
2025年度冬休み映画興行収入レポート。
- 『はたらく細胞』大ヒット、福田雄一監督との差
この冬最大のヒットは永野芽郁、佐藤健出演の武内英樹監督作品『はたらく細胞』で興行収入60億円超えも狙える大ヒット。年末年始は『グランメゾン・パリ』に各シネコンの一番座席数の多いスクリーンを持ってかれてしまったが、それでも幅広い層を動員して、この冬の興行を制した。武内英樹監督は『のだめカンタービレ』シリーズ(最終楽章前編が41.0億円、最終楽章後編37.2億円)、『テルマエ・ロマエ』シリーズ(1作目が59.8億円、2作目が44.2億円)、『翔んで埼玉』シリーズ(1作目が37.6億円、2作目が23.3億円)とこれまで数々のコメディ色の強い人気漫画の実写化に成功してきたが、今回はその中でも過去最高のヒットになる可能性も見込める大ヒット。 体内パートの赤血球と白血球のメインキャスト2人が朝ドラ『半分、青い。』以来の永野芽郁と佐藤健の共演、体の外の人間パートの親子が『マルモのおきて』以来の阿部サダヲと芦田愛菜の共演、異常細胞役にFukaseなどキャスティング面でも注目を集めた。
一方で「コメディ系のヒットメーカーが豪華キャストを集めて人気漫画を実写映画化」という視点においてはこの冬は福田雄一監督作品『聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』も公開されたが、こちらは主演の松山ケンイチが劇中で「フォロワーが少ない」というセリフのあるイエスになりきるために朝ドラ『虎に翼』で大幅に増えたXのフォロワーをブロック解除してフォロワー数を減らす頑張りを見せたにも関わらず最終10億円に届かない見通し。福田雄一監督は2020年の冬に『新解釈・三國志』が最終40.3億円の大ヒットを記録するも、2022年冬の『ブラックナイトパレード』は大コケ。そして2024年の冬も振るわない結果となった。武内英樹監督作品も福田雄一監督作品も豪華キャストにコスプレ感溢れる漫画そのままの衣装を着せて、役者の演技によって笑いを取らせるという手法自体には共通項が見出せる。ただ武内英樹監督作品はふざけた格好をした役者がその世界観の中で真剣に生きているキャラクターたちを大真面目に演じさせることから生まれる「ギャップ笑い」なのに対して、福田雄一監督作品はふざけた格好でコント的にふざけたことをやって笑いを取るスタイル。深夜ドラマならこのノリも楽しいが、映画館で集中して2時間となると中々キツい。ここら辺が両者の映画監督としての評価の差に繋がっているように思えるが、新年早々新作が控えている福田雄一監督作品『アンダーニンジャ』はどうなるか…
- 100周年大コケ、101年目で復活のディズニー
ディズニーはコロナ禍初期に映画館を切り捨てて自社のサブスクを優先する経営をしたことで、パンデミックが収束に向かい、他の作品にお客さんが戻り始めても「どうせ直ぐに配信が始まるんでしょ」と見透かされて、中々以前のような景気の良い数字を取り戻せなくなっていた。そうした流れの中で昨年ディズニー100周年記念作品として公開された『ウィッシュ』も世界的に大コケ。日本では30億円超えのヒットを記録していたが、本音では100周年だけに100億円を狙っていたという。