以下の内容はhttps://missasan.hatenablog.com/より取得しました。


「なぜCREを8年間続けているのか」登壇で話しきれなかった年末年始の自由研究ノート

先日、2026/1/21(水) に開催された CRE Camp #4 で「なぜCREを8年間続けているのか」というタイトルで登壇しました。

speakerdeck.com

登壇は10分だったのですが、スライドに載せていないことも、手元ではいろいろと考えていたので、改めて最近考えたこと全編をブログにまとめたいと思います。

私がこのテーマで話したいと思った理由は単純で、「CREのキャリアって長く続けられる仕事なの?」という不安が、コミュニティの空気として少なからず漂っていると感じていたからです。また、チームメンバーとの会話でも、採用面接でも、同じ匂いの問いに何度か出会ったことがあります。自分自身も、8年という時間が経って初めて「続けられた理由」を言語化できる状態になりました。だからこそ、今の時点の整理を共有して、次に続く人の足場になればと思っています。

自己紹介と、はてなMackerelにおけるCREの出発点

私は株式会社はてなで、オブザーバビリティツール Mackerel のCREチームでディレクターをしています。2018年3月にジョインして、同じプロダクトに向き合い続けてきました。1つのプロダクトで約8年が過ぎようとしている、というのは自分でも感慨深いですし、コミュニティの中でもなかなかレアな存在になってきたのではないかということも感じます。

はてなでCREという職種ができたのは2017年です。当時はてなに所属しておられた id:a-know さんが立ち上げたものです。

developer.hatenastaff.com

当時は他社事例も今ほど多くはなく、ようやくコミュニティイベントが生まれ始めた頃でした。入社直後に参加したイベント「JustTechTalk#11 エンジニアの新しいキャリア Customer Reliability Engineer (CRE)」の id:a-know さんの登壇で引用されていたもので印象に残っている言葉があります。

a-knowさんの登壇資料より)

この2行が、当時の自分にはやけに刺さりました。サポートや運用という文脈はどうしても「減点を取り返す」話になりがちです。障害を減らす、問い合わせを減らす、炎上を避けるなど。もちろんそれは重要ですが、「プロフィットセンター」という言葉は、信頼を扱う仕事が“価値を生み出す側”にもなり得るのだ、と視界を開いてくれました。

ここから8年経った今、Mackerelの中でCREはどういう存在になっているのか。この記事の終盤で、私なりの“答え合わせ”を書きます。

みんなが感じるCREキャリアの不安を、まず言葉にする

私がよく聞く不安は、大きく2つに集約できます。

1つ目は、専門性が捉えにくい不安です。

「CREって、結局何ができる人なの?」「市場価値は上がるの?」という問い。SREのように体系や役割の輪郭が比較的共有されている領域に比べると、CREは会社ごとの差分が大きい。スキルが積み上がっている実感が得にくい、と感じる人も多いと思います。

2つ目は、「狭間」の仕事が多い不安です。

開発・サポート・CS・営業…境界に立つからこそ、いろんなボールが飛んでくる。割り込みも多い。気づくと、誰かの“やり残し”の後始末をしている感覚になることがある。これを何年も続けて、やりがいを保てるのか、という問いです。

この2つは根っこで繋がっています。狭間に立つほど仕事は増えるのに、狭間の仕事は定義しづらい。定義しづらいから評価もしづらい。評価しづらいから、専門性としての実感が弱くなる。だから不安になる。私は、これを「気のせい」ではなく、構造上起こりやすい問題だと思っています。

事業成長とCRE:なぜ“途中から”必要になるのか

ここで、LayerX tanisukeさんの記事「CREを5年続けても、まだ『CREとは何か』悩んでいた話」に強く共感した話をしておきます。この記事で特に印象深かったのは、CREを責務やタスクではなく、スタンスや佇まいとして語っている点です。そして、事業成長の中で“構造的に”信頼が毀損され得るからこそ、それを継続的に担保する装置として専任CRE組織が必要になる、という説明でした。

私はこの整理がとても大事だと思っています。なぜなら、CREは事業の初期から常に必要というより、事業が育ち、プロダクトが成熟し、顧客が拡大・多様化していく中で「必要性が顕在化する」性質を持つからです。

登壇でもお話しした、Mackerelの例を参考に見てみます。初期は、少人数で顧客の声も近い。開発チームが直接サポートし、営業も事業責任者やPMが兼任し、意思決定も速い。多少の歪みがあっても、気合と近さで吸収できる。ところが成長すると、分業が進み、境界が生まれます。

Mackerelの変化と現在地

  • 開発とサポートが分かれる
  • 開発と営業が分かれる
  • プロダクトと顧客の距離が少しずつ離れる
  • 顧客の多様性が増えて、全員の前提が揃わなくなる
  • 技術的・運用的・契約的な複雑性が増える

この状態で起こるのが、いわゆる「狭間の問題」です。典型例を挙げると、こういったものです。

  • 営業が伝えた「できる」が、実際は前提条件つき・制約つきで、顧客が落胆する
  • 開発としては仕様だが、顧客は「不具合だ」と感じる
  • 営業は大口顧客の要望を叶えたいが、開発は全体最適のために時期と優先度を検討したい
  • リリースされるがドキュメントが間に合わずサポート負荷が高まる
  • 機能はあるのに知られておらず、顧客が価値に到達できない

ここで重要なのは、「誰かがサボっているから起きる問題」ではないことです。全員が自分の職務を全うしているのに、構造として信頼が削れていく。結果として、顧客は静かに諦め、非アクティブ化し、あるいは離脱します。私がCREを続けている理由の中心には、「この静かな毀損を、設計の問題として扱いたい」という気持ちがあります。

「信頼」を再定義する:Reliabilityだけでは足りない

CREという言葉にはReliabilityが入っています。ソフトウェア開発の文脈でReliability(信頼性)と言えば、一般的には「要求された機能を、一定の条件下で、一定期間にわたり継続的に提供できる能力」といった定義に寄ります。可用性、障害頻度、性能、耐障害性…このあたりが主戦場です。

でも、CREコミュニティで語られている「信頼」には、それだけでは収まらない何かが混ざっていると感じます。顧客はサービスを使うとき、可用性や性能だけで「信頼していいか」を判断しているわけではありません。

  • できること / できないことを、正直に伝えてくれるか
  • 困ったとき、素早く誠実に助けてくれるか
  • 仕様変更があっても、説明があり、予測できるか
  • データや権限の扱いに責任があり、透明性があるか
  • そのサービスを作っているチームを、頼ってよいと思えるか

こうしたもの全部が、顧客の意思決定の中では「信頼」の一部になっています。ここを扱うのがCREだとすると、Reliability(システムの信頼性)だけを物差しにするのは足りない。そこで私は、組織におけるTrust(信頼)を整理した研究を借りて考えるのが便利だと思いました。

