
ネトフリがついに、O・J・シンプソン事件に手を出したよ。
渦中の彼は去2024年に亡くなったし、このタイミングでね、ここぞとばかりに作ったんでしょう。笑
この事件については、正直ハリウッド的なエンターテインメントとして見ちゃた人も多いはず。容疑者はセレブリティーだし、どこか現実離れした事件かも。
でも、今回のドキュメンタリーを観て被害者の発見時の状態を知ったら、実際は恐ろしく暴力的で自分勝手な、凶悪犯罪だったことに、絶句。
どうする?
自分の家族や友人が超有名人に殺されて、裁判の内容(もちろん彼らの私生活や、事件現場の血だらけな姿まで)が全国中継されて、セレブ容疑者側の最強弁護団によって、最終的には殺人の物的証拠は無視されて、超有名人が無罪になったら?
しかも、国民の半分は判決に大喜びしてて、その後新犯人の逮捕どころか、捜査も開始されることは無い、、、なんて。しかも街では容疑者の解放を謳ったTシャツとかお皿とか売ってんのよ。
私は失望と怒りで生きていけないかもしれない、、、
O・J・シンプソンは果たして本当に無罪なのか。
彼が無罪なら、誰が犯人なのか。真相は、OJのみぞ知る。。。
もうね、最後のエピソードでOJのマネージャーが言ってたことに、とにかくびっくりよ。
信じるか信じないかはあなた次第ですが!!笑
情報が盛り沢山なので、全編と後編に分けています。ごめん。
主な重要人物たち
O・J・シンプソン
当時46歳。事件の容疑者。被害者ニコールの元夫で、伝説的なアメフト選手。
当時は映画やドラマなど、テレビ番組にも数多く出ていて、老若男女から人気があったセレブリティ。
OJって、当時ものすごく人気があった。
アメフトで前代未聞のすごい成績を残していたし、人懐っこい人柄もユーモアのセンスもあって、引退後は映画やドラマへの出演もしていたから、幅広い世代に支持されていたわけ。
ニコール・ブラウン
当時35歳。事件の被害者。OJの元妻で、二人の間には2人の子供がいる。
OJの家庭内暴力が離婚の理由だと言われている。OJと別れて新しい人生を始めようとしていた矢先に事件が起きた。
ロナルド・ゴールドマン
当時25歳。事件の被害者。ニコールがよく訪れていたレストランのウェイターで、彼女の友人だった。親しくしていたが、ニコールとは恋愛関係ではなかった。
キム・ゴールドマン
”もう一人の”被害者、ロナルドの妹。
ロナルドとはとても親しく、兄の死とメディアの注目により大きなトラウマを抱えながらも、ドキュメンタリーでは被害者家族としての複雑な思いを涙ながらに語った。
マーシャ・クラーク主任検事
当時41歳。本件の主任検事。
裁判の後は検事を辞めて、メディアに多く出演するようになる。この事件がキャリアの大きな転換であり、汚点でもあったことからか、ドキュメンタリーの取材は拒否。
クリストファー・ダーデン検事
当時38歳。病気で辞退した担当検事の一人に代わって抜擢された若手黒人検事。
当時は、黒人であることを理由に選ばれたと言われているが、自分の役割を理解しつつ、正義感に溢れる人柄の良さが滲み出てた。裁判で、あの有名な手袋をOJに着けさせた検事。
監督フロイド・ラス(出演なし)
この人が作るドキュメンタリー好きだなぁ。
白人監督だけど、マイノリティ(有色人種など)が登場するドキュメンタリーを、偏見なく弱者の目線で描くのが上手い人だと思う。今作と同じ『アメリカン・マンハント』シリーズの『ボストン爆破テロ事件』もすごく良かった。まだ見てない人は是非!!
監督は、ポッドキャストのインタビューで「OJを俳優だと思っているような若い世代にもわかるように、なるべく当時の時代背景とその影響がわかるように作った」って言ってたけど、ほんとにわかりやすかった。
事件の概要