しかしそんな負の流れは100周年目に置いてきて、101年目のディズニーはピクサー『インサイド・ヘッド2』がアニメーション映画史上歴代No. 1ヒットを更新。そして年末には『モアナと伝説の海2』がオープニング5日間で2.21億ドルと前作の最終2.48億ドルに迫る大ヒットスタート。日本でも前作を超えるオープニング興行を記録して、前作の最終51.6億円超え確実の推移。作品の評価は元々Disney+向けの長編配信シリーズを急遽劇場公開用の長編作品に変更したという経緯もあってか一部では厳し目の声もあるも、基本的には好評価。前作はオーシャンビューに適した横に広いシネスコサイズだったが、今回はビスタサイズに額縁上映されるユニビジウムで配信用作品の名残りでは、との指摘あり。
一方で『ライオンキング ムファサ』の方は前作が全米5.43億ドル、全世界16.62億ドルのメガヒット作品だったのに対して今回はそれぞれ1/3程度に落ち着く見通し。製作費対比でコケた訳ではないが、下げ幅の大きさは否めない。日本でも前作は66.7億円の大ヒットだったが、今回は20億円超えも怪しい推移。
- 米倉涼子VS木村拓哉、高視聴率ドラマの劇場版
「終わる終わる詐欺」の常連である米倉涼子主演大ヒット医療ドラマ『ドクターX』がシリーズ初の映画『劇場版ドクターX FINAL』で完結。本作は最高視聴率27.4%(第3期の最終回)の高視聴率ドラマ故に長年映画化の噂が浮上していたが、ネットニュースでは一時期毎回のように米倉涼子主演のテレ朝ドラマ『交渉人』を映画化した際に大コケしたことが「トラウマになってるのではないか」とセットで語られていた。実際、高視聴率ドラマが映画化でコケたらブランド価値は低下するし、高視聴率ドラマ故のプレッシャーも半端なかっただろう。しかし本作はキャッチコピーで「映画でも、私、失敗しないので。」と外野からのノイズを跳ね除けるかのように高らかに宣言。最終30億円超えが確実な大ヒットとなった。一部では「元が高視聴率ドラマなのでもうひと押し欲しかった」との指摘もあるが、本作が本領を発揮するのは同じテレ朝の『相棒』同様に繰り返しの地上波放送に耐えうる視聴率的ポテンシャルにあるのだろう。
高視聴率ドラマといえばこの冬は「視聴率男」こと木村拓哉主演ドラマ『グランメゾン東京』を映画化した『グランメゾン・パリ』も公開。『グランメゾン東京』は2019年秋クールにTBSテレビの日曜劇場枠で放送され、最高視聴率16.4%(最終回)を記録した人気ドラマだが、コロナ禍を挟んだことで続編までキムタクの想定を超える5年の間が空いた。5年の期間が空くといくら人気を得たドラマと言っても、1クールのドラマなので余程の熱心なファンでもない限り、「あー、あったなそんなドラマ」となってしまうのが実際のところ。製作側もそれを理解してか、年末の映画公開前日にスペシャルドラマを放送して、視聴者の熱を取り戻し、その流れで映画館に向かって貰う『99.9』スタイルを採用して、見事最終30億円超えが狙えるヒットスタートを記録。昨年9月から映画に合わせてNetflixでドラマを配信して、新規ファンを増やしていたのもプラスに働いたのだろう。
- 『忍たま』ヒットも「子供向け」は鬼門?