Trustモデル(3軸)+Reliability(1軸)で、4つの信頼を扱う

Mayer, Davis, Schoorman(1995)は、組織関係における信頼を整理して、信頼の成立に関わる要素を3つにまとめています。

  • Ability(能力):特定の領域で影響力を持てるだけの技能・知識・経験・判断力など。
  • Benevolence(善意):自己利益のためだけでなく、信頼する側(trustor)にとって「良いことをしよう」とする志向があると信じられる程度。
  • Integrity(誠実さ):信頼する側が受け入れられると感じる原理・価値観に従い、言行が整合していると知覚される程度。

これを顧客と企業 / プロダクトの文脈に翻訳し、さらにソフトウェア文脈のReliabilityを足すと、私は次の4軸で捉えるのがしっくりきます。

  1. Ability(能力):サービスの領域について、提供者が十分な知識・スキル・経験を持ち、顧客にその体験を高い価値で継続的に届けられる。

  2. Benevolence(善意):提供者が自分たちの利益だけでなく、対価に見合う(あるいは超えるほどの)顧客の成功・利益が得られるように振る舞う。

  3. Integrity(誠実さ):仕様・契約・サポート範囲などの約束ごとを守る。データの取り扱い、権限設計、脆弱性対応などセキュリティに責任を持つ。加えて透明性を保ち、問題が起きたときに誠実に対応する。

  4. Reliability(一貫性・予測可能性):可用性や性能が安定している。機能や挙動に一貫性がある。変更の影響を予測できる。

この4軸のいいところは、狭間の問題が「どの信頼を削っているのか」に分解できる点です。たとえば、営業が誤解を招く説明をしてしまう問題は、顧客から見ればIntegrityやBenevolenceの毀損として表れます。ドキュメント不足で価値到達が遅れる問題は、Abilityに響きます。仕様変更の説明不足は、ReliabilityやIntegrityの毀損です。

そして何より、この4軸は「CREが何を大事にするか」を語る言葉になります。CREは責務の羅列ではなく、どの信頼を選び取り、解決しようとしているのか、ということをスタンスとして持っているとも説明できます。これは、登壇で触れた、CREは自分たちにとって優先度の高い「信頼」の問題を選択し、さらにそれを素早く解決し、中長期に仕組み化してスケールする高度な仕事であるという話題につながります。

MackerelのCREは何に特化しているのか:AbilityとBenevolence

MackerelのCREは、もちろん4軸すべてに跨って仕事をしています。ただ、私の実感として、特に強くフォーカスしているのは Ability(能力)Benevolence(善意) です。

Abilityについては、オブザーバビリティという領域の専門性が、そのまま顧客の成功に直結します。サーバー・インフラ、アプリケーション、各種テレメトリー、SREing、DevOps…技術的にも周辺領域的にも複雑で、顧客の状況も千差万別です。ここで「頼れる」と思ってもらえることは、プロダクトの価値そのものになります。

Benevolenceについては、「顧客が価値に到達する」ことを第一に置く姿勢です。単に問い合わせを処理するのではなく、顧客がうまくいくための道筋を一緒に設計する。ときにはプロダクトの今の限界を正直に伝え、代替案で成功に近づける。短期で救いつつ、中長期は同じ困りごとが繰り返されないように構造化し、一般化し、プロダクトやドキュメントや仕組みに落とす。

ここに、冒頭の言葉が効いてきます。

プロフィットセンターになるというのは、CREの行動が対価を得られるということです。顧客が支払う価値のある体験を作る。マイナスをゼロに戻すだけでなく、エンジニアリングを使ってプラスの価値を生む。私はこの感覚が、8年続けられた理由のかなり大きな部分を占めています。

そして、ここを本気でやろうとすると、プロダクト開発だけでは完結しない部分もあります。サポート体制、ドキュメント、コミュニティ、営業、CS、時には契約やセキュリティまで含めて「信頼が維持・強化される設計」が必要になります。結果としてCREは横断的になりやすい。だから「狭間」になる。でも、狭間で起きる信頼の毀損は放置できない。ここに仕事が生まれ続けます。

それは専門性になりうるか:職能の条件と“+α”の正体

CREが職能として成立する条件を考えると、たとえば次のような観点が出てきます。

  • 需要が安定して存在する
  • 価値提供の範囲が定義できる
  • 体系性がある(再現性・学習可能性)
  • 評価可能である(スキルの測り方がある)
  • 他職能との境界と連携が設計できる

現状、需要は明らかにあります。一方で、価値提供の範囲や体系、評価、境界は、企業ごとに設計されているのが現状です。だから「専門性が捉えにくい」という不安が生まれるのも自然です。私は、CREを職能と呼ぶには、まだいくつかの高いハードルがあると感じています。

ただ私は、ここに希望もあると思っています。CREが提供している価値は、既存の職能(サポート、CS、CSOps、開発、PM、営業など)に「+α」を載せているケースが多い。そしてこの+αの部分こそが、CRE特有の専門性として磨かれる余地があるとも考えています。

私の言葉で言えば、この+αはこうです。 組織の複雑性から生まれる“信頼の問題”を分析し、優先順位をつけ、解決策を設計し、仕組みに落としてスケールさせる力。

一方でこれは、エンジニアだけの専売特許ではないとも思っています。信頼を扱うチームに、ソフトウェアエンジニアだけが所属している必要は本来ないのではないかとも感じています。実際、MackerelのCREチームにも、過去にエンジニアではないカスタマーサクセスマネージャーのメンバーが所属していた時期があります(うまくいったことも、難しかったこともありました。これは別の機会にでも)。

だから、職種がCREであることに違和感がある、という話にも一定共感します。チーム名がCREであることにも、実は少し違和感があります。とはいえ現実としては、いまの会社の分業や評価の仕組みの中で「誰かが持たないと落ちる信頼」を持つために、CREという入れ物が有効に機能している。私の理解はそういうものです。

この+αを“個人の頑張り”で終わらせず、継続的に発揮するには、どんな組織の器がふさわしいのか。ここを一度、組織設計の言葉で考えてみます。

理想的な組織体系の仮説:+αを実行する最適な“器”は何か

ここまでで私は、CREの+αを「組織の複雑性から生まれる“信頼の問題”を分析し、優先順位をつけ、解決策を設計し、仕組みに落としてスケールさせる力」と置きました。 では、この+αを継続的に発揮するには、どんな組織形態がふさわしいのでしょうか。

私は、ここまでの考察から素朴に導き出すのであれば、の分類でいうところの イネイブリングチーム が本来的には最も相性が良いのではないか、という仮説を持っています。

なぜなら、+αの本質が「自分たちが成果物を全部抱えること」ではなく、ストリーム(プロダクト)側が信頼を維持・強化できる状態を作ることにあるからです。 具体的には、次のような動きが中心になります。

