
自分に課した月に一度の読書記録のまとめです。4月は9冊の本を読了😊😊。

#20「今夜、すべてのバーで」中島らも
#21「多様性バカ」池田晴彦
#22「C線上のアリア」湊かなえ
「今夜、すべてのバーで」、1952年生まれの著者は2004年に早世しています。1994年に刊行されたこの本ですが、本の帯には、体験的アル中小説のロングセラーと書かれています。
主人公、小島容(こじまいるる)は著者本人でしょう。アル中患者として病院での治療を通して口の悪い主治医、赤河から痛烈な言葉を浴びせられます。
小島「そうです」
小島「そうです」
赤河「そうやって死ぬとこまでまねしたいんだろう。え?ほら、これがジアエゼパムだ」
文筆で生計を立てているうちにアル中となってしまった著者の死生観が随所に現れており、入院患者の面々との交流は時にユーモラスに描かれています。交通事故で死んでしまった唯一無二の親友、天童寺との高校時代からの回顧シーンも織り交ぜられ、一気にアル中患者、小島の半生とアルコールに依存していく様を
追体験しているような・・・。先入観抜きでお薦めの本です。
「多様性バカ」
生物学者の池田先生が説く多様性とは何なのか。SDGsと同じくらいうさん臭く声高に唱えられる
ダイバーシティ。
生物学者だけあって、そもそも
ダイバーシティとはBiological Diversity(生物学的多様性)から派生した言葉と説明されます。人類の活動に伴い種の絶滅、生態系の改変により生物学的多様性が大きく損なわれる危機感に対して非力な科学者がより政治利用できるようBioDiversity(
生物多様性)と言うコトバを提唱されたそうです。
そして使い勝手の良いこのコトバは、人間中心と言う暗黙の前提、且つ多数派が都合よく少数派を定義して多様性と言う錦の御旗を振りかざし道徳と言う暴力をマイノリティに向け振るっていると池田先生は言われております。
真の多様性とは、障害などを持ち受動的にしか自身の権利を行使できないマイノリティの人々を社会が支援することだと言われています。能動的に自身の権利を他人へ迷惑を掛けずに行使できる人々は、その範囲内で自身の権利を行使すればよいとも言われています。如何に、多様性バカがいるかを思い知らされる本ですね。
「C線上のアリア」
湊かなえさんの本を読むのは実は初めてです。そして介護ミステリー。昨年まで母の介護をしていた記憶が過ります。ミステリーと介護、小説のテーマとして成立するのか?両親を早くに失くし親代わりに育ててくれた叔母は
認知症、主人公、美沙は叔母の様子を見るために生まれ故郷に帰ってきます。そしてかつて思いを寄せていた同級生邦彦の妻、菜穂とお互いの家の家事を交換する事に。菜穂は邦彦の母の世話を任され義母、菊枝からつらく当たられる日々を過ごしています。CARE(介護)とCHAIN(絆と言う束縛)はC線上にあるのですが、同一のCODE(体系)ではない・・・。タイトルのヒントなんでしょうね。
「死神の浮力」は前作、連作短編集の「死神の精度」を執筆後、長編小説を書きたいと言う事で執筆された作品。主人公は前作同様、死神の千葉。千葉の担当となる山野辺と1週間を共に過ごし、死なせるのか、そうしないのかを判定するのが千葉の役目。千葉が帯同する7日間、山野辺と妻は共に
サイコパス本城と壮絶な戦いを繰り広げると言う展開が待っています。文庫本で500ページ近い小説ですが、サクサク読み進められます。ラスト、死神千葉の能力が全開(笑)されるシーンは圧巻です。
「笑え
シャイロック」主人公は入行3年目の結城。よりによって配属された部署が
不良債権回収を主たる業務とする渉外部。そこで結城のメンターとなった山賀は断トツで
不良債権を回収しまくる伝説の行員だが山賀は殺害されてしまう。山賀亡き後、結城はどのようにして巨額の
不良債権の数々を回収して行くのか!?どんでん返しの帝王こと中里七里が用意した金融ミステリーの仕掛けや如何に。楽しめるエンタメ小説です。
「邂逅の森」2004年に
直木賞と
山本周五郎賞を受賞した作品。明治中期、主人公、富治は駆け出しの秋田の寒村の
マタギ。
マタギとして一人前になる前に、村の権力者、
