2025年9月11日(木)18:00公演
東京文化会館 大ホール

お世話になっております。
三島でございます。
この日は久々にオペラ全幕公演の観劇に出かけました。選り好みしていると何も見れなくなるのでとりあえずチケットを買うべき(教訓)。
『さまよえるオランダ人』といえば新国立劇場の昨シーズンです。エフゲニー・ニキティンさんの調子が優れず降板続きとなり代役を務めた河野鉄平さんの歌唱含む舞台姿を覚えていますか。ええ。覚えていますとも。そんな(どんな?)河野さんが本役にて歌う公演です。「じゃあ最初から本役にキャスティングされてればどうなのよ?」というのが今回の観劇のテーマです。
私は大雨の影響を受けず無事到着しましたが交通事情を考慮し10分押しでの開演となりました。先日の『バレエ・スプリーム』でも電車遅延に伴い意図的に公演を遅く始めました。夜公演なら問題ない気がしますが昼公演の場合その後に予定を入れている方もいると思うので「時間通り来たのに最後まで見れない!」ってなったら悲しいなと思いました。ギリギリで次の予定を入れるなということですね。気をつけます。
東京二期会東京文化会館公演あるある、空席多め。この日は悪天候もあってかロビーまでスカスカで鬼ごっこしても怒られなさそうだった(ダメ、ゼッタイ)。周りに人のいない客席は大変に居心地が良く前後左右に気を取られることなく落ち着いて観劇ができるので寂しい一方でメリットが大きい。主催側のメリットはない。
それでは感想いってみよー。
(以下基本的に敬称略)
さまオラ
『さまよえるオランダ人』ってなんて呼んでます?私は『さまオラ』って呼んでます。
河野鉄平は新国公演よりは良かった。正直なところ新国と同じくらいのパフォーマンスだと予想していたので新国は超えてきてくれて嬉しいです。場所は違えどシビアな響きの劇場であることは共通しているので比較するにあたりそこまで影響はないと思います。歌手は強制的にそれなりに仕上げてくれるサントリーホールで歌ったらいいんだよ。新国よりはよかったけれど上手な歌唱だとは思わなかった。それについて思ったことを書きます。
まず声が細い。 おどろおどろしいオーケストラに続く”Die Frist ist um〜”が細い深みのない声なので張り詰めた空気が緩んでしまう印象を受けた。前のオーケストラを引き継いで歌ってほしい。常に揺れているような歌い方になってしまいオランダ人がとても可愛く見える。どちらかというと妖精。ハリーポッターに出てくる屋敷しもべ妖精みたいだなと思って見ていた。
次にドイツ語が遠い。発音が良い悪いでの話しではなく距離を感じた。喉の奥の方で発音しているように聞こえる。言葉が前に出てこないので何か喋っていることはわかるのですがよく聞き取れない。言葉に気を取られていると音楽を楽しめず聞き逃しているような気分だった。
そして声質が安定しない。音ごとに前だったり後ろだったりいろんなところにポジションが移動しているように聞こえフレーズの流れが生まれにくい歌唱だった。
思うところは多いものの新国よりも余裕を感じたのでこちらもある程度は落ち着いて聞けました。勝手ながらオランダ人ではなくコミカルな役を歌うときに聞いてみたいなと思いました。
高速で動く岩とゼンタ
舞台上で機敏に動く岩が面白かった。注目ポイントです。
ゼンタを歌った中江万柚子がとても良かったです。日本人ソプラノ歌手も捨てたもんじゃないなと思わせてくれた。とっても安心しました。オペラ公演はときどきこういうことがあるから嬉しい。尚、ミュージカル。
第一声が体から離れたところに声があり高く登っていく響きは「オペラ歌手の声だ」と感じさせてくれた。中音域の声が丸い。そして軽い。ワーグナーを歌うからといってステレオタイプの重く引きずるような声ではなく芯は太くしっかりしているけれど響き自体はとっても軽い。ゼンダの幼さを表現するのに合っている声です。
高音域はキンキンしてしまいこのキンキンに邪魔されて音程が若干悪く聞こえてしまうのが惜しいところでした。中音域が綺麗だから尚更高音の硬い感じが目立ってしまう。後半にいくにつれて柔らかくなっていきましたが最初からお願いしたいところです。
最後の”Preis' deinen Engel 〜”部分の歌い方は強く気高かった。照明効果も相まってゼンタの言葉が上手に強調された終幕になった。説得力しかなく中江ゼンタの意思の強さを感じた。
演出上、ゼンタは歌わないのにはじめから舞台上にいるので喉の乾燥が心配でしたがカサつきが気になることも疲労を見せることもなく最後まで完走した。歌う前に一度引っ込んでから再度出てきたのでちゃんと考えられているなと安心です。舞台姿が堂々としており姿勢が悪かったり無駄にクネクネしたりせずとても素敵だった。
もし行こうか迷っているゼンタ好きな方がいたら中江ゼンタ(日曜公演)をお勧めします。
客席降りと、
客席から合唱が入ってくる場面があるのですが劇場占拠かと思った(マジで)。前にも後ろにも指揮しなければいけない指揮者さん大変だな。
休憩なしの140分公演は短くも長くも感じず集中力を保ったまま聞けた。二期会公演には珍しく(?)攻めすぎない演出がありがたかったです。音楽を尊重し元々の物語をめちゃくちゃにしない演出はウツクシイ。女性合唱がとても綺麗で特にピアニッシモは小声ながらも響きがありよく揃っていた。
舵手の濱松孝行は相変わらずお上手。もっと目立つ役を歌ってほしいです。できたらロシア語がいいです。他の歌手陣に比べると明るい声なので存在感を出すことができます。日本人の若いテノールで有名で上手な方が何人かおりますが濱松も並べると思う。てか追い抜いてくれ。中江同様に第一声から響きが高く明るいけれど声は浮つかないので安心して聞ける。
しかし”Mit Gewitter und Sturm aus fernem Meer“部分の高音にいく前に音楽の流れが切れてしまうのが気になったのとドイツ語が上手に乗っかっていない印象を受けました。
ドイツ語は難しいよねーって話
中江を除くほぼ全員のドイツ語がのっぺりしておりとっても日本語だったのが気になった。ごまかして歌っているのではなく発音をしようという気持ちは伺える。しかし日本語的な発音が音楽の面白さを邪魔してしまう。開き直ってふにゃふにゃと発音したほうが音楽の流れはできるんだろうけど開き直りは超一流にしか許されていないので巷の歌手は発音も大切にしていきましょう。
以上です。
思っていたより良い公演になっており心が穏やかです。