  • 信頼毀損が起きている箇所を、顧客接点のデータから発見し、原因を構造として特定する
  • 仕様・運用・ドキュメント・伝達・体制などを含めて、解決策を「設計」する
  • その設計を、ストリーム側が再現できる形(ガイド、チェックリスト、ツール、テンプレ、意思決定の型)に落とし、移譲する
  • 一時的に伴走して、チームに“インストール”する(以降は自走できる状態にする)

これは、まさに「できるようにする」「移せるようにする」仕事で、イネイブリング的です。 加えて、信頼の問題はプロダクトのあちこちに散らばり、発生源が固定されないことが多い。だからこそ、ストリームに固定で内製するより、横断の視点で“波形”を見て、チームへ入っていく形が効く、という直感があります。

一方で、現実のCREはこの理想形だけでは成立しにくいことも多いです。実際、多くの組織でCREは 常設チーム になり、加えて サポートチームやCS、CSOpsなどと兼務 になりがちです。 これは、構造上起こりやすい理由がいくつかあると考えています。

なぜ“常設×兼務チーム”になりやすいのか

1. 信頼の毀損は“今この瞬間の顧客体験”として現れる

信頼は遅効性ですが、毀損は即時に顧客体験として表れます。問い合わせ、炎上、解約予兆として出てくる。 だから短期的にはどうしても「目の前の顧客を救う」対応が優先され、CREは“現場”に留まりやすくなります。イネイブリング的な支援は本来、短期的な対応から距離を取って価値を出すものですが、信頼の問題は放っておくと損失が大きく、引き戻されます。

2. +αの材料(データ)は顧客接点に集まる

信頼の問題を設計対象にするには、具体的な顧客のつまずき、誤解、期待値のズレに関するデータが必要です。 その一次情報が最も濃く集まるのは、サポートやCSの接点です。結果として、+αをやる人が“そこにいる”のが合理的になり、兼務が自然に起きます。

3. 短期KPIの前では「信頼の設計」が後回しになりやすい

事業成長のフェーズでは、売上や開発スピード、目に見える新機能が優先されがちです。 信頼の設計は重要でも、短期のKPIに直結しないものは後回しになりやすい。そこでそれらを各チームの努力目標にするのではなく「継続的に担保する装置」として、常設チームが生まれる、という説明が成立します。LayerXさんの例を参考にした仮説です。

4. 信頼の問題は「流量が読めない」

信頼の問題が未設計のままだと、いつどれだけ発生するのかを事前に見積もれません。するとアドホックなチームのほうが都合が良いようにも聞こえますが、予測は難しくても発生自体は途切れません。この「流量が読めない」という性質は、常設チームになる理由というより、むしろ兼務になりやすい理由になります。専任にすると、波が来ない期間は稼働が余り、波が来たときは一気に溢れる。だから現実的には、サポート/CS/開発支援などの安定業務と兼務し、波を吸収する形のほうが機能する場合があります。

ここまでを踏まえると、私は次のように整理しています。

  • 理想の仮説:CREの+αを最大化するなら、イネイブリング的に動ける形が強いのではないか
  • 現実:ただし信頼の問題は顧客接点から噴き出すため、受け皿としての常設性・現場性が必要になりやすい
  • 結論:多くのCREが「常設×兼務」のハイブリッドになっているのは、一定の合理性がある

そして、これは次の話(狭間を設計する仕事に変える)につながります。 重要なのは、常設×兼務それ自体を善し悪しで断じることではなく、狭間を「割り込み」から「設計」に変えられるかです。次は、その変換の具体を整理します。

狭間を“割り込み”のまま抱えると、チームは消耗戦になっていきます。 狭間を“設計対象”に変換できると、この現場性はむしろ武器になっていきます。

「狭間」を割り込みで終わらせない:設計する仕事に変える

次に、もうひとつの不安、「狭間の仕事が多く、やりがいを保てるのか」について。

私がここで大事だと思うのは、狭間を“割り込み”として扱うのではなく、狭間を“設計対象”として扱うことです。割り込みは無限に来ます。でも、構造として捉え直せば、減らすことも、再発させないことも、スケールさせることもできます。

具体的には、次のような問いに変換します。

  • これはどの信頼(4軸)の毀損として起きているか
  • それは自社にとって優先度の高い軸か
  • 毀損の原因はどこにあるか(説明不足か、期待値のズレか、プロダクトの仕様か、ナレッジの未整備か)
  • 一回の対応で終わらせるのではなく、どこに“仕組み”を作ればいいか
  • 誰がオーナーを持つべきか(CREが永遠に抱えない設計になっているか)

こうして狭間を設計に変えると、仕事は「振り回される」から「組み立てる」に変わります。さらに、プロダクトの成長に応じて狭間の性質自体が変化するので、同じ問題を延々と解いている感覚にもなりにくい。8年続けてなお、探求できるテーマが残り続けているのは、私にとっては大きいです。

一方で、正直に言うと、MackerelのCREチームでも「信頼の設計」を、明確に職務として持てているというわけではありません。現実には、もともとの専門性(サポート、CS、開発など)への期待値が先に立つ場面も多いです。でも、今回こうして整理してみると、+αとして“すでにやっている”ことが確かにある。それを言語化できたのは自分にとっても面白い発見でした。では実際に、どこまでをチームの職務として具体的に組み込んでいくかについては、チームメンバーとも議論が必要です。

8年続けられた理由:フェーズが変わるたび、問いが変わる

最後に、「なぜ8年続けられたのか」を、いちばん素直な言葉にするとこうなります。

フェーズが変わるたびに、問いが変わるから、飽きない。

初期のがむしゃらな時期は、近さと気合で吸収できる課題が多い。成長すると、分業と境界が生まれ、信頼の毀損が構造として現れる。成熟すると、品質・期待値・運用・契約・セキュリティ・変更管理など、信頼を維持するための設計が効いてくる。さらに変革期に入ると、新しい価値を作る過程で未成熟さと向き合いながら、同時にすでに積み重ねた信頼を落とさない工夫が必要になる。

この一連の変化の中で、CREは同じ場所に立っているようで、実は見ている問題が少しずつ変わっていきます。だから飽きない。むしろ、積み上げた経験が効くほど、解ける問いの難易度が上がっていく感覚があります。

最後に、私は、CREは10年は余裕で続けられる仕事だと思っています。さらには、10年求められる仕事だとも思っています。

信頼は事業の土台です。昨今は不確実性が増し、AIの登場によって、顧客が提供したデータがどう扱われるのかも見えにくくなっています。そうした状況では、プロダクトが顧客から信頼されることが、事業継続にとってますます重要な要素だと考えます。 そして、その重要性を引き受けたいと思える志向(モチベーションやパーソナリティ)そのものが希少であり、価値があるとも感じています。