豪農の娘に夜這いを掛けて妊娠させてしまいます。結果、村を追われ阿仁鉱山で採鉱夫として3年3カ月と10日の労働を強要されることに。3年3カ月と10日、約束の期限を採鉱夫として勤め上げた富治は晴れて自由の身となります。渡り鉱夫となった富治は大島鉱山で新大工(子分)をとれるまでの立場で働くこととなります。十分、波乱万丈な富治の人生ですが、さらに大島鉱山を経て、再度、
マタギの仕事に身を置くこととなり、山の神と言われる巨大グマ、コブグマとの壮絶なる闘いのラストシーンへと物語は進んで行きます。男女の人間の業の深さ、慈悲深さ、
マタギと言う仕事を通じ、自分の命を落としかねない厳しい自然から他の命を恵んでもらうと言う事・・・。21年前に出版された500ページを超える長編小説ですが、圧倒されること必至です。
#26「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」三宅香帆
#27「インシテミル」米澤穂信
#28「大量絶滅はなぜ起きるのか」尾上哲治
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」。一躍ベストセラーとなっていますよね。読書と言う文化を明治時代から遡って考察しており、着眼点がユニークと言うか面白い!時代時代、どんな本が読まれていたのか、どんな雑誌がどんな層に流行っていたのか。言われてみればBIG tomorrow読んでましたよ。
江戸時代の識字率の高さを維持しつつ、立身と修養、自己成長に力点の置かれた読書がその後、出世と教養の為の読書へと変わってきたと著者は言います。そして時代は変わり「ファスト教養」を説く本が書店を賑わせます。
今や、文脈の中に不必要な知識が散りばめられている本よりもネットで欲しい情報だけをとる時代となったと著者は言います。働き方と読書と言う視点でどんな層がどんな目的で本を読んでいたのか・・・。そしてより効率的に、あるいはタイパ重視の仕事をせざる得ない労働者はその答えをSNSに求めてしまう。だから本が読めないのだと帰結されているようです。
リタイアした身としましては、著者が言うように文脈の中の、今、この時は不要な情報、知識に出会えることが楽しくて本を読んでいるだけなんですが😊😊。
「インシテミル」の著者、米澤穂信さんの本は2022年に直木賞を受賞された「黒牢城」を先に読んでおりました。ジャケ買いでこの単行本「インシテミル」を購入しましたので2007年に出版されたクローズドサークルものとは知りませんでした。(乱読が故、こういう事もありますね)と言う事で、種々のミステリー小説はリタイア後の3年半以上の読書歴の中で読んできましたが、「黒牢城」という歴史小説とのギャップもあり、タイトル、「淫してみる」と言うほど楽しめませんでした。
「大量絶滅はなぜ起きるのか」ブルーバックスとしては、禁じ手なのかもしれませんが、9章からなる本の構成の8章、9章は科学的な根拠を伴わない(笑)、作者の推論で大量絶滅を読み解こうとしています。
プロローグ、かつてオランダでシジュウカラの卵の殻の形成が不十分な個体が10%から40%に跳ね上がったことが起きたとの記載があります。野鳥好きとしてはグッと引き寄せられてしまいます。何故そんな事が起きるのか?直接の原因はシジュウカラが立派な卵の殻を形成するに足りるカタツムリが減少したからだそうです。では、何故カタツムリが減少したのか?それはカタツムリが必要とする地中のカルシウムが流出してしまったからだそうです。
2億150万年前の「三畳紀」に起きた大量絶滅の謎を解くことが、その再来と言われる現代に大きな示唆を与えられるのか?2億180万年前から2億130万年前の間の50万年ほどの間の地層中に眠る2枚貝など世界各地に存在していた化石の大きさや、いつ絶滅したかを調べる事で大量絶滅の研究を進めている著者。
森林消失、大量な土壌の海中への流入、自然環境の大きな変化の中で二酸化炭素の偏在、増大こそが、生物の生命維持に大きな影響を与えます。
今の地球、すでに二酸化炭素(CO2)の濃度は400ppm、ディッピングポイントに達しています。その臨界点を越え不可逆な大量絶滅へと転じてしまうのか。下手なミステリー小説より面白いと言っては不謹慎でしょうか。