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山登り・ゴシップ・俺たちのことじゃね 〜『ベンヤミンとパサージュ論』を仕事しながら読む〜9

唯一の後輩から、「しかし、何のためにそんな分厚い本を読もうと思ったんですか?学生の時ならいざ知らず、今読んでも何のメリットもないじゃないですか。投資とか、プログラミングとか、外国語とか、そういうのには関心がないんですか?」と問われた。「投資は、そもそも原資がないし、プログラミングはもう周回遅れだし、外国語は興味ないわけじゃなくて、やっててもそれを表明しづらい」と答えた。「趣味なので、登山と一緒である」と述べたら納得してくれたようだ。山が高そうであれば、それなりに装備を整えて、どんな形であれ、登頂できたら嬉しいものである。そして、遭難したとしても読書なら死なない。

 

ベンヤミンとパサージュ論』は大著ではあるけれど、言ってることが全て難しいわけではない。アーシャに振られて、ドーラと離婚したベンヤミンは、慰謝料でカツカツになりながらも、追い込まれた時ほど、アクチュアリティが出てくる、とカラ元気的な発言をしていた。これは、割とカッコいい。我ら氷河期世代も、ここまで追い込まれた時にこそ、アクチュアリティが生まれるのだ、なんていう発言をしてみたいものである。生まれねえなあ、流石に、と諦めてはいるが。

 

そんなベンヤミンのカラ元気に言及しているのは三島憲一さんだが、『ベンヤミン 破壊・収集・歴史』で、別れた後のベンヤミンも案外モテモテだったことを記している。何だお前、いい加減にしろよ。今はおそらく講談社学術文庫に入っているが、この三島憲一さんの本は90年代後半に講談社現代思想冒険者たちシリーズで鳴物入りで出していたシリーズの一冊で、全体の中でかなり後の方にでた一冊と記憶している。その時には、小生はあんまり興味をなくしていたものの、お付き合いで購入した一冊ながら、30年という時を経て、久しぶりに読むと結構ホルクハイマーやアドルノとのゴシップが書き込まれていて、面白い。ホルクハイマーがまた俗っぽい感じで、適度に嫌なやつなのだけれども、ベンヤミンはそういう人間関係も含めて、亡命面倒臭えと思ったのかもしれない。切ないな。

 

バック=モースの第二章は、数字で節を分けるんじゃなくて、都市名を小見出しに使っている。ナポリ、モスクワ、パリ、ベルリン、そしてパサージュである。それになんの意味があるかと言えば、パサージュ論を巡る2つの軸の交点がパサージュだということらしい。進歩の軸と、打ち捨てられた歴史の軸。後者は縦軸で、下にナポリが配置される。ナポリから叙述が始まる。

 

ナポリは、ベンヤミンとラティスにとっては、資本主義に成り切っていない社会である。そこでベンヤミンが提示しているエピソードが切ない。

 

「ざわめく広場で太った婦人が扇を落とす。太りすぎた女性は自分で拾い上げることができず、困った様子であたりを見回す。騎士道精神あふれる男性が現われ、五十リラでひきうけましょうと言う。二人は商談をし、夫人は十リラで扇を取り戻した。」

 

笑っちゃう。

 

「質屋やくじを使って、国はプロレタリアートを悪徳のうちに封じ込める。一方の手で彼らに差し出し、もう一方の手で取り上げるのだ」

 

あれ、これウチらのことじゃね?

 

「悲惨きわまりない生活でさえも、本人が次の二つのことをわきまえていれば、堂々たる人生なのだ。つまり、貧しいながらに暇を楽しみ、同時に大いなるパノラマを目で追って、あらゆる腐敗と、ナポリ人の街路の生活という2度と戻らない像に加わっているということを意識していれば」

 

あれ、これもウチらのことじゃね?

 

「伝統的な生活はたしかに続いているが、ただしそれは今では、旅人用の見世物として、金銭のために成されるだけだ。ポンペイの廃墟ツアーも複製品も売り物である。地元民は、支払われる金銭の代償に、伝統的な食べ方としてマカロニを手で食べてみせる。芸術家はパステルで路上に絵を描き、行き交う足で消えてしまう前に、その絵に硬貨が放られる。牛が五階建ての共同住宅で飼われている。政治的な催しが、祝祭に変えられる。」

 

なんだか、どこの国か、どこの時代かわからなくなるな。

 

というのが、ナポリのこの時代の社会編成を経験する、ということのようだ。

 




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