こういったCREについての探求を一緒に面白がってくれる人がいたらうれしいです。コミュニティとのつながりのなかでそういった仲間に会えることを、これからも楽しみにしています。

子育て中でも K-POP カムバ初速を観測したいので、Mackerel にメトリックを送ってみた

Mackerel Advent Calendar 2025 5日目の記事です。

先週ちらっと確認したらまだ 1 週目が埋まっていなかったので、「小ネタでもいいから何か書くか…」と思い、以前からやってみたかった K-POP カムバ初速のメトリック取得に挑戦してみました。 飴玉一つ入ってたくらいの感じでお読みください。

K-POP が好き。だけど時間がない

私は K-POP が大好きで、基本的に何でも聴く雑食タイプです。

入門は TWICE。その後各種オーディション番組にはまり、ENHYPEN を主に推していました。最近は(KPOPではないけど)XG、ゆるめに LE SSERAFIM、ILLIT あたりも追いつつ、今はいろんなグループの動向を眺めています。いろいろありましたが、NewJeans も曲が好きでよく聴いていました。

ただ、子どもが生まれてからはまとまった時間が取れなくなってしまい、活動としては「新曲が出たら観る」「24 時間でMVどのくらい伸びたかな〜とチェックする」くらいのうすい活動が限界に。

なので、この初速の観測を自動化できたら楽しそうだなと思ったのが今回のモチベーションでした。

やりたかったこと

  • カムバ直後の再生数の伸びを見たい
  • 複数グループを並べて観測したい

バイブコーディングにがっつり頼り、いろいろと試しながら形にしていきました。

指標選びでつまずいた話

Google トレンドは使えなかった

最初は「人気度=Google トレンド」でメトリック投稿しようと思ったのですが、Google トレンドは以下の仕様により断念しました。

  • 取得した1 週間内での最大値を100とした相対評価になる
  • 複数グループを指定するとグループ間の相対評価になる

つまり、絶対値として毎時間メトリックを取る用途には向かなかったのでやめました。

YouTube MV 再生数に切り替え

そこで MV の再生数を使うことにしたのですが、これがまた地味に難しい。

  • リリース直後の MV をどう特定するか
    • MV はリリースされるまで URL がわからないので、「最新 MV を探す仕組み」が必要。
  • グループの公式チャンネルに出ない問題
    • グループ公式チャンネルではなく、レーベル公式チャンネルに MV が出ることが多く、他グループのものもあるので検索に工夫が必要。
    • 「グループ名 + MV」で検索するようにしました。
  • MV っぽいけど MV じゃない動画が多い
    • teaser / remix / dance practice などが出てくるので除外フィルタを追加。
    • さらに ILLIT は ショート動画が本編 MV とまったく同じタイトルで出てくる という運用がされていることがわかりました。
      • 60 秒以内の動画を排除するようにしました。

手順の全体像

  • レーベル公式チャンネルから最新検索結果 50 件を取得
  • 条件に合う最新 MV があれば再生数を取得
  • 1時間ごとに View 数の 絶対値前回との差分 をメトリックとして投稿
  • 新しい MV が出たら自動的にそちらに切り替わる(無限に対象が増えない)

穴のある仕組みではありますが、まず動かすことを優先しています。

補足

後から気付いたんですが、今回はコード側で差分値を出して投稿しているんですが、サービスメトリックには、グラフ定義側で差分値を出す機能がありました...

グラフ定義の設定画面

プログラムでとった差分と雰囲気の違うグラフが出るので、裏の仕様は気になるところですが、調べるところまで間に合いませんでした。

左がグラフ定義の差分値、右がプログラムの差分値

YouTube API クォータ問題との戦い

メトリック取得までは順調だったのですが、翌朝見ると 2 時以降エラーで止まっていました。 原因は YouTube API のクォータ exceeded

そこで最新動画検索のタイミングを、K-POP の MV がよく公開される

  • 13 時
  • 18 時

+1時間後(14時・19時) に限定しました。

クォータ計算的にも十分余裕があるのを確認し、この運用に落ち着きました。

スケジュールと実行は GitHub Actions に任せていますが、これが10〜30分くらいの幅でスケジュールがズレるし、なんならたまにキューから漏れるので差分値が不安定になる(取得間隔が短いと少なく、長いと多く見える)のは悩ましいところです。

観測対象グループ

最初は以下の 4 グループを対象にしました。

  • IVE
  • aespa
  • LE SSERAFIM
  • ILLIT

直近リリースがあるわけではなかったので変化は少なく横ばい気味です。 そこで、12/1 にソロアルバムを出した 少女時代 TAEYEON も追加しました。

結果(グラフ)

絶対値のほうは大きな動きがなくて少しさびしいのですが、差分値は若干動きがあっていい感じです。この1時間で少なくとも4万人の人がKPOPのMV観てるんだな〜とファンダムの規模感を感じられて嬉しい。

3日ほど動かしてみたグラフ

毎日10-12時あたりの視聴数が多いように見えます。みんな午前中にMV観るんだ〜と思っていたら、これがよく見ると、9時台と11時台のスケジュールが毎回スキップされていることに気がつきました(画像からはわかりずらくてすみません)。2時間分の差分になってしまっているのであたかも高い値に見えてしまっています。とても残念。

10-12時あたりが跳ねているように見える

TAEYEONだけに絞ると、MVのリリース直後にぐっと視聴が伸びているのがわかって楽しいです。

TAEYEONだけに絞るとこんな感じ

グラフ描画で困ったところ

今回はシンプルに サービスメトリック として投稿しました。 サービスメトリックはAPIでシュッと投げるだけでいいので、投稿は楽なのですが、グラフの描画方法を自由に操作できるわけではないので、物足りなさがありました。

  • メトリック名でグラフの所属が決まるので、後から「このグループだけ別グラフにしたい」などの変更が難しい
  • 絶対値と差分値で同じグループでも色が揃わない

後から好きに組み合わせられる ラベル付きメトリック にしておけばよかったなと後悔しています。

もっと遊ぶなら

他にもいろいろ追加したいものなど、妄想が進みます。

  • グループ数をもっと増やす(ヨジャだけでなく、ナムジャも見たい。クォータと相談しつつ)
  • MV 再生数以外の指標(SNS の盛り上がり、音源のランキングなど)
  • メトリック投稿とは別に、デビュー情報・カムバ情報の通知

閾値を越えたり下回ったりしたら通知するとか、新MVが追加されたら通知するなど監視ルールも整備して、普段ならネットサーフィンして集めているような情報を自動で Slack や LINE に流せるようにしたいです。