1994年6月12日午後11時頃、OJの元妻のニコール・ブラウンと、その友人で近くのレストランのウェイターのロナルド・ゴールドマンの血だらけの死体が、カリフォルニア州ロサンゼルスのニコールの自宅玄関前で隣人に発見された。
ロナルドは、働いていたレストランにニコールの母が置き忘れたメガネを、ニコールの家に届けに行った所、犯人と居合わせたと思われる。
ニコールは頭や首元を7回刺され、喉を掻き切られていて、彼女の頭部は切断寸前の状態だった。
ロナルドは身を守るためにナイフを素手で掴んだ守備創があった。
当時、現場の家の中ではOJとニコールの子供達が眠っていた。
OJはニコールの家には行っていないと主張しているが、事件の時間帯に、現場近くの交差点で白いブロンコを運転するOJが目撃された。
目撃者は、裁判前にマスコミにこの話をしたため、裁判でこの証言は使われなかった。(は?)
OJはその夜の深夜便でシカゴへ行くため、リムジンで空港へ。
運転手と、駐車場にいた男性は、OJが駐車場のゴミ箱に自宅から持ってきたボストンバッグ(いまだに見つかっていない凶器が入っていたと思われる)を捨てているのを目撃。男性の証言は採用されなかった。(は?)
LAPDに通報があり、マーク・ファーマン(裁判での重要人物。後編で解説します!)を含む警官が職捜査で証拠を収集。
OJの白いブロンコについた多量の血痕から、OJの関与が疑われることとなる。
次の日、連絡を受けてシカゴからLAに戻ってきたところ、任意同行応じて警察へ。警察は家宅捜索を開始するも、逮捕はせず。
殺人事件なのに容疑者の出頭を待つ(野放し)警察。これは超異例の特別待遇だったらしい。ニコールの葬儀後、弁護士と共に出頭する予定が現れず、OJは指名手配となる。

指名手配後、アメフト選手時代からの友人が運転した白いブロンコで、高速を暴走。自殺を仄めかしながらも、SWATに交渉され、実家へ着いたところを逮捕。
世紀のカーチェイスとなったこの様子はテレビ中継され、大勢の野次馬が彼の様子を見守った。指名手配犯なのに、警察に誘導される形で実家に到着。逃走したことは罪に問われなかったのかな?
O・J・シンプソン容疑者

この事件では、インタビューでも元LAPDが「多過ぎるほどの証拠があった」って言っいて、初期段階から多くの物的証拠が発見されていた。
これは犯罪事件の基本だけど、真っ先に疑われるのは”被害者のパートナー”なのです!
殺人現場では、血のついた手袋や帽子が見つかっていたし、OJと同じ靴サイズの足跡もあった。さらに、OJの自宅前に停めてあった白いブロンコ(車)や、家のフェンス等でも血痕が発見されていた。
さらに、OJの自宅内でも、血痕のついた衣類が発見されていたりと、多くの物的証拠が見つかった。
LAに戻ったOJの指には切り傷があり、その傷の理由を聞かれた時の答えは、二転三転していたが、警察には、この傷がOJの血液が見つかった理由にもなり、OJの関与がより濃厚となる。
OJはシカゴのホテルでグラスを割り、指を切ったと証言。実際に血の付いたグラスが見つかっている。
警察は、ニコールが家庭内暴力でOJを通報した記録も持っていたので、動機も十分あった。
最初に現場に向かったマーク・ファーマン刑事は、過去にニコールの通報を受けて現場にに駆けつけ、本人とも話したことがあった。
OJは終始冷静だったし、血液や指紋を提供するなど、警察の捜査にも協力的だった。
本当に彼が犯人じゃないことの自信なのか、俳優もしていたOJの演技なのか。
最強弁護団”ドリームチーム”

OJの弁護団、通称”ドリームチーム”には、マイケル・ジャクソンの弁護をした主任弁護士のジョニー・コクランやセレブ弁護士のロバート・シャピーロの他に、ジョンベネちゃん事件やボストンの連続殺人魔の裁判にも関わった、一流の専門家達が揃っていた。
カーダシアン家のお父さんが弁護士団の一人だったことも有名な話だけど、実際に裁判で指揮をとっていたのは、黒人の人権に係る事件を主に扱っていた敏腕弁護士ジョニー・コクラン。マイケル・ジャクソンの弁護もした大物。
幸か不幸か、それが結局OJに有利に働いた事は間違いない。

