2024年11月8日(金)18:30公演
東京文化会館大ホール
シュツットガルト・バレエ団
2024年日本公演
椿姫

お世話になっております。
この日は『オネーギン』に続きシュツットガルト・バレエ団来日公演のもう一つの演目である『椿姫』を見に行ってきました。
上の写真は公演に合わせて変えたようです。『オネーギン』のときに裏側を確認していなかったので両面なのかと思っていたのですが付け替えたのですね。さすがNBS。
『椿姫』は大好きなバレエ演目の一つです。こちらもなかなか日本ではお目にかかれない演目(三島調べ)ですので来日公演の演目に選んでくれたことに感謝です。逆にド古典とか持ってきて欲しい気持ちもある。需要?ないかも?
それでは感想いってみよー。
(以下敬称略)
私の中ではパリ・オペラ座バレエ団のアニエス・ルテステュがマルグリットを踊った公演が全てにおいて至高であり最強なのでそのあたりご注意ください。
これ↓
ここにもルテステュさん⇩
パリの話をパリのバレエ団がやるんだ。抜かりもしくじりもない。
という前置き。
本日のハイライト
『椿姫』はご存知の通り舞台の幕が開いた状態から始まります。ホール内に入ったときがこの日1番の感動ポイント。普段は映像で見るしかないわけじゃん。それが視界いっぱいに広がっているわけですよ。そうだこれだ。これが見たかったのだ。本編始まらなくても文句ないレベルで好き。
フォーゲルと仲間たち
フリーデマン・フォーゲルがスターであることがよくわかった。めちゃくちゃ華やかというわけではないけれどフォーゲルが舞台上で踊っているのと踊っていないのでは質が変わる。ファンではなくても目を奪われる存在だしこういう方を盛り上げて大切にしなければいけないという思考が理解できる。
ロマンティックバレエなので感情表現のお芝居面の比重が大きいですよね。ベテランだし決して若手の部類には入らないのでアルマンの若々しさや危うさを表現できるのか?と疑問を抱きたがらチケットを買いました。貫禄のあるアルマンも面白いけれど話が変わりそうだしな。この疑問点は登場とともに払拭されます。すごいですね。全くもってアルマンでした。若々しいめんどくささのあるアルマン。かっこよさがない。もちろんいい意味です。若いっていうか幼い。マルグリットにも若さを感じたけれどそれよりも若かった。お姉さんなマルグリットと少年アルマンのコンビが好きなのですが両方若めっていうのも面白かったです。
お芝居もとても素敵だったのですがそもそもの踊りがとても上手だということもよくわかりました。誰よりも音楽の使い方が上手です。同じ1カウントでもフォーゲルの1と他の人の1は密度が違います。フォーゲルは音楽の時間が許す限り使う。「いち」ではなく「いーーーーち」である(伝われ)。ジャンプや回転など男性ダンサーの見せ所でなくても細かいところでもしっかり魅せてくるあたりが良かったです。歌もそうですが音楽の使い方一つで見栄え出来栄えが大きく変わりますね。振付通り楽譜通りの先にいかなければならない。
上半身を後ろに逸らす振付が頻繁にありますがこれがとにかく美しかった。背中がぐんぐん伸びる。背中が柔らかいことなんてバレエダンサーとしたら当たり前だとは思いますが、それを当たり前に見せてくれというのは本当にありがたいです。またステージ上でコロコロ転がる振付もよくありますが転がり方がとても上手です。体感がある人の転がり方です。当たり前だけれど上半身と下半身が分離せず一本繋がった状態でコロコロするので転がっているだけなのに美しいというミラクルが起きていました。フォーグルってダサくなりそうな振付をバレエにしてくるからすごいっす。
そんな感じでフォーゲルは安定感の踊りで安心させてくれるし繊細なお芝居で悲しくもさせてくるしでとても楽しめたのですが、フォーゲルが一人でバレエ団をやっているように感じた。他のダンサーが印象に残りにくい。大体の踊りも演技も平均値というところで面白みがなかったです。マルグリットもプリュダンスもガストン子爵もみんなギラギラしていてほしいので物足りなさがあった。
プリュダンス(マッケンジー・ブラウン)とガストン(アドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァ)はサラッとし過ぎていてマルグリットペア、マノンペアの次にくるペアには見えなった。その他大勢でした。オランプの方が目立つ。プリュダンスを踊ったブラウンだけではなく全員にいえることですが筋肉を感じる踊り方をしますよね。良い悪いの問題ではないです。ジャンプの力強さが男女ともにあります。上に飛んだときに静止しているように見えます。悪くいえば硬い。伸びやかではない。良く言えばとにかく力強い。
