
「満天の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜」学生時代に流行っていた個人ホームページのダイアリー、当時憧れていた女の先輩が日記のタイトルに度々何かの曲の歌詞を書いていた。この美しいフレーズは一体何の曲なのだろうと思って調べてみたら、RADWIMPSの歌詞だった。それが私とRADWIMPSの出会いだった。ひとたびRADWIMPSを知ってしまうと周りの景色は変わってくるもので、カラオケに行けば男も女もRADWIMPSを歌っているし、洋次郎の歌詞について分析と感動を繰り返すばかりだった。私も恋愛をするとちゃっかり心酔して『RADWIMPS 3〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』と『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』をひたすら聴き続ける若者だった。2009年に『RADWIMPS “イルトコロニー TOUR 09”』で初めて野田洋次郎様を目撃した時は神のように後光が差して見えた。音楽と言葉を操る神様は、きっと私だけでない多くの人の青春の土壌をつくっていると思う。
そんなRADWIMPSが20周年を迎えたという。2025年はPerfumeやKAT-TUNなど長年第一線で活躍してきたアーティストやアイドルの区切りのステージを見てきたけれど、まだこれから続いていくことを前提とした20周年にはひたすらに幸がある。しかも横浜アリーナでYOASOBIとの対バンをやるというので、平成と令和の音楽と言葉の操り手の共演を見逃すまいという思いでチケットを取った。最近のRADWIMPSの音楽は、映画やドラマなどのコンテンツに触れていると自然に耳に入ってくるようになり、直近では朝ドラ『あんぱん』で全130話分の『賜物』を聴いた。夏クールではNHKドラマ『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』にハマり、辞書をつくる過程で言葉を研究する俳優の野田洋次郎さんにもまた魅せられた。あの頃若者の中で大きな渦をつくっていたRADWIMPSの音楽が、少しずつ形を変えて大衆のものになっていく様子を今は少し後ろに下がって拍手しながら見ている。
RADWIMPSとYOASOBIの対バンは、本当に美しかった。YOASOBIは自分たちの人生の中にいかにRADWIMPSの音楽があったかを語っていた。ikuraちゃんは友達から勧められた『'I' Novel』でRADWIMPSに出会い、中高時代に組んでいたコピーバンドで『君と羊と青』と『会心の一撃』を歌ったと話していた。Ayaseさんはガラケー時代の着信音が『ハイパーベンチレイション』で、童貞を奪ったビッチでキュートな子がいつもカラオケで『ふたりごと』を歌っていたと語っていた。普段YOASOBIは単独ライブで見ることが多いので二人の後輩ムーブが新鮮に感じられた。そしてそんな二人の話を受けて、野田さんもまた今回のトリビュートアルバム参加に対するお礼メールを恋文のようにしたためた話をしていて、世代は違えど音楽を演る者として互いへのリスペクトに満ちていて、美しいコミュニケーションだった。
音楽にはそれを聴いていたときの自分の記憶がこびりついている。『ふたりごと』を聴くと当時の恋愛を思い出すし、『05410-(ん) 』を聴くとよくカラオケでそれを歌っていた英語の発音の良い先輩を思い出す。『トレモロ』を聴くと上手くいかなかった日の夜の帰り道を思い出すし、『オーダーメイド』を聴くとこの曲について語ったバイト仲間のことを思い出す。今よりもっと敏感に世界を感じ取っていた頃の記憶が蘇って、あの頃のように音楽を言葉をスポンジのように吸収して、その曲の世界に浸ってみたくなったりした。こんなにも色んな人の人生に影響を与えているというのに、野田さんは「まだ何かを成し遂げたという感覚がない」という話をしていた。その謙虚さと貪欲さを聞いて、40歳になっても歌い続ける姿を見て、自分も謙虚に貪欲に生きねばと思わされた。人生の交差点でこれからもRADWIMPSの音楽と出会い続けられらうれしい。