おわりに

今回の試みは趣味活ではありますが、実際にやってみると監視基盤をどう設計するかという観点で、思った以上に学びがありました。

1. 「何を計測したいか」を決めることの難しさ

Google トレンドを断念し、YouTube 再生数に切り替えるまで、 “値として安定して蓄積できる指標とは何か” を考えることになりました。

  • 相対値か絶対値か
  • 時間軸で値の意味が変わらないか
  • 外部サービス依存の揺らぎを許容できるか

といった初期設計の重要性をあらためて感じました。

2. 制約が監視設計そのものを変えていく

実際の現場でも上記のような“外側の事情”が、そのまま監視ロジックの形を決めてしまうことがあると思います。

  • API の実行コスト
  • データ転送量
  • ストレージ費用
  • レートリミット

私も今回、YouTube API のクォータに合わせて実行頻度を下げざるを得なかった、という「使うものの制約に監視設計が引っぱられる」という体験ができました。

加えて今回は 差分監視 を行っているため、GitHub Actions のスケジュール揺れやドロップがあると、差分の意味自体が変わってしまう問題にも直面しました。

趣味活なら「まあいいか」で済みますが、仕事でこれが起きていたら確実にストレスになりそうで、データ品質をどう担保するかが監視設計において本質的なテーマだと再認識しました。

今回ひさびさにこういった、ちょっとした趣味メトリックを投稿するということをやってみましたが、思いがけない学びも多く、やっぱり楽しいかったです。

忙しい中で推し活をしている方、気が向いたらぜひ皆さんも “推しのメトリック” を投稿して遊んでみてください。

Mackerel CREチーム ディレクターが育休復帰3ヶ月でやったこと

Mackerel Advent Calendar 2024 2日目の記事です。

こんにちは。Mackerel CREチームのディレクターをしている id:missasanです。 ちょうど昨年のこの日は土曜日で、週明けからは産休前に有給をつかって一週間ほど前倒してお休みすることになっていました。前日の12月1日まででかいお腹でオンラインの商談に出たりしていて、今改めてカレンダーを眺めるとあの体調でこれやってたのだいぶ気合入ってたな、と我ながら感心してしまいます。あれから一年経つのかと思うととても感慨深いです。生まれた子どもも、もうすぐ1歳です。

そして今は無事復帰して再び働いているのですが、ここでは2024年9月に職場復帰してから11月までの3ヶ月でどんな仕事をしていたのかを振り返ってみます。 各社さまざまな活動をしているCREの、さらにディレクターということで少しばかりレアな職業ですが、ちょっと覗き見してやろうくらいの気持ちでお読み下さい。

9月:10周年記念イベント(Mackerel Tech Day)プロジェクト

復帰してはじめに取り組んだのは10月22日に開催されたMackerelのオフラインイベントでした。 復帰直前の上司との1on1でも何から始めましょうか、というのは相談していて、運営メンバーが大変そうだからまずは手伝ってほしいということでこのプロジェクトに入りました。

www.youtube.com Mackerel Tech Dayの様子はYoutubeアーカイブも公開しているので、ぜひ年末年始、帰省の移動中のお供などに聞いてみてください。

CREのメンバーがコアの運営メンバーとして動いていて、イベントの企画から関連するコンテンツの制作、集客までさまざま担当していました。 私は、企画やタスクの交通整理や、細かく発生する意思決定の後押しなどをしていました。

イベント当日は、X投稿担当をしていました。

イベントの盛り上げ記事として、CREメンバーで座談会をしたブログ記事も出しました。 運営に参加するメンバーの思いがたくさん聞けたいい機会でした。

mackerel.io

次はランチタイムのオンラインイベントやるよ

connpassを公開していないので、詳細がまだお伝えできないのですが、12月半ばにオンラインイベントを企画しています。 Mackerel Tech Dayで登壇予定だったのが体調不良で不参加になってしまったプロデューサーのid:wtatsuruと、その代打として急遽登壇をまかされたTLのid:ne-sachirouとMackerel Tech Dayを振り返る会をやります。ランチタイムにながら聞きできるものになる予定です。

10月:Mackerelの価格改定に伴う契約見直しのプロジェクト

Mackerelでは、11月1日におおきな価格改定がありました。

mackerel.io

イベントのお手伝いが落ち着いた後は、11月1日の価格改定にむけて、既存のお客さまにご提供している特別契約の見直しを行うプロジェクトにフォローとして入りました。 もともとこのプロジェクトは、開発、ビジネス、CREのメンバーが集まって進められていたのですが、いよいよ11月1日が迫ってきてスピード感を出したいということもあり、私も参加してまたも交通整理やお客さまへのご連絡を一部巻き取ったりしてお手伝いしていました。お客さまにもご協力いただき、無事に11月1日を迎えることができました。

11月:新規機能開発に関わるさまざまなプロジェクト

11月に入り、価格改定の作業も落ち着いてきた頃、今度は新機能開発に伴うあれこれに着手し始めました。 もともと、これこそが今期の最優先トピックでもあったのですが、イベントや価格改定があり、復帰2ヶ月経ってやっと本腰を入れ始められたというところです。

Mackerel Tech Dayでも触れていたのですが、現在MackerelはAPM機能の企画開発に取り組んでいます。 最近のOpenTelemetryへの対応やVaxilaの利用開始なども含めた、オブザーバビリティプラットフォームを目指すという、この規模の大きい意思決定は、私が入社してからだと、2019年のmackerel-container-agentの開発とそれに伴うマイクロホスト概念の誕生、同じ年の機械学習によるロール内異常検知などが思いあたります。 当時も、Mackerelの新しいコンセプトの理解、機能の理解、お客さまに説明するための資料作成、機能のβ版利用に向けた申込み方法の整備など、やることがたくさんあったことを覚えています。

mackerel.io

Mackerelが大きく変化するとき、それをお客さまに伝えていくCREの仕事も大きく変化したりミッションが変わったりします。ようは「出番が増える」ことになります。これが個人的にはとてもワクワクします。復帰していきなりこの状況に身を置けるのは幸せなことです。

実際に手をつけているのは以下のようなことです。

KPIや活動方針の見直し

新機能開発は不確実がことが多いです。特にお客さまとやりとりするCREは、不確実ながらも先を見据えて進む必要があります。まずは今期、とにかく先に進むための軸になるようなKPIや活動方針を整理しました。すでに復帰前に設定された目標はありましたが、あらためて精緻化したりどう解釈して進めるのかをメンバーと話し合ったりしました。

