『ベンヤミンとパサージュ論』も、なんだかんだと半分くらいまで来た。読めているかには自信がないが、分からないところがわかったので、盆に入る前に、図書館で借りた参考文献を返しにいかないと。その前に、記録だけとっておこうと思う。
図書館で借りた参考文献リスト
*思想家たちのベンヤミンに対する思い出や発言を思想家や識者から引き出して、まとめている本。アーシャ・ラティスと一緒に過ごしていたときのブロッホの思い出が、『ベンヤミンとパサージュ論』理解にとっては有益かもしれない。ベンヤミンが細かいところを見て、あれこれ推論する力にブロッホは驚嘆しているから。
*言わずとしれた清水書院の評伝シリーズの一冊。スタンダールのときにもお世話になりましたが、読みやすい。初学者のころ、一冊読み通せたのは、これと、野村修さんの『ベンヤミンの生涯』(平凡社)くらいだったな。
アンナ・ラーツィス『赤いナデシコ 《職業革命家》アーシャの回想録』水声社 2020
*最初のころしばしば、ベンヤミンとの関係に言及した《職業革命家》アーシャ・ラティスの回想録。なんでベンヤミンがこの人に惹かれたのか疑問に思ったので。検索のときに、小生が馴染み深い「アーシャ・ラツィス」だと引っかからなかったので、記録として。ベンヤミンからの人物像とはちょっと違うぞ、という点、面白かった。
ハンス・マイヤー『同時代人ベンヤミン』法政大学出版局 1994
*もしかしたら最初に買ったベンヤミン文献だったかもしれない。見つからなかったので、図書館で借り直した。マイヤーはドイツのフランクフルト学派よりの文芸史家、批評家で『ベンヤミンの肖像』の中でも、カフカとベンヤミンの精神的交感について書いている。
テオドール・アドルノ『ヴァルター・ベンヤミン』河出書房新社 1991
*アドルノのベンヤミン論の集積。何言ってるかわからないところも多いけれども、アドルノは講義録とか書簡を読むと、わりとわかってくることも多いと思った。まあ、でも、難しい。
ゲルショム・ショーレム『ベルリンからエルサレムへ』法政大学出版局 1991
*基本的にショーレムの思い出話だけれども、しばしばベンヤミンが登場する。そこにエーリヒ・グートキントという神秘思想家が出てきて、ベンヤミンとも交流があったようなのだけれども、ショーレム的にはちょっと秘教主義過ぎてついていけない、でも古書蔵書がすばらしい、みたいな趣旨のことを書いていて、ベンヤミンもこういった秘教的な直観主義が多少残っていたのかもしれないな、と思った。
*ベンヤミンの親友と言っていいショーレムが書いたベンヤミンとの交友史。思想の内容はともかく、こういう思い出話は面白い。途中で飽きるところもあるけれど。
*日本におけるベンヤミン紹介の先駆の一人であった清水多吉によるベンヤミン解読の書だが、最後の最後でベンヤミンの言語観に触れ、「「純粋言語」「ミメーシス」「神への追憶」といった発想がそれである。だが、こうした保守的側面(ハーバーマスの評語)にも拘らず、ベンヤミンには、フランス系の言語学、記号学が失いかけた革命的側面(これもまたハーバーマスの評語)が貫かれていたことも、間違いはない。それは、決して、史的唯物論を導入した、しなかったという問題ではない。以上にみるベンヤミンの言語観には、史的唯物論と結び付きうるような要素など、まるで存在しないのは自明のことだろう。マルクス主義や史的唯物論の導入は、ベンヤミンにとって外挿的なものにすぎなかった、ととった方がいい。ベンヤミンにとっての革命的側面とは、「充電された過去」を、常に現在の意味関連のなかに「救出する批評」を展開したということである。」という部分は、そうだね、と思った。
今村仁司『ベンヤミンの〈問い〉 「目覚め」の歴史哲学』講談社選書メチエ 1995
*今村さんのこの本も、「パサージュ論」を念頭に書かれている。そういう意味では『ベンヤミンとパサージュ論』読解の参考になるところ大である。
*こうやってまとめていくと、1970年代における晶文社でのベンヤミン選集刊行ののち、1980年代前半にベンヤミン関連の本が出版され、1995年前後にベンヤミン論のブームが起こったと推測できる。小生もその近辺で学生だったものだから、ベンヤミンを読んだ。その名残がこの一連のテキストで、ベンヤミンについて何か新しいことを言いたいというわけではなく、自分の思い出を、さほど語るべきものも無いくせに、ベンヤミンにかこつけてなぞっているだけの話である。三原さんのこの本は、言語論、批評論が主眼なので、パサージュ論との関わりは若干、間があるかな。
テリー・イーグルトン『革命的批評に向けて』勁草書房 1988
*ちょっと歯が立たなかった本。イーグルトンはイギリスの文芸批評家で、筒井康隆の『文学部唯野教授』の参考書として名高いけれど、分厚い本を書くのでなかなか全体を読み切れる人は少ないのではないか。イーグルトンは古いよね、とか、イーグルトンは単純で図式的だよね、と当時は言語論批評にあこがれている同級生たちが嘲笑していたけど、なかなかどうして難しい。
ヴィンフリート・メニングハウス『無限の二重化 ロマン主義・ベンヤミン・デリダにおける絶対的自己反省理論』法政大学出版局 1992
*これは哲学的著作で、歯が立たない。メニングハウスの『美の約束』はとっても面白いものだったけれども、法政大学出版会が翻訳を焦らせるから、じっくりと訳語を選ぶ余裕がなかったのかな、と思われる。メニングハウスのベンヤミン論は、パサージュ論関係だと『敷居学 ベンヤミン神話のパサージュ』(現代思潮新社 2000)というのがあって、これも伊藤秀一さんの訳だが、これは明快でわかりやすい。