オランプ(ディアナ・イオネスク)と伯爵N(ヘンリック・エリクソン)は好きです。イオネスクは踊りが軽やかで可憐でした。可愛すぎるオランプだった。可愛過ぎちゃって役の説得力に欠けるのが惜しい。でも可愛いからOK。伯爵Nは『オネーギン』でレンスキーを踊っっいました。フォーゲルの次に目立つ。こちらも伯爵Nにしては爽やかすぎる。ナチュラルな若さがあるのでアルマンでもいけそう。病気が悪化しているマルグリットを変わらず追いかけているのが苦しかった。塩対応にもめげないしなんか察している(死期か)ような表情は悲しみ以外はない。伯爵Nに深さを感じた。
マルグリット(エリサ・バデネス)が華やかではない。1幕の劇場での登場シーンの笑い方がお上品ではなかったのが気になった。誰よりも輝く存在であってほしいものですが見ていないと勿体無いなは思えなかった。
心境の変化も感じにくく頭の中で補ってあげる必要がありましたが3幕の「黒のパ・ド・ドゥ」の感情ぐちゃぐちゃなことはよく伝わってきた。踊ることへの必死がマルグリットの気持ちとリンクするのかもね。私はなんとかのパ・ド・ドゥといわれるものがそこまで好みではなく(本当にバレエ好きなのか?)ちょっと冷めた目で見てしまうのですが、「黒のパ・ド・ドゥ」はのめり込めた。2幕のパパとのお話し合いも良いです。覇気がなくなっていくマルグリットが切ない。ちゃんと抱きしめてあげるパパの優しさが怖い。これはオペラのパパのせいかもしれない。
バデネスの踊りを見ていると古典の方が得意なのではないのかなと思いました。古典作品にもあるような動きは綺麗ですが、ロマンティックバレエ特有の古典の型にはまらない踊りになると硬さと余白が目立つ。足を回すときとかもっと時間をたっぷり使ってほしいなあと。一つ一つの振りが均等で抑揚がないので面白みが少ないです。音楽やカウントにかっちりはめて踊る方が得意そう。
音について
ピアニストは本来であれば舞台の真ん中で客席の視線を一番に浴びながら弾く曲であろうにバレエになってしまっているせいでオーケストラピットに沈められたり舞台端っこで弾かされたりしている。でも重労働でまじお疲れ様です。
1幕と2幕間にピアノが大練習会しておりました。お得感はんぱねえ。と思ったら本編での演奏微妙すぎた。ミス多かったよね。それ以外は大きく気になることはなかったですが2幕前半のピアノはいただけなかった。他の楽器がいないから余計にね。
オーケストラは『オネーギン』と同じく東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が担当しておりました。『オネーギン』のときは「健闘している」「いる意味はある」と書きましたがゲロ甘評価であったことをここに謝罪いたします。
最初のオークションの場面が終わって過去に遡るときの入りがのっぺりしすぎていてここから話が始まっていくのに「全然始まらない音じゃないか!」と思いましたよ。物語を始めさせてくれよ。オペラの来日公演同様にオーケストラも現地や勝手知ったるオーケストラを連れてきてほしいなと思います。特にバレエのために書かれたわけではない音楽たちはいかに踊りと関係性を保てるかが勝負なので勝負に慣れている団体をどうかお願い致します。
以上です。
シュツッツガルト・バレエ団来日公演の観劇は2演目×1回で計2回でした。
なんか無意識にパリ・オペラ座バレエ団が頭に出てくるのは何?
『椿姫』はこれ以上に出会うことはできないかもしれない。めんどくさい客でまじごめん。
これね(2回目)。
アニエス・ルテステュね。
なんでもそうですけれど現地に行って初めて本当のことがわかるのでしょうね。環境も客質も違う。来日公演は祭りだから。楽しいからいいけど。
「素晴らしい」だけで終われる公演ではありませんでしたが満足度は高い。また来てくださいね。
そしてNBSさまいつもありがとうございます。
おしまい。

マルグリット・ゴーティエ:エリサ・バデネス
アルマン・デュヴァル:フリーデマン・フォーゲル
マノン・レスコー:アグネス・スー
デ・グリュー:マッテオ・ミッチーニ
プリュダンス:マッケンジー・ブラウン
ガストン・リュー:アドナイ・ソアレス・ダ・シルヴァ
オランプ:ディアナ・イオネスク
ムッシュー・デュヴァル:ジェイソン・レイリー
伯爵N:ヘンリック・エリクソン
公爵:マッテオ・クロッカード=ヴィラ
ナニーヌ:ソニア・サンティアゴ
ピアノ:アラステア・バヌマン
指揮:ミハイル・アグレスト
グランドピアノ:アレクサンダー・ライテンバッハ(1幕)小林知恵(2幕)アンドレイ・ユソフ(3幕)
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