コクラン弁護士は、時代背景、タイミング、当時のカルチャーを理解してた。
ダグラス弁護士のインタビューを聞いているとわかるけど、彼らは”ただの弁護士”じゃない。
黒人の弁護を専門とした、人種差別と戦う人権運動家でもあり、強い意志と正義感を持ったコミュニティの代弁者でもある。彼らはその迫力とパワーが違う。
ブラックコミュニティはずっと警察に大きな不満を持っていたし、LAPDの黒人差別的な取り締まりも有名だった。
裁判が行われたロサンゼルスでは、数年前の1991年に、ロサンゼルス暴動*1も起きていた。
何年か前のジョージ・フロイド事件のよう。何十年経っても変わらない、ブラックコミュニティと警察の関係性。
そこで、OJが黒人であることを前面に押し出し、コクラン弁護士の専門である人種問題を焦点にすることになったのだ。
ドリームチームと呼ばれた選りすぐりの弁護団はみんな、”殺人事件”としての勝ち目はないとわかっていたから、”人種問題”に持ち込んだ。かなり賢くて、かなりずるい作戦。
さらに、弁護団にはラッキーなことに、刑事の中に明らかな人種差別主義者がいたことがわかったから、この戦略はより有効になったのだ。
それなりの検察

彼らは優秀だった。それなりに。
黒人のダーデン検事を採用し、人種への配慮もしていた(本人は人種が理由で選ばれたことをインタビューで否定)し、陪審員の選択にも自信を持っていたらしい。DNA(当時はまだ新しい技術)や目撃証言、OJの関与を裏付ける物的証拠が数多く揃っていることへの自信もあったはず。
ダーデン検事は、”OJに手袋をさせた検事”。
これはかなり大きな失敗として知られているけど、当時それだけ追い込まれていたんだろう。
OJに手袋させる意味よ。笑
有名なあれ、OJは手袋が入らない演技をして見せたって言われてたけど、実際は、指の関節が大きかったので、どんな手袋でも指先までは入らなかったらしい。

可哀想なのは被害者家族。
ニコールの姉妹が証言台に立って、OJの家庭内暴力についても証言したのに、ほとんど注目されないまま弁護士側のペースで裁判が進んでしまったのは、検察側の力不足だったと思う。
被害者ロナルドの妹キムがインタビューに出演してたけど、彼女の言葉からは怒りと悲しみと失望が滲み出ていた。
家族の殺人事件が、国民のエンターテイメントになっていくことの異常さの中で、よく正気でいられたと思う。

ダーデン検事も「裁判の途中で、この船はもう沈みかけていると気付き始めた」って言ってたけど、マーク・ファーマンのせいだけじゃないと思う。
弁護団より強力な動機を示せなかったし、陪審員を説得するほどの力が足りなかった。
だから”それなり”程度の優秀さだったとしか言えない。
マーシャ・クラークは、やたら自信があるようには見えたけど、裁判での立ち回りは、決してスマートだとは思えなかった。
今作の監督は、9ヶ月間マーシャに出演依頼をし続けるも、結局拒否されてしまったそう。彼女にとってはいい思い出がないんでしょう。
当時評判は良くなかったかもしれないけど、今作では、ダーデン検事のインタビューが一番好きだったな。すごく細かく答えてくれてたし、時代背景も理解してた。今になって色々思うことがあったんだろうなー。(当時はまだ未熟だったかもしれないけど)
でも、他に容疑者のいない殺人事件の裁判を無罪にさせてしまったんだから、OJの事件は、検察の大敗だったと言える。
裁判の詳細は、後編で、、、
*1:
特にブラックコミュニティをターゲットにしたLAPD(ロサンゼルス警察)の過剰な取り締まりが問題になっていた当時、ロドニー・キングという黒人男性がLAPD集団暴行を受ける事件が起きる。
スピード違反容疑で逮捕された際に、ロドニー1人に対して、武装したLAPDの警官4人から受けた暴行が過剰だったと訴え裁判に。集団暴行の映像証拠があったにも関わらず、裁判ではLAPD側が無罪に。
この判決は、警察側に理由さえあれば、市民への暴行(特に黒人への)が認められることを世に示す形になった。この判決を受け、ブラックコミュニティは大暴動を起こした。