喪中”って雰囲気ではなかったかな。
でも、祭壇には教皇の写真が飾られていました。まだ現実味はなかったなー。
カトリックの教皇選挙がテーマだからって、宗教的な話なのかと思って敬遠することなかれ。
ミステリーでございます。
むしろ、超別世界で生きていそうな聖職者のトップ達を、より人間らしく描いた作品だったと思う。
神にその身を捧げた者だとしても、間違いは犯すし、秘密もあるし、嘘だってつく。
人間だもの。
カトリックの教皇がどうこうと言うよりも、トップに立つ人間はどうあるべきかを考えさせられる内容だった。
現在のアメリカと世界の政治状況について考えさせられる。笑
ここからはネタバレありで書いておりますので注意!!
登場人物

ローレンス枢機卿(ラルフ・ファインズ)
ローマ教皇庁首席枢機卿。他のしたたかな候補達と比べると、ピュアハートな枢機卿。
教皇選挙の指揮を取るよう依頼されるも、自身も票を集め始める。実は信仰に疑問を持ち始め、辞職を考えていた。
ベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)
アメリカ出身のリベラルな枢機卿。ローレンスと仲が良い。
元々保守的なカトリックのリベラル派で、同じ考えを持っていた元教皇とも仲が良かったことから、当初は最有力候補と言われていたが。。。
トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)
カナダ・モントリオール教区所属。
柔軟でもの義柔らかな枢機卿だが、したたかな一面も。実は教皇の死の直前にあっており、教皇から辞職を促されていたとの情報も。
テデスコ枢機卿(セルジオ・カステリット)
イタリア出身でかなり保守派の枢機卿。イタリア出身の教皇が長らく出ていないことを嘆いている。
態度が大きく率直に物を言うタイプ。が、その考え方から、保守派から強い支持を得ている。
アデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)
ナイジェリア出身で、初の黒人教皇の座を狙う。
人気はあるものの、コンクラーベが進むにつれて過去の失態が明らかになり。。。
ベニテス枢機卿(カルロス・ディエス)
カブール教区から、教皇選挙に滑り込み参加。
カトリック教会の勢力が弱い教区で奉仕し、教皇に枢機卿と任命されたばかりの若い枢機卿。秘密裏に任命されたことで、その存在を誰も知らず、困惑を招くが。。。
聖なる戦い?

現代では、カトリック人口の約5割がアメリカ人らしい(次いでアフリカらしい)けど、今のアメリカの政治的な現状が大きく影響しているような内容が出てくる。
リベラルだとか、保守派だとか。。。
現実世界で亡くなったフランシスコ教皇は割と前進的なタイプだったみたいだけど、教皇選挙でも保守派とリベラルの戦いがあるんだろうなー。
ローレンスが「我々は神に仕えている」と言ったら、リベラルのベリーニに「甘えたことを言うな」って言われてたし、清く正しいだけでは教会のトップは務まらないということなのかしら。
結局、政治なんだなー。
同じ宗教でも世界中に拠点があるわけで、みんな出身国も活動している環境も違うし、解釈の違いや各々が良しとする価値観がある。聖職者だって人間だもの。
犯罪ドキュメンタリーオタクとして、人間が犯罪を犯す理由のトップは大抵、「愛憎」「金」あと「権力への欲」っていうのは基本。
究極の立場をめぐる選挙では、どんなに偉い聖職者であっても、人間としての”欲”には抗えないのかな。
スキャンダル

私が今作で一番印象的だったのはイザベラ・ロッセリーニ演じるシスター・アグネスの存在。
多くは語らないし、表情も変えないけど、確固たる何かを感じるシスターだった。
シスター達は献身的に教会に尽くし、教会をよく知っている。
でも何の権力もも持たない。女性だから。
実質メイドの役割しかできないのも、枢機卿達とのコントラストを感じたし、やっぱり作品としてのメッセージは現代的なものだったんだと思う。
今作が人間味を帯びていくのは、アデイエミ枢機卿のスキャンダルが明らかになるところから。
アデイエミ枢機卿がシスターと関係を持ち、隠し子がいたことについて、トランブレ枢機卿が陰謀を企んだのも、実際すごく人間的。
そこから元教皇が枢機卿達の悪事の情報を集めていたことまでわかり始める。
もうこの辺から泥沼に。笑
元教皇への忠誠心から、ただ使命を果たして正当にコンクラーベを進めたいローレンスと、それを候補者を退けるための野心と理解する同僚達。
最後まで自分の企みを死んだ元教皇のせいにしたトランブレ枢機卿は、流石に”神”には誓えなかったけど、その滑稽さがいかにも人間的で、興味深かった。
信念とは

