2025年11月20日(木)19:00公演
新国立劇場 オペラパレス
アルバン・ベルク作曲

お世話になっております。
三島でございます。
この日はオペラを見に新国立劇場へ行きました。久しぶりの我が国のオペラ劇場への訪問です。今更ですが新シーズン開幕おめでとうございます。
それでは感想いってみよー。
(以下敬称略。)
代役公演
タイトルロールのヴォツェック役にトーマス・ヨハネス・マイヤーが起用されており昨シーズンの『フィレンツェの悲劇』(ツェムリンスキー作曲)にて存在感のある舞台姿と歌唱を披露してくれて好きになりました。安心して聞ける歌手なのでこの公演の成功を一手に引き受けてくれていました押しつけていました。
なのに16:00ごろに受信したメールにて健康上の理由による降板が知らされる。そして代役はカヴァーの方。あれ待って?それは前例があるな。なんとかのオランダ人とかさまよえるなんとかで経験したやつだ。カヴァー歌手が出てきてあれまああれまあってなったやつだ。
払戻しがあれば行かなかったのですがお金も帰ってこない、既に劇場近くにいたということで行って損をする覚悟で予定通り観劇しました。聞く前にこういう判断をしてしまうのはよろしくないですが前例があるのでどうしても良くない方向に考えてしまった。

でもでも
結果、代役の駒田敏章はとても良いパフォーマンスをしてくれました。新国オペラへの信頼度が1上がった。
第一声の声は小さく様子を伺っているような歌い方で周りとの声の大きさと響きの高さが違った。やっぱり新国のカヴァー歌手だと代役ならこのくらいのラインも超えてきてくれないのかと悲しくなりました。でもそんなことは最初だけ。
声を出していくたびに声も舞台姿も存在感が増していき次の場面(靴磨き)では最初に感じた部分はほとんど気にならなくなりました。喋るように歌う部分が多いので(てかほとんど喋ってない?)ドイツの発音がどうなるのか気になっていましたがそちらは心配いらなかった。少なくともひらがな発音ではない。言葉がドイツ語として耳に届くし私的には聞き取りやすかった。
プロンプターが絶対助けるマンだったのか”wenn!””ich!”とよく声が聞こえる。もう舞台上に出てきて良いよ。演出の一個にしてしまえ。でも、絶対にミスをさせないという強い意思を感じたしそれは大きな愛だと思うし実際大きなミスはなかったので受け入れよう。
精神状態のバランスを崩した人を演じるという部分においては理性もバランスも整っているように見えました。ヴォツェックなのかどうかという点はありますがとりあえずよく走り切った。カヴァーしたくない役第一位でしょ(個人の感想です)。本当にお疲れ様です。
カヴァー歌手がカヴァー初日にこの出来であれば全く持って文句はございません。カーテンコールの大きい拍手に心から納得しますし私も大きい拍手を最後まで送りました。
そうなると(?)マイヤーの方も見たくなる。復活する健康上の理由なのかお休みが続く健康上の理由なのか。
新しい木目
『ボリス・ゴドゥノフ』に続くとんでも新演出になっているのではないかと疑っていましたが思いの外普通だった。場面によって木のお家が移動する手動システムで舞台転換を行う方々が一生懸命舞台装置を押している姿がとても記憶に残っております。
実はそこそこ広い新国立劇場の舞台がよく見えました。広い舞台上をあえて小さく切ってしまうことはあまり好きではありません。しかしこの作品の不思議さを極めるという点では貢献しており、場面ごとに違うお家が登場し一場面一場面の境目をはっきりくっきりみせていくスタイルはとても不思議です。
歌手の皆さん
大尉役のアーノルド・ベズイエンは新国ボリスくんのシュイスキー公で聞いています。あまり良い印象はなかったはず。
高音は謎シャウトで声楽の発声とは?とお伺いしたくなりましたが、それ以外は顔面で響きをつくりつつ体全体から音を出しているような声でした。キンキンする声は作品や役を選びそうですがのが今回は大丈夫。母音の伸ばし方や言葉の当て方や捌き方が綺麗でしたし逆にこれくらいしゃべれないと難しい役なのかなと思いました。
鼓手長のジョン・ダザックと医者の妻屋秀和は体が大きくヴォツェックとの対比を視覚的にも上手に描いていた。妻屋は外国人キャストと並んだときに負けない体格であり、これも才能の1つだよねと思います。
マリー役のジェニファー・デイヴィスは大変素晴らしかったです。この役を歌いながらも普通に歌が上手なことをわからせるというのはどれだけ難しいことでしょうか。
叫んでるの?喋っているの?と不思議に思いながらもフレーズの流れの美しさを感じことができ基礎能力がしっかりしている人なのだろうと勝手に推定。朗々と歌いすぎることを避けつつもお歌であることを教えてくれる。そして安定した響きを持っている。ただヴォツェック同様にマリーの精神状態も良好ではないはずなので危うさがほしいところではある。
オーケストラの?
『ヴォツェック』なのにオーケストラがとっても普通。無調オペラ?モーツァルトじゃね?
不安や不快感を与える音楽(もちろん褒めている)で物語をつくっていくはずなのに整った演奏でした。『ヴォツェック』の音楽は耳に聞入ってきた音や音型がいつの間にか刃物になっているような危険があって(何を言っているんだ?)つまりとても怖いはずなのです。でも全然怖くなかった。恐怖の種類が違うけれど例えるなら明るいお化け屋敷だね。
オーケストラの演奏と舞台上が分離しておりストレートプレイにオーケストラ演奏がくっついてるようでした。その傾向が強くなるのはわかるけれどオペラはオペラ。のはず。
今シーズン初めての新国公演はまあまあ良いスタートとなりました(私的に)。ここで供養するけれど本当は『ラ・ボエーム』のチケットも持っていたのですが調子を崩してしまい行けなかった。悔しい。