2025年1月14日(火)19:00公演
東京文化会館大ホール
旬の名歌手シリーズⅪ
バンジャマン・ベルナイム
テノール・コンサート

お世話になっております。
三島でございます。
この日はNBSの来日歌手コンサートに行って参りました。
コロナ禍を乗り越えて頑張っているNBSさまです。これからもよろしくお願い致します。
そしてソニア・ヨンチェヴァさんを召喚してください。
それでは感想いってみよー。
(以下敬称略)
巷に蔓延るオペラ歌手とは一線を引く上手さであったことは大前提として書いておきます。
ベルナイムの印象
ほぼ初見でございました。歌唱の印象としては最高音を伸ばすとき以外は大きく口を広くことがなく必要以上に口周りを使いすぎない歌唱に好感が持てました。もう少し使って良いのではないかと思うくらい口の開きは小さいのに響きが潰れることがないのが不思議。口を開かなくても口の中の空間を広げることができるのか。もしくは常に広いのか。
高音を出すときは口を大きく広げますが下顎の力みはない。ただ他の音域に比べて声が硬くなるのが気になりました。それでも良い声ではありますが中音域や高音を出すギリギリまで柔らかい声で歌っているのに高音だけ急に硬くなるので差が大きくて驚きます。顔面に当てて歌うときとそうでないときの声の差だと思いますが柔らかさを保って歌ってもらった方が私は好きです(我儘)。難しいのかな。力の入れ具合はあまり変化しないけれど響きの当てる場所を変えてくるので声質が変わってくるので気になってしまった。
打ち合わせは?
後半にいくつれ解消されていったのはよかったですが、打ち合わせしていないのかなと思ってしまうくらいベルナイムとオーケストラ(というか指揮者)のテンポが違う。インテンポで行きたい指揮者とゆったりたっぷり歌いたいベルナイムがおりました。リハーサルしなかったのか?
1番顕著だったのがプログラム初めの『エフゲニー・オネーギン』(チャイコフスキー作曲)ですね。ものすごい速さで進む序曲。情緒とは?と聞きたくなるくらいの高速演奏。
『オネーギン』の全ては出だしの「ズン」という音にかかっていると思っております。根がある音であってほしいのだけれどこの公演では宙に浮いていておりました。音が彷徨っていた。その後のフレーズの終わりの処理も音も芯がない。弦楽器の出だしが常にバラついており全員が自由に演奏しすぎではないのかと思った。そしてこの演奏でどうやって1幕を始めるつもりなのか。2曲目はまあよかった。元気に演奏しても良い曲はお強い東フィルです。急ぎ気味ではあるけれど序曲よりは聞ける。しかし弦楽器がまだちょっとバラバラしている。
その他のオーケストラのみの演奏も面白みのない演奏だった。とにかく前に進みたいという意思だけは伝わった。『ドン・パスクワーレ』(ドニゼッティ作曲)の序曲は楽しさがない。どうやって幕を開けるつもりなのか。ベルナイムが安定的な歌唱を披露してくれるのにオーケストラの不安要素が多すぎて安心して聞けなかった部分は多い。そもそもオーケストラのみの演奏が多すぎるよね。ベルナイムが歌う曲増やせとも思わないけれど全体のボリューム落とせばと思う。そしたら一曲の品質も上がるはず。
ロシア語慎重派
この公演ではロシア語・イタリア語・フランス語で歌唱を披露してくださいました。昨年のアスミク・グリゴリアンのコンサートの平均的なオペラファンを置いていくプログラム(褒めている)と比較すると王道を全力で走る選曲になっておりました。知っている人や好む人が多そうな曲ばかりなのにチケットの売れ行きがちょっと残念だった。
“Куда, куда, куда вы удалились”の声が柔らかくて良かったです。全然口動かさないのね。響きが集まっているけれどよくそれで発音できるよな。コンサートの第一声が良いものだと全体的な満足度も上がります。出だしにかかっていることをよくご存知で(?)。その後の”Весны моей златые дни?”が一回前のフレーズとは変わり声を顔面に当ててくる。そうなると声が硬くなる。顔面に当てなくても響きそうなのに顔面前面でくるのは何故なのか。
“Что день〜”は広げないでくれてありがとうと言いたくなるくらい丁寧に歌ってくれました。ここで爆発するパワー系テノール多いじゃん。そうじゃなくて良かったです。全体的に慎重に丁寧に歌っているのがわかったし歌唱に関してはよいものだったと思う。歌うことに集中しすぎている感じも否めないのでもっと客席に向けて歌ってほしいな。
その国のものはその国の人に
後半のフランス語での歌唱は素晴らしかったですね。母国語で歌うっていいよね。発音に対する負担が減るので余裕を感じることができる。オペラだなあと思ったのはフランス語の歌唱のみです。曲の厚みが他とは異なりました。第一部では表現力ない人なんだなと思ったけれど第二部では繊細なお芝居をするタイプなのかなと思った。フランス語になると響きがさらに上がりますね。声が集まっている位置が高くなり硬さも軽減しておりました。顔面ではなく頭上になったような感じです。
一番好きだったのは『En fermant les yeux』(マスネ作曲)です。ずっと柔らかい声で歌っていた。劇的でも技巧的でもない。面白くなさそうに聞こえるけれどだからこそベルナイムの落ち着いた歌唱を余すことなく楽しめました。響きの位置が高くずっと同じところで歌っている。声に変化がない(良い意味で)ので安心して聞ける。
イタリア語ほわほわ部
ベルナイムのイタリア語はこれでもかというくらいほわほわしていました。雑に歌っているわけではないでしょうが手抜きをしているようにも聞こえなくもない。発音は不明瞭でフレーズも流れていかないのでどう聞くのが正解なのか困ってしまった。お近くのお国の言語といえど難しいものなんですね。
『Recondita armonia』(トスカより/プッチーニ作曲)は力の抜けた歌い方でした。プッチーニなのでもっと力技でくるかと思いましたが意外にも柔らかく歌っておりました。プッチーニも聞いておきたい客席のための良い選曲だったと思います。
『Una furtiva lagrima』(愛の妙薬より/ドニゼッティ作曲)は母音の短さが気になった。インテンポオーケストラに気を取られたか?最後の細かい音型は一つ一つが切れてしまい細かい音響は遠いのではないのかなと疑いたくなりました。「ええええええええ」って感じっす。イタリア語で歌うと音楽の流れがよろしくない。フランス語のときはめちゃ綺麗。
以上です。
次は素晴らしきサントリーホール先生での演奏ですので文化会館より良い演奏になるはず!
おしまい。