保守派とかリベラルとか、要はその人達の信念の問題であって、宗教そのものとは正直関係ないと、私は思う。
キリスト教でもイスラム教でも、強硬派とか色々あるけど、それは結局一部の人が勝手にそれを正しいと信じて従っている(良くも悪くも)わけで、何を信じるかは個人の自由だと思う。
ただ、未来を担う教皇を決めるこの選挙では、その信念”こそが仇になることを、ベニテス枢機卿だけは理解していた。その”信念”が、時に争いや憎しみを生むことも、それが未来を蝕むことも。
保守派のテデスコ枢機卿が、「宗教戦争じゃ!」と意気込んでいる時に、「あなたは戦争の何を知っているのですか?」と、ベニテス枢機卿が自分の経験を語り出すシーン。
さまざまな”派閥”が言う”正しさ”に惑わされず、広い視野を持って導くことが教会には必要なんだって。
なんかハッとしちゃったよね。これは教会に限ったことじゃない。
本来、”どっちが正しいか”は重要じゃないのかもしれない。
先進国でぬくぬく自分の教区と自分の心配だけしてきた枢機卿には、わかりようがないのかもしれない。
当初、嫌がるローレンスに票を入れ続けていたベニテス枢機卿。
ローレンスが自分の信仰と忠誠心で揺れ動いていた理由は結局明らかにならなかったけど、自分を信用していない、信仰を絶対視していないからこそ、適役な候補だと思ったのかもしれない。
疑問を持ってこそ、悩んでこそ、人として信用できるっていうのにはすごく納得してしまった。
感想
今作を先に観ていた友達は、伝統的なイベントをテーマにした作品だけど、結末は現代的って言っていたんだけど、最後まで観てその意味がよくわかった。
てか説明うまいな、友よ!!
ミステリーとしては面白かったし、実際にはわからないことの方が多いであろうバチカンの建物内や枢機卿達の関係性もリアルだったし、建物や描写も美しかった。
撮影された教会やその雰囲気、音楽も重厚。
そしてさすがベテラン俳優達が揃っているだけあり、演技も秀逸です。
舞台がバチカンなだけあって、イタリア語のシーンも多めだったけど、実際はどれだけの枢機卿がイタリア語わかるんだろうか。教皇選挙の信仰やスピーチは何語なんだろう、とかも考えちゃった。

ただ、ストーリーの尻すぼみ感はどうしても否めない!!前半はすごくワクワクしてたのに!!
最後は「そう来たか!」とは思ったけど、「え、それだけ?」って。。。
ベニテス枢機卿は、もうそれだけで面白いキャラクターだったのに、性別の話とか、ちょっと当てつけっぽくてリアリティを感じなくなっちゃった。
そこは、女性の権利が制限されているカトリック教会への、作品からのメッセージだったのかもなー。
あと、ローレンスが辞めたい理由とか、バチカンの外の爆発のこととか、全部スッキリしたい私にとっては、最後まで詳細がわからないことが結構あって、ちょっとモヤっと感が残った。
枢機卿達が待ち時間にめっちゃタバコ吸ってたり、スマホいじってたり、現代的な様子も垣間見えるのも面白い。
このご時世、コンクラーベの間にはテレビもスマホもインターネットも支えないって、結構辛いよな。聖職者といえど。笑
ラストだけはどうもガッカリだったけど、なんだかんだ作品の雰囲気も音楽も、枢機卿達の言葉遣いさえも、興味深くて考えさせられるいい作品だったと思う。