ユーザーインタビューの企画

不確実なことが多いですが、それをただ待つだけじゃなく、開発チームと一緒に解像度を上げていく仕事もしています。

プロダクト企画の詳細を詰めるためには、実際にお客さまの声を聞いて、解決したい課題がなんなのかを分析していく必要があります。 インタビューはPdMがメインとなって進めますが、ペルソナを精査してインタビュー先を検討したり、インタビュー項目を作成したり、お客さまに実際にインタビューをお願いするところはCREも入って進めています。プロダクトとお客さまの橋渡しであるCREならではの仕事です。

Mackerel オブザーバビリティホワイトペーパーをつくる

というお題目でプロジェクトを進めていますが、アウトプットがほんとうにホワイトペーパーの体裁を取るのかはまだわかりません。 プロダクト企画の中ででてきたメッセージングなどを拾って、お客さまに届きやすい形に再構成するというところをCREが旗を振りながら進めています。 ホワイトペーパーにするならこれを書きたい、という項目を出し、足りないところはプロデューサー、PdM、開発者などにヒアリングしながら内容を埋めていっています。 これが最終的には、CREやフィールドセールスがお客さまにMackerelが考えるオブザーバビリティや、MackerelがつくるAPMがどういうものなのかを説明するためのひとつのベースになっていくと考えています。

APMに関する利用実態調査アンケートの企画

企業のAPMに関する課題や期待を調査するためのアンケートを準備しています。ここで得られた情報はよりよいプロダクト開発やサービス改善に活かしていく予定です。こちらも近日中に公開予定なので、もしお手元にアンケートのお願いが届いた際はご協力をいただけるとうれしいです。

Mackerel APMの「ちょうどいい」を定義しよう

MackerelはいわばAPMの分野においては後発隊です。今から開発してAPMに期待されるすべての機能を揃えていくにはそれなりの時間がかかると予想されます。なので、今のMackerelやMackerelのお客様にとっての「ちょうどいい」ものとはどういうものなのか、というのをみんなで考えていくという少し抽象度の高い活動を、直近開発する具体的な機能の企画と並行して行っています。これもPdMの id:RyuGoo と一緒に、ワークショップの企画などを進めています。チームで丁寧に対話を進めながら抽象的な概念に共通の像を結んでいくような、チームビルディングとしての役割もある活動になると思っています。

おわかりでしょうか。CREは普段お客さまをサポートする仕事、と思われることも多いですが、このようにPdMの仕事を一部担うようなことも、お客さまとのやりとりと並行して、ばりばり行っています。 特に新機能が開発されるシーンでは際立ってその傾向が顕著になります。

結局、何をしていたのか?

こうして振り返ってみて、結局自分はこの3ヶ月CREチームのディレクターとしてどういう役割を担っていたのか?ということを考えてみました。

まず感じたのは、私の仕事は概ね「交通整理」と「考える仕事」に集中しているな、ということです。そしてこれは、だいぶうまくいっている状態だと思っています。

産休に入る前は、ディレクターと言いながら、かなり現場仕事にも手を出しつつ、一緒に走ってくれるメンバーのすぐ横にびったりひっついて伴走する、みたいな動きをしていました。というかしてしまっていました。「してしまっていた」というニュアンス通り、これはあまりよくなかったと思っていて、思いつつ改善できずに苦しんでいたところでした。マネージャーが現場から手を離せられないという典型例だったと思うし、手伝っているようでメンバーの自由を奪う足かせにもなっていたんじゃないかと思っています。今もそのけが完全になくなったとは言えませんが、それでも、前よりかは改善しているんじゃないだろうかと思います。

それにはやはり産育休で無理やり仕事を剥がされたというのが大きくて、もしかすると私の思いで無理に形を変えることになっていたかもしれないものが、メンバーが動きたいように動いた結果おさまりのよい形になったような部分が少なからずあるんじゃないかと思っています。 今はその形を大事にしつつ、チームのために自分こそがやったほうが良いことを見つけたり、進めるたりというのをなるべく意識してやっていきたいです。

結果、今私には、関係者が多かったりタスクが複雑なプロジェクトの「交通整理」をしてまたメンバーに戻す仕事や、目に見える成果より、目に見えなかったり、長期的な効果があるようなことを「考える仕事」が残ったし、これをやるべきなんだな、と最近は思っています。

ちなみに、以前自分の記事で書いた図でこんなものがあります。この中のtoBの部分がMackerelのCREの主な仕事です。CREチームのディレクターである自分は今ここを全然やっていません。 通常の業務として設計されて、チームメンバーがごりごり進めてくれています。それによって私はほんとうに上に書いた2つに集中できています。チームメンバーに感謝でいっぱいです。

https://developer.hatenastaff.com/entry/2020/10/30/093000 より

この図を書いたのもだいぶ前になってしまったので、今は変わってきていることがないかなども考えたいですね。

CREは仲間を探しています

最後つい、宣伝で締めたくなってしまうのですが、CREは仲間になってくれる人を探しています。 APMの利用経験があったり、オブザーバビリティに関心がある方とお話したいです。 気になった人はぜひお声がけください。XのDMも歓迎です。

hatena.co.jp

明日の Mackerel Advent Calendar 2024 は同じくCREの id:do-su-0805 の記事です。お楽しみに。

terraform-provider-mackerel で既存環境をimportするときのTips

この記事では、terraform-provider-mackerel で既存環境をはじめてimportするときに気になりそうな、ささやかなTipsをまとめます。 importについては、Terraformに慣れない人でもぱっと試せるように簡単な手順も記載します。

terraform-provider-mackerel とは?

Terraform Registry に Mackerel 用の Terraform Provider を公開されています。 これを利用するとMackerelのWebコンソールの設定をIaC化することができます。

mackerel.io

実際の Terraform Registry はこちらです。

既存環境をIaCに移行するにはimportを使う

おそらく、既存の設定を持っている人がほとんどだと思うので、ここでは既存環境をIaCに移行することを想定したTipsを書いていきます。 既存環境の移行には、基本的にはimportを使っていくことになります。

importの流れ

terraformの設定を書いていくディレクトリと、main.tfを作成します。

> mkdir terraform-mackerel-settings
> touch main.tf

main.tfに以下のようにterraform、terraform-provider-mackerelのバージョンを記載します。

terraform {
  required_version = ">= 1.1.0"

  required_providers {
    mackerel = {
      source  = "mackerelio-labs/mackerel"
      version = ">= 0.0.1"
    }
  }
}

importコマンドを実行します。 監視ルールの例を記載します。

> terraform import mackerel_monitor.connectivity <monitorId>

一回目は以下のようにエラーが出力されます。

Error: resource address "mackerel_monitor.connectivity" does not exist in the configuration.

