2025年12月3日(水)19:00公演
中村恵理ソプラノ・リサイタル

お世話になっております。
三島でございます。
この日はオペラ歌手の中村恵理さんのリサイタルに行って参りました。
2024年の奈良公演の際は次のソロの演奏会はいつになるのだろうと思いましたがそれからこの日を含め3回も機会がありありがたい限りです。
この日は昨年の浜離宮朝日ホール公演同様にwithテノールプログラムでした。重唱が聞けるのはありがたいけれどwithテノールであるが故に曲目やパフォーマンスが想像できてしまうのは寂しいものです。
今回はオールイタリア、プッチーニ先生盛り盛り万人受け万歳プログラムなので顧客満足度は高い(推定)。
それでは感想いってみよー。
(以下敬称略)
歌曲パート
古典歌曲から近代歌曲まで8曲を30分程度で歌った。
“Le violette”(A.スカルラッティ作曲)ではプログラムにプッチーニを組み込みつつも声自体の軽さが健在なことを教えてくれるような歌唱だった。ふわっと高音に辿り着き軽やかに歌うことができるが同じ音が続く部分では若干声の硬さが気になった。軽快ではあるけれどもっと軽い声を持っているはずだよなと思いながら聞いていた。
“Sento nel core”(A.スカルラッティ作曲)は全体的に母音の短さが気になった。中村のイタリア語の発音に対して聞き取りにくさを感じることは少なかったのですが歌曲パートでは発音がこもっている印象を受けた。言葉が遠いし一緒に音がぼやける箇所が多かった。
気になることはあったものの1曲目から高品質でさすが中村恵理だなとは思う。絶対に落ちてこない響きと瞬時に正しく音にたどり着くコントロール力。恐ろしい。去年の公演でのベッリーニの歌曲では劇的に歌っていたのが気になったが今回は劇的要素や芝居要素を削り落としてシンプルに歌唱しているように見えた。オペラ歌手なので気づくと劇的スイッチが入りがちだがよく抑えた。
“Or che le redole”(S.ドナウディ作曲)では弾けるような明るさと可愛らしさがあり思い詰めて歌うような歌の方が得意だと思っていましたがこの日は明るく元気に歌っているときの方が声の調子が良く感じた。前半4曲が終わりどこか吹っ切れたような様子だった。結局古典歌曲が1番難しいのよ。シンプルな楽譜を忠実にでも面白く歌ってみろよって感じだよね、まじで。(誰?)
“M'ama non m'ama”(P.マスカーニ)では最初の声の響きを維持したまま下降していく。フレーズの使い分けが上手で声質は変化させずに雰囲気だけを変えて歌っていた。最後の” una foglia”の高音の響きも勢いがありながらも柔らかい音だった。
“Nebbie”(O.レスピーギ作曲)はプログラムの中で1つだけ特徴的な選曲だなと思いましたが逆にこの曲が目立たないプログラムってなんだろうねって思います。シュトラウスやベルクに混ぜとけばいい?お歌というより語りのような印象を持っていましたが今回中村が歌ったことがお歌として理解できた。劇的に歌い上げるのではなくおとなしめに仕上げてきたので音の動きがよくわかった。伴奏が派手でない分お歌が迷ったら方向性を見失うが緻密に歌っており素敵だった。
時間の割き方もセーブしている様子も後半のプッチーニ作品たちにかなり時間も力を費やしているのがよくわかる。それ自体は悪くないけれどなるべくそういうのがわからないようにお願い致します。
オペラパート
オペラパートという名の強制プッチーニタイムです。強烈な音楽に振り回せれピアノ伴奏といえどプッチーニの音楽の強さを思い知った。役に入ってしまった方が歌いやすいようでこちらも安心して見れました。歌が上手だと歌が上手なことがどうでも良くなるんだよね。
『つばめ』は音楽を聴いていると言うよりもおしゃべりを聞いているような感覚になました。しゃべるように歌っている様子には歌曲パートで気になったイタリア語の遠さは感じなかった。昔を懐かしんでいるけれどこかドライな喋り方はとても立体感がありました。
『トスカ』はとてもよかったです。ぜひ全幕で見てみたい。雰囲気はトスカが合うだろうなと思いながらも気高さや我儘な部分をどのように表現するのか気になっていましたが中村トスカは柔らかく優しくカヴァラドッシを包み込むようなお姉さんだった。
前曲の『つばめ』とは異なりがっつり歌い動き回っていたけれ余裕を感じるパフォーマンスだった。花束を持って登場したのいいけれど包みのビニール音が気になったので気をつけた方がいいね。
『蝶々夫人』新国立劇場で聞いたことを思い出しました。その時よりも声に重量を感じました。高音をきちんと出しつつ低音もかなりくっきり歌ってくれるのが好きです。蝶々さんは既に手放しで歌える役なのかもしれません。
“Un bel di, vedremo”は狂気一歩手前の呪いの歌のようだった。待たなければいけない、待つことしかできないことが呪いだった。悲しいや可哀想ではなく恐ろしかった。迫力しかなかった。いないはずのスズキが震え上がっていた。
アンコールまでプッチーニ。最後の最後で『ラ・ボエーム』のテノールとのデュエットで高音をビャーとだして終わったのはお元気で何よりですとお声かけしたくなるほど。
その他
お持ちの声は大きくないのですがそれを感じさせない響きの高さと声の密度があり声量は響きでなんとでもなることを再確認致しました。終始fの発音にこだわっているように感じた。
前々回より前回、前回より今回とプログラム構成が守りになってきているようで面白みには欠けます。歌える人だし曲の意味を伝えられる人だからこそ面白い世界を教えてほしい。しかし中村は歌唱技術と演技力が両立しているので好きです。
ピアニストはお馴染みの木下志寿子です。中村の歌い方に影響を受けずに淡々と演奏します。落ち着く演奏です。
中村はしばらくは日本にいらっしゃるのでしょうか。第九、NHKニューイヤーなんとか、群馬カルメン、新国リゴレットそしてリサイタル(大阪)ですかね?
ちなみに2026年も同ホールにてリサイタルが決定しているそうです。こちらもwithテノールなのかな?もしそうなら違うテノールで聞きたい。
では中村ジルダに会える日までさようなら。第九は絶対に聞かない芸人なもので。群馬は行きますか?行きません。

プログラムは原題と邦題を併記していただけると助かります。