この冬、一部から熱狂的な支持を集めているのが『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』で鑑賞者からは絶大な評価を得て、興行収入も10億円超えのヒットを記録。2011年に公開された前作『劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』の興行収入が1.85億円(ただし公開日が東日本大震災翌日だったことに留意が必要)なことを踏まえると、13年ぶりの新作が興行的に大きく躍進したことは明らか。昨年度の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も同様の指摘が出来るだろうが、子供の頃から馴染みのあるキャラクターの作品を原作リスペクトのもと、ググッとメインターゲットの年齢層を上げたことが好評価及びヒットに繋がっているのだろう。
一方でメインターゲットが子供の『映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』は興行収入10億円割れが確実な情勢。山崎貴監督がかつて『ゴーストブック おばけずかん』を公開した際に「子供向けの映画はアニメに食われるから客が入りにくい」という趣旨のぼやきをしていたが、本作もファミリー層はディズニーアニメ『モアナと伝説の海2』や『はたらく細胞』に持ってかれてしまった形。メインターゲットを子供だけに絞った作品の実写映画のヒットは中々厳しい。
- SSU、ソニック、実写洋画が幸先悪いスタート

日本で「SSU」と検索しても「静岡産業大学」の方がトップヒットしてしまうほど、知名度の低い「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」最新作にして最終作『クレイヴン・ザ・ハンター』は興行収入2億円程度の大惨敗。正直、SSUは昨年は3本も新作が公開されているにも関わらず『ヴェノム』以外の知名度は皆無に等しく、作品の評判も良くなかったので、打ち切りもやむなし感の方が大きい。昨年は打ち切りDCEU最終作『アクアマン2』に始まり、20世紀フォックスのアメコミ映画を偲ぶ『デッドプール&ウルヴァリン』を挟んで、打ち切りSSU最終作『クレイヴン・ザ・ハンター』で終わる「2010年代の流れを汲むアメコミ映画の一区切り」のような年だったが、今年はMCU『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』にDCU『スーパーマン』と「新たなアメコミ映画史の幕開けの年」となるのか…
実写洋画では『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』も興行収入2億円程度の大コケ。実写映画版『ソニック』シリーズは世界的には毎回それなりのヒットを記録している反面、生まれの地である日本ではサッパリ。「東京から全てが始まる」とのキャッチコピーが悪い意味で当てはまる構成にガッカリの声もあるが、作品自体の評判は良い。個人的に「特定の世代を除けばオリンピックのゲームで毎回マリオと肩を並べてるから認知度は高いけど、実は単体のゲームをプレイしたことがある人は結構少なくて、そこまでソニックに思い入れない説」を説きたい。昨年度は実写洋画が年間トップ10に1作品も入らなかったことが話題になったが、今年度も超実写映画版『ライオンキング ムファサ』含めて幸先の悪いスタート。今年度は『ミッション:インポッシブル』や『ジュラシック・ワールド』の最新作、ミュージカル映画『白雪姫』や『ウィキッド』も控えているので、どれかしらは年間トップ10級のヒットになるとは思うが果たして…
- 実写でリアル「B小町」ブーム作れず…
一昨年YOASOBIによるテレビアニメの主題歌『アイドル』が社会現象級のヒットにもなった人気漫画『【推しの子】』の実写化シリーズはアマプラで配信されたドラマは 日本のAmazonオリジナル作品で配信後30日間における歴代1位の国内視聴数を達成するヒットとなったが、完結編の映画『-The Final Act-』は年末年始が終わった段階で興行収入4億円程度の大コケ。キャラクターと役者のバックボーンを重ねるメタ的キャスティングや劇中のアイドル「B小町」のパフォーマンスなど評判も良かったが、大バズりする程の威力はなかった。やはりこの作品を実写化するなら、これまで作品に触れてこなかった人たち含めて本物の「B小町」ブームを生み出すくらいのバズは必要だったように思うが、ドラマの配信から映画公開が短過ぎるなど、スピード感重視の戦略が裏目に出たようにも思えた。
- 最後に…
今年度の興行的注目作品は『ウィキッド ふたりの魔女』『白雪姫』『名探偵コナン 隻眼の残像』『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』『ジュラシック・ワールド:リバース』『チェンソーマン レゼ篇』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』『マイケル』辺りか。仮に11月上旬公開なら今年度扱いの細田守監督最新作『果てしなきスカーレット』も大注目だ。世界興行視点だと『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』と『スーパーマン』も気になるところだが、日本だと両作品共にそこそこで終わりそうな予感…
- オマケ
「この冬の実写邦画はドラマの劇場版ばかりだな〜」と思っていたが、「手術シーン」と「染谷将太の出現率」も異様な高さだった
- オマケ2
この冬は『はたらく細胞』に『グランメゾン・パリ』と実写邦画のIMAX公開される作品の幅が広がった感があった
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