Before importing this resource, please create its configuration in the root module. For example:

resource "mackerel_monitor" "connectivity" {
  # (resource arguments)
}

exampleに従って、main.tfに以下のように空のresourceを追記します。

resource "mackerel_monitor" "connectivity" {
  # (resource arguments)
}

再度importを実行します。

❯ terraform import mackerel_monitor.connectivity <monitorId>
mackerel_monitor.connectivity: Importing from ID "<monitorId>"...
mackerel_monitor.connectivity: Import prepared!
  Prepared mackerel_monitor for import
mackerel_monitor.connectivity: Refreshing state... [id=<monitorId>]

Import successful!

The resources that were imported are shown above. These resources are now in
your Terraform state and will henceforth be managed by Terraform.

terraform state showコマンドを実行すると設定の中身が見られるので、それを参考にmain.tfに設定を追記します。

❯ terraform state show mackerel_monitor.connectivity
# mackerel_monitor.connectivity:
resource "mackerel_monitor" "connectivity" {
    is_mute               = false
    name                  = "connectivity"
    notification_interval = 0

    connectivity {
        exclude_scopes = []
        scopes         = []
    }
}

terraform planを実行し、差分がなければimport成功です。

❯ terraform plan                           
mackerel_monitor.connectivity: Refreshing state... [id=<monitorId>]

No changes. Your infrastructure matches the configuration.

Terraform has compared your real infrastructure against your configuration and found no
differences, so no changes are needed.

Idの取得方法

importの実行にはMackerelの設定に払いだされている各種Idが必要になります。

各種IdはMackerelの公開APIを利用すると取得することができます。 例えば、監視ルールのIdを取得したい場合は以下のようにcurlなどを実行します。

> curl -GsS \
     -X GET \
     -H 'X-Api-Key: '<YOUR_MACKEREL_APIKEY> \
     -H 'Content-Type: application/json' \
     https://api.mackerelio.com/api/v0/monitors | jq '.monitors[] | [.name,.id]'

取得したIdをimportコマンドに渡してあげれば実行することができます。

> terraform import mackerel_monitor.example <monitorId>

その他必要なId類は以下APIで取得できます。

terrafomerを使うこともできる

社内でつくったという話は聞いてないし、terraformerないだろうなと思いながら念の為探したらありました。 見ると、Mackerelユーザーの方がつくってくださったようです。ありがたい!

これを利用すると、tfファイルなどが生成されますし、もしそのまま使わないとしてもAPIで一つずつIdを集めてくるという手間が不要になるので、だいぶ楽ができそうです。

github.com

通知グループでチェック監視の通知先振り分けを行っている場合の注意

通知グループでチェック監視を通知対象として指定している場合、設定チェック監視のIdを指定する必要があります。 既存環境の移行の場合は、通知グループのimportを行うと現在指定されているチェック監視のIdは設定に含まれるので困ることはありません。

ですのでこれは、IaCでの運用が始まって新しいチェック監視を通知グループに指定したい場合などのTipsです。

チェック監視はその他の監視ルールと違い、監視ルールの一覧APIの結果には含まれません。

チェック監視のIdは、監視ステータスの一覧API で取得することができます。 このAPIは該当のチェック監視が設定されたホストIdを指定して実行することができます。

curl -GsS \
     -X GET \
     -H 'X-Api-Key: '<YOUR_MACKEREL_APIKEY> \
     -H 'Content-Type: application/json' \
     https://api.mackerelio.com/api/v0/hosts/<hostId>/monitored-statuses | jq '.monitoredStatuses[] | select(.detail.type == "check")'

(ただし、結果にはチェック監視名が表示されませんので、messageの内容で識別するなど工夫が必要です。残念ながらmonitorIdを指定して、チェック監視名を取得するAPIなどは現在用意されていません。)

サービス・ロールをIaCにする際は注意が必要

サービス・ロールは、Webコンソール以外にもmackerel-agent.conf上でも以下のように指定することができます。

roles = [ "My-Service:app", "Another-Service:db" ]

mackerel.io

オートスケールする環境など、頻繁にイメージからサーバーを作り直す環境などでは、こうした指定を行っている場合もあります。 この状態で、Webコンソールの設定をIaCにしてしまうと、mackerel-agent.confを修正した場合に、設定に差分が出てしまう場合があります。 Webコンソール以外でもサービス・ロールを管理している場合は、無理にIaC化をしないことも選択の一つです。

チェック監視同様、設定がサーバー上にある類のものは、IaC化が難易度が高い部分です。 IaC化を優先するのであれば、なるべくサーバー上に設定を持たない工夫が必要になります。

以上です。 Terraformの玄人の方や、Mackerelの設定を含めバリバリIaC化されている方はもっと有益なTipsをお持ちだと思うので、ヒアリングできる機会があればそういった情報もシェアしていければよいなと思います。

参考にしたもの

自分がTerraformまだまだなのでいつも雰囲気でHandson環境つくったりしてましたが、あらためて前から積んでいた以下の書籍読んでいろいろ理解が深まりました。

よいNPSの活用方法について学ぶ

自社プロダクトでNPSを取得しはじめて随分経つが、まだまだ正しく活用できていると言えない。 送付方法やスコアの結果ごとにプレイブックを作成するなど、実践的な方法が書かれているブログ記事を紹介する。

www.useriq.com

NPSの送付方法

  • NPSの調査 メールの場合の返答率は 5〜15%
  • アプリケーション内展開の場合は 60%以上 (ほんとうに?)

NPSを依頼するタイミング

  • ワオモーメントの直後
  • 電話でのフォローアップがうまくいった後
  • オンボーディングの最終ステップとして

以下が目的となっていない場合、調査を行うのが最善の方法かどうかを再度検討しよう。

  • わからないことを明らかにするため
  • 仮説を検証するため
  • 受信者に自分の信念を再確認してもらうため

NPSデータの使用方法

DETRACTORS: 0-6

まだ解約していないが、これから解約する可能性のある顧客。

  • NPSに残した自由形式のコメントと、最近のアカウントアクティビティを確認する
  • フォローアップミーティングをスケジュールして、次のステップと最善の行動プランを決定する
  • カスタマーヘルススコアを監視し、状況が修正されていることを確認するために緊密に連絡を取り合う

PASSIVES: 7-8

Detractorに対するように前のめりになりすぎないように注意。適切な対応を行っていれば自然とPromoterに移行する。

  • 満たされていないニーズを明らかにする。フィードバックを求め、長期的な目標をよりよくサポートする方法を学ぶ
  • ニーズに対応する。
  • アドボカシーに向けて。ニーズを満たすことでPromoterに変化することをカスタマーヘルススコアから観測する

PROMOTERS: 9-10

DetractorやPaasiveのほど注意を払う必要はない。アドボカシーを高める対象が誰かを明らかにするとよい。

以下のような方法でプラットフォームを提供する。

学び:次に何をする?

これを読むと次のステップとして必要そうなことは以下だなと思った。

  • NPSの送付方法を見直す
  • NPSを送付するタイミングを考える(何を仮説検証したいかを明らかにする)
  • 結果ごとにどういうアプローチをするかプレイブックを作成し、運用に落とし込む

Product Led Growth を実現するための5つの要点

昨日の記事でまとめきれなかったので引き続き OpenView の Product Led Growth についてのブログ記事を紹介する。

昨日の記事はこちら。

missasan.hatenablog.com

紹介する記事はこちら。

openviewpartners.com

Product Led Growth を実現するには、いくつかの要点があるとのことで、ブログから気になった点をピックアップした。

  • デザインだけでなくエンドユーザーのペインを解決する設計が重要
    • 今やデザインは差別化要因からテーブルステークス(最低限必要なもの)に格下げされた
    • 成功するソフトウェア製品は、主要なベルソナとペインに合わせて調整されている
      • エンドユーザーペイン:煩わしいタスクを自動化または簡素化したい
      • エクゼクティブペイン:パフォーマンスの低いKPIを改善することでROIを向上させたい
  • ユーザーが住んでいる場所にプロダクトを配布する
    • エンドユーザーにプロダクトを配布するとき、彼らをビジネスマンとして考えるのではなく、たまたま仕事をしている一消費者として考えること
    • 営業担当はSalesforceに、オンラインでものを売る人はShopifyに、知識労働者はChromeかSlackに住んでいる
    • Chromeに住んでいるならChromeウェブストアから、SlackならSlack AppDirectory、スマホならAppStoreから配布する
  • 簡単に始められるようにする
    • セルフサービスのサインアップとオンボーディング
    • 人間を介す(NG)
      • デモリクエスト、セールスとの会話、契約手続き、オーダーフォームなど
    • 人間を介さない
  • 支払い情報の登録の前に価値を提供する
    • アハモーメント(ユーザーの苦痛を解決する最初の瞬間)は購入以前に
    • それ以前に購入処理を入れるとコンバージョン率は低下する
  • 最後にセールスを雇う(適切なタイミングで雇えということ?)
    • 今、最初に必要なのはサポート。自動化できないものやコミュニティに任せることができないものについてエンドユーザーを支援する
    • 製品自体は使用量の増加、バイラルループ、コラボレーション、口コミを通じて拡大を促進する。利用が個人からチームに拡大するにつれ、新しいユースケース、統合を経て請求書払いのチームアカウントへの切り替えについて支援が必要になる
    • 製品の新機能やリリースを最大限に活用できるよう積極的に支援する必要があるため、サクセスチームを雇うのに最適な時期がくる。サクセスチームが拡大に貢献し、製品が価格とコストで問題になるようになる
    • 最終的には、予算の承認、エグゼクティブスポンサー、調達、法務などともやりとりする必要が出てくる。ここがセールスチームを雇う絶好の機会

このような感じでこの記事は、基本的な要点がおさえられつつ、SlackやSalesforceなど馴染み深いプロダクトが各所に例として挙げられていて非常にわかりやすいのでPLGについてとりあえず読む記事としておすすめ。

Product Led Growth 〜 エンドユーザーがソフトウェア購入の意思決定者となる時代

Product Led Growth という言葉を耳にすることが増えた。

少し調べてみたところ、OpenViewというアメリカのベンチャーキャピタルが提唱した概念ということがわかったので、OpenView の blog に公開されていた基本概念について書かれた記事をいくつか読んでみた。

openviewpartners.com

Product led growth とは

Product led growth is an end user-focused growth model that relies on the product itself as the primary driver of customer acquisition, conversion and expansion.

Product led growth とは、エンドユーザーを中心とした成長モデルであり、顧客の獲得、コンバージョン、拡大の主な原動力として製品そのものに頼ることです。

「エンドユーザーを中心とした成長モデル」なのが Product led growth らしいが、これだけだと少しわかりにくい。

ソフトウェアの歴史 〜 CIO Era、Exec Era、End User Era の3つの時代

次の記事にかかれていた3つの時代の変遷を読むと、どのようにしてソフトウェア購入の意思決定がエンドユーザー主導に移り変わってきたのかがイメージしやすいので紹介する。

openviewpartners.com

  • CIO Era
    • 物理センターに物理サーバーが導入されていた。モノリス
    • 非常に高価
    • CIOが気にするのはITの互換性。既存の環境で動作するかどうか
    • フィールドセールスがCIOを豪華なステーキディナーに連れて行く
    • “sales-led growth
  • Exec Era
    • 2000年代に始まった
    • 仮想化技術の台頭。シングルインスタンス、マルチテナント
    • 高価なソフトウェアを購入する必要はなく、安価に借りることができるようになった
    • 技術者以外のエグゼクティブが新しい購入者となった
    • 意思決定の基準はROIとKPI
    • “marketing-led growth
  • End User Era
    • 今ここにきている
    • インフラは弾力性(Elastic)を持ち柔軟に拡張できる。開発者はAPIやモジュラーツールを活用できる
    • 製品はこれまでになく安価(通常は無料)
    • ソフトウェアの購入はエンドユーザーにまで民主化した
    • 意思決定の基準は個人の生産性
    • “product led growth

ソフトウェア購入の意志決定がエンドユーザーに委ねられつつある

この時代の流れは、感じるところがある。Mackerelの導入を支援していても、エンジニアが利用するツールの意思決定が現場に委ねられているケースは多い。 自分も以下のブログでソフトウェア購入の意思決定の種類についてまとめている。

missasan.hatenablog.com

わたしのブログではボトムアップというふうに表現しているが、この「現場の評価をえられなければ稟議にあがることもない」という直感というか経験に基づいて実感されたものはまさに End User Era の世界観という感じだ。

トップダウンの色が強い企業であれば、CTOに自社に有益なプロダクトとして認められれば、導入は比較的スムーズに進むだろうし、ボトムアップの企業では、たとえCTOや事業責任者と信頼関係が築けてビジョンを共有し合うことができたとしても、実際に影響力を持つ現場の技術者に支持されなければそもそも稟議が役職者のもとにあがることがない。

テクニカルソリューションのCSMが考慮すること- 「カスタマーサクセス・プロフェッショナル」 読書メモ - missasan's notebook

Product led growth と カスタマーサクセス の関係は?

プロダクトがいかにエンドユーザー個人の生産性を上げることができるかにプロダクトの成長がかかっているというのが Product led growth らしい。 セールスよりカスタマーサクセスによるハイタッチよりプロダクト自体がもっとも効果的にすばやく顧客に価値を届けるという考えにリンクしていて、興味深い。

speakerdeck.com

Product led growth 視点での、カスタマーサクセスや、カスタマーサクセスとプロダクトの繋がりに関する記事などを見つけたらまたレポートしたい。




以上の内容はhttps://missasan.hatenablog.com/